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オジーと呼ばれて:百鬼夜行、鎮守の杜の狸さん
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第3章: 1 猫おじさんと初詣 :【オジー】と呼ばれて、、、
リビング。正月らしさゼロの部屋の中、王子は
〖愚者〗と書かれたカーキ色のパーカーを着て、
こたつでだらけている。テレビではお笑い番組が流れている。
王子は、ふてぶてしい顔でテレビを見ながら
頭をコタツの天板に横倒しにして
「正月ほどやることのない日はないな」と思う
するとキンキン声を張り上げながら優花はリビングに駆け込んできて
「オジー! 今から初詣に行こう!」
王子は振り返りながら怪訝な顔で
「……オジーはやめろよ、なんど言ったら、、、」
優花は得意げに胸を張り
「だって猫の姿のおじさんには、ちょっと違う名前が似合うと思って! どう? 可愛いでしょ!」
王子は面倒くさそうに目を閉じると
「可愛くなくていい。俺はおじさんで充分だ。」ぼつりとこぼす
「猫でおじさん、、、名前が王子だし、おおじ、オジー呼びやすいし猫にピッタリ」得意気に優花は言った
『人の話を聞かない奴だ』とため息が出る
王子はパーカーのフードを少し被りながら
「正月ってのはだな。こたつに入って、笑って、食って寝る。それでいいんだよ。」
「オジー、またそのパーカー着てるの?」
王子は少しくすんだカーキー色を大体着ている
「いいだろ。これが一番楽なんだよ。」
優花はパーカーの胸元を指さしながらニヤリと笑い
「だって、〖愚者〗って書いてあるんだよ!? 何、、、馬鹿の自己紹介なのかな?」と軽く小首をかく
王子ちょとムッとして
「違う。これは深い意味があるんだよ。」
「どこが!? ただの引きこもりが開き直ってるだけじゃない?」と語尾を上げて言いながら
自分のリュック下し中から白いパーカーを取り出す。胸元には大きく〖賢者〗の文字が書かれている。
優花は得意げにぱーかーを広げ
「じゃあね、見てみて私のこれ! オジーが愚者なら、私は賢者だね!」
王子は呆れた顔で「お前な……よくそんな恥ずかしいもん買ったな。」
「それをオジーには言われたくない」
優花はパーカーを頭にかぶり下に降ろすと、頭と腰に手をおきポーズを決めて
「似合うでしょ!? 賢者って感じする?」
王子は真顔でめを細めて「全然しない。むしろお前が愚者だろ。」
「ひどい!そんなこと言うオジーにはチュルルお預けにするよ!」と優花はたしなめる様に言う
「ニャッッつ」思わず変な声が出てしまう王子
「そうそう実はもう一枚パーカー買ったんだ、見てみて」と言うと
リュックから赤いパーカーを取り出すと自分の肩に合わせて王子にみせる
パーカーの胸には小さく四角に背中には大きな黒い文字で【悪魔】と書かれてた。ただし逆さに書いてある
「可愛いでしょ、二枚買うとお得になってたんだ」ニンマリ笑いながらと言った。
「文字が逆じゃね?」と王子は言った
「そうなんだよね、、、なんだろ?印刷失敗したから安いのかな?」と優花は小首をかしげた
少し間をおいて「、、、うーん多分」と王子は言いかけると
優花は突然真剣な顔で「ねえねえ!、オジー。せっかくだから初詣に行こうよ。」と言葉をさえぎると
無理やり王子の腕をひっぱった
「も~う!早く!」
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そんなやり取りの中、優花が初詣の話を切り出す。
「初詣なんて何年も行ってないし、そもそも正月だから神様に挨拶って逆に失礼だろ」
優花は口を尖らせながら「ダメ! 正月は神様に挨拶しないと!」
王子はうだうだししながら「神様はいないが悪魔はいるかもな」と優花を見ながら言った
優花は手を腰に当てながら
「フーン、、、じゃあ神様にはやっぱり感謝しに行かなきゃじゃん!もし行かないと凄い天罰下るかもね」
横目でチラッと亮介をみて一言
「天罰って怖いよね、、、、」王子は自分が猫になったのは姪っ子優花の‘お願い‘を思い出し少し間をおいてモゴモゴしながら
「……理屈が無茶苦茶だ……」とぼつりと言った
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王子=オジーがデフォルトです
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2. 初詣への道中(愚者と賢者の変装)
神社の参道。石段を上がる最中上からお囃子の音が聞こえる
開けた参道には出店があり正月二日目だがそこそこ人通りはある石段を上がる二人。
オジーはジーパンに愚者のパーカーの上からスカジャンを羽織、黒い目出し帽とマスクにパーカーのフードをかぶってる
おまけにサングラスをかけ一見、変質者に見えないでもない
優花は賢者のパーカーの上からダウンを着てピンクのリュックサックを背負い
寒いのに関わらず黒いショートパンツにニーハイを太腿の上までとめている
「オジーなんか変質者か輩みたいだね」階段を飛び跳ね優花は言った
「あんな、、、俺は半月ぶりの外出だし、そもそも顔を出して歩けないだろ」
「えーーーっ?結構可愛いと思うよ、逆に人気でると思うけどね」とちょと意地悪い顔をしながら優花は言った
「他人事だと思って」オジーはぼやいた
参道の屋台を眺めながら歩く2人。
「ちょとお腹すいたから、何か買ってくるからそのベンチで待ってて」
優花はそういうとダッと駆け出す
オジーはベンチに座ろうするといい匂いが横でする
屋台のイカ焼きが鼻の鼻腔をくすぐる
「……凄いいい匂い、なんか腹減った。」フラフラしながら屋台へ
「へい!いらしゃい、」屋台の親父が言った
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「ハフっ、ハフ、、ハフ、、」オジーは人目の付かないベンチで参道とは逆の方を見ながら
イカ焼きと格闘していた。猫舌のせいで思ったより食べにくい
眉間にしわを寄せて何とか口の中でイカを転がしていた」
「オジーは猫だからイカ食べちゃダメだよ!」肩越しから優花が声をかけてきた
『んっぐっ』思わずイカを飲んでしまうオジー細い喉に引っかかる
「げほっつ!げほっつ」熱いうえに飲んだので咳き込む、頭から湯気が出そうだ
「おまっ、、ビックリ!するッつ、、、だろ」思わずサングラスがずれる
「もー!勝手に買い食いして!猫はイカを食べるとお腹を壊すんだからダメなんだよ」ベンチに座るオジーに上から見下ろして言う優花
「はい、お水」とペットボトルを差し出す
急いで蓋を開け浴びるように飲みこむ「げほっつ!げほっつ!」
「はははっはあはっは、、、オジー面白い!漫画みたいな顔してる」ケタケタ笑いながらオジーを指さす
「正月に死ぬところだったわ、」ふーっと息をはく
「でもホントにイカはダメだよお腹壊すからね」「はいっ」と別のトレーをオジーに渡す優花
同時にオジーのイカ焼きを取り上げる
「ああああ、、、俺のイカ焼き」名残惜しそうなオジー
優花はオジーの隣に座るとパクパクと残りのイカ焼きをたいらげる
「これ、は、たこ焼き」オジーに手渡されたのわアツアツのたこ焼き
「タコもイカも同じだろ」怪訝そうな顔をすると
「大丈夫だよ!タコ入ってないから、タコの代わりにチーズはいってる」
「タコの入ってない、たこ焼きッて最早たこ焼きでわないだろ」たこ焼きをどよんと見つめる
トレーを開けると、たこ焼きの上にかかってる鰹節が熱さで踊ってる
「、、、、俺、猫舌なんだけど」
優花は食べ終わったイカ焼きのトナーを置くと、オジーの持ってるたこ焼きに楊枝をさすと
「フーフーしてあげようか?」と笑いながらオジーの前に楊枝の刺さった、たこ焼きを差し出す
ちょっと顔を離すオジー「子供か!食べれるはっ」と一個口に放り込む
「!!!!」「あちいいいいいい!!!」耳の穴から飛び上がるほど湯気が出そう
「はははっはあはっは、、、、オジーほっホントに面白い!!!!」
ベンチに座りながら笑い転げる優花
「アハハ!無理するからさあ、フーフーしてあげっるて」
「んんんんんんんん!」水をガバガバ飲むオジー
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青い空のしたカランカランと神社の鈴がなり二回『パンパン』と手をたたく二人、神前に頭をさげる。
「何願ったの?」優花は尋ねる
「、、、、秘密と言いたいとこだけど」と「早く人間に戻してくださいだよ」
優花は「ええええええええっ、その願いは却下です、かないません!」
「なんでだよ、、、、」
「だって私の願いの反対だもん!私はいつまでもオジーが猫でありますように!だし願わくばもっと可愛い猫になりますように!だから」
「ひで!」
境内の中、二人のやり取りを見つめる人影「これはこれは又、猫の化身様ですね。お正月そうそう珍しい、、、、」
白い羽織に赤い袴、仙人のような白く長い髭の神主
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優花は楽しそうに「オジー! おみくじ引こうよ!」
オジーはスカジャンのポッケに手を入れながら「俺はいいよ、こういうの興味ないし……」
優花は既に箱にお金を入れていた
「いいから引いてみて! 猫の運勢もあるかもしれないよ!」
細い棒の入った箱を両手で振って逆さにする優花
渋々ながらおみくじを引くオジー。優花も隣で引き、結果を見比べる。
「私は大吉! やったー!」ガっ!と両手を上げて喜ぶ優花
オジーはおみくじを広げて「俺は……『凶』だと……?」
優花は爆笑しながら「オジー、今年もついてないね!でも大丈夫だよ私がいるからね」と得意げに人差し指を左右に振った
「うるせえ。」
さらに、おみくじには「動物に関する出来事に注意」と書かれている。
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3、鎮守の杜の大狸:狸様の百鬼夜行
「そろそろ、帰るか」オジーが境内の石段を降りる
「ねえー!お昼ピザにしようよ!」優花は石段を二段飛ばしで降りる
「正月早々、ピザはないんじゃねー?」
「えーー?お餅飽きたし、今時食べたいものたべるっしょ!」少し先に降りた優花は振り返り言う
「ピザがダメならケンタでもいいよ、チキンバーガー!」
「正月からジャンクだなー?子供か?」少し呆れ顔のオジー
「子供ですよーっ」とイーッと舌を出してみる優花
「でもオジーは私のペットだから飼い主の言うこと聞かないと駄目でしょ?」おどけてみる
「誰が飼い主だ!俺はペットじゃない!」
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しばらくすると何故か辺りは白い霧に覆われてきた
「、、、、なんか真っ白だね」少し不安そうな優花
「先がよく見えないからゆっくり降りよう」⦅昼間なのに霧とは?⦆オジーもちょっと不安になる
程なく階段の踊り場に出る、空気が冷たい
『カーアー、カーア―』バサバサと頭上をカラスが数羽通り過ぎる、振り返ると降りてきた先の階段も真っ白に覆われて先が見えない
異様な静けさが流れ
オジーと優花は背中合わせに張り付く
『シャン、、シャン、、、シャン』階段の上から鈴の鳴る音が近づいてくる 更に小さな笛の音とお囃子が少し上からも聞こえる
白い霧の中に何かの影が見えると同時に『ぽん、ぽん』と跳ねる小さな音が先にくる
「 、、、、!」ゾクゾクッと寒気がしたオジーは優花を抱きかかえて石段の脇の大きな木の後ろに隠れる
木の影から様子を覗う二人
ぬっと霧の中から大きな担ぎ棒を持った二足歩行の狸達が出てきた、先頭の狸達は山伏の頭巾を被り錫杖で石段を叩きながら降りてくる
中には笛や太鼓を持ち踊り歩く狸、笙を吹く狸もいた。「、何あれ!狸のお祭り!」目を輝かしながら覗き込む優花
『しっ!声がでかい』オジーは小声で言い、優花の口元を手で押さえながら
『あれは多分、狸の百鬼夜行だ、、、あいつらに気ずかれたら帰れなくなるぞ』
『百鬼夜行?』もごもごとオジーの手の中で優花が口を開く
先頭の狸に引き続き神輿を担ぐ狸が出てきた、神輿の上には熊の三倍以上ある大狸が飾り立てられた巨大な椅子に座ってる
見るからにヤバそうな雰囲気がでてる
大きく派手な着物の上に金ぴかな陣羽織をまとい金属バットのおおきさの飾り付けの煙管を咥えてる
着物の前ははだけて胸が出ていた⦅フーーーーーッ⦆と煙管をひと吹き、踊り場の前で
「、、、ここらでいいやろ」野太いこえで大狸は言った。すると今までの騒ぎがピタッとやみ静けさが戻る「おろせや、」と大狸
神輿の前にいる鎧兜を被っている狸が手を挙げて周りの狸が台を神輿の周囲の下に置いた。
鎧兜の狸が踏み台を神輿の前に置いて「親ビンどうぞ、、、」と大狸に声を掛ける
ゆっくりと神輿が台の上に乗ると「ぎゃあー------!」と大狸は悲鳴を上げる!ビックリする周囲の狸
少し離れたオジーと優花の耳をつんざく!
大狸の巨大な金玉袋が神輿と踏み台の間に先っぽが挟まったのだ
「わわわわあっ!親ビン大丈夫ですか!」慌てた鎧兜の狸、思わず大狸の金玉袋っを引っ張る
ぎゅううーー!「ぐうっ!がゆうあああああ!」顔を真っ赤にして唸る大狸。金玉袋が踏み台の隙間から取れると同時に
【バッキイ―――!】と鎧兜の狸を殴った「いってえええやお!太三郎、何度もしやがっちぇ!」金玉袋の先っぽをフーフーと吹きながら大狸は言った
「親ビンすいまへん」と兜の上からこぶをなでて半べその鎧兜の狸
踊り場横の木の影から様子を覗ってるオジー達。あまりの出来事に『ブハアッつ―――』と腹を抱えて吹きだす優花
思わずスマホを取り出し撮影しだした
オジーは『おい!やめろよっ!ヤバいって!』と小声で優花を抑える
『、、、だっつて、こんな面白いのないよ!』と吹きだしながら言う優花
神輿の上の大狸が少し落ち着くと、じろっと木の影の優花達の方に目をやる
「もう、ええやろ、隠れてないで出てきや」ハッと息を止めるオジーと優花
急いで木の影に隠れるがスッと音もなく二人の両脇に先程の鎧兜の狸と似たような格好の狸が仁王立ちで居た
ビックリ!する二匹まるで忍者のようだ
オジーと優花はポンと肩を叩かれると踊り場の中央に転げ出た
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4:鎮守の杜の大狸:杜の守護者 金長狸
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踊り場の中央に出たオジーと優花、目の前には大きな神輿に座る更に大きな大狸がいた
神輿の上の大狸はただならぬ気配と後光のような金色のオーラを纏っている
近くに来れば来る程、思った以上に大きい。と以外にも優花はキラキラと目を輝かせていた。
オジーは【色んな意味ででかい】と大狸と度胸の座った優花に驚いていた
いつの間にか神輿の辺りから霧が引いていき階段の踊り場から神社の境内の中に移ってる
オジーと優花の上空は晴れているが、霧の晴れた辺りは夜中の様だ。ボッツと音がして、辺りをかがり火が照らしオジーと優花を多くの狸が取り囲んでいた。
神輿の前でオジーと優花は跪いていた。スッと殴らた鎧兜の狸が二人の手前に立つ、頭のこぶが兜の上に出てる
鎧兜の狸は近くで見るとオジーより少し小さい位『サッと』手を挙げると
「こちらにおはすわ鎮守の杜の守護者で大狸様:金長様でおあしなされます、控え---!」と声を上げた
『プハーーーツ』と煙管を含ませ白い煙を吐く
神輿の両脇に立つ鎧兜の二匹の狸は片膝を立て中央に座る金長大狸を称える様に手を掲げる
狸達は一斉に頭を下げた。
「大きいーーー!金玉袋っ!」ぷっつううと軽く吹きだす優花。『へつっ?』額から汗が出るようなオジー
「くらっ!しつれいぞ、娘ご」とコブの鎧兜の狸が言った
「よかよかっ!太三郎、、、」たしなめる様に金長狸は言葉を放つ「娘ご、この金玉袋は幸運がつまっちょる、大きければ大きい程この町は栄えるけん」
と金長狸は自慢気に言った「へーー!狸の金玉袋って凄いんだね!」と何か関心したようにすると、優花は両手を伸ばして金長狸の玉袋を触ろうとする
「こらっ!控え!」太三郎狸は優花を制する
『何やってんだよ』とオジーは小声で優花に『だって、幸運って言うし柔らかそうじゃない』悪気も無く答える
金長狸は軽く笑い「ハハッつ中々、豪気な娘ごやけん~わしは嫌いでないわや!」
煙管を口元から離しオジーに向ける「おまん、猫又やろ!最近ここいら一体を騒がす輩わっ」
「えっ?」オジーは全く身に覚えがなかった、そもそもほぼ外に出てないし優花以外に会った記憶が無い。
「、、、、いや俺、、、自分は外にほぼ出てませんので世間を騒がす様な事は覚えがないのですが」頭にてをおき傾ける
「オジーって意外と有名人なんだね!」何も考えずに優花は言った
『そんな訳あること無いだろっ!』オジーは優花に小声で返す
「おまん、白を切る気かえ?」と煙管を咥えると金長狸は着物の袖にてをやるとスッとipat(タブレット端末)を出した
体のサイズがデカいので一番大きいであろう端末が超小型なスマホに見える「そうけ、、、、これうを見ても言えるんけ」
そのタブレットに映し出されてるSNSには加工がされてはいるがオジーの姿だ。
最近話題の【ミーム猫】の様に腰を左右に激しく振ったり、ミュージックに合わて踊っていたのだ。
「!!!!!!!!!」オジーは驚いた!まさか自分の動画がこんなにも流れているのを知らなかった
配信の日付は昨日で数字を見ると既に100万再生を軽く超えていた。
オジーは優花の方を見ると、ケタケタ笑いながら「今時の狸ってスマホ持ってるのね、、、、っ」
続けざまに「そのショート動画面白いでしょ!私が撮ったの加工したの」と言った
「、、、、なあッ!何してんだよ!」思わず優花に詰め寄るオジー
「あっ!ごめんね、、、、オジーには後で言うつもりだったんだ。オジー撮影嫌がってるから」と少し反省しながら顔に手をやりオジーに謝る
「あんな、もし世間にこの事がばれたら大変な事になるんだぞ!」
「本当にごめんね、、、、でも、オジーは私の自慢だから、我慢出来なくてさ」とちょっぴり本気で反省してる様だった
『はあーーっつ』と心の中でため息の出るオジー『子供のする事に大人気がないと言い聞かせるよりなかった』
金長狸は「娘ご、おまんが拡げたんけ」
優花は立ち上がり「そうだよ!、広げたのは私。オジーは悪くない」
「おい!優花」オジーは優花の袖を引っ張る
「まあ!そいはそいや!どない悪ーーっても、人間には関係のうけ。これわワシ等、妖怪の問題じゃけんの」
「ワシ等は人間と神事の境にある近うて遠い存在や、そうせい安易に人様の前に出ていけんのじゃ。覚えておき」
金長狸は肘をついて
「まあ、、、、今回は娘ごの行いとして許す、、、、」オジーと優花は顔を見合わせるが
「と言かんのじゃけんな」と金長狸は煙管を吹かした
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5:守護者 金長狸の悩み事
【カア――――ン】煙管を神輿のへりに軽く叩き付ける
遠巻きに篝火がユラユラ揺れる
「又猫、おまんがしよる事はこの際ええ。そうな妖怪はええ意味で自由け、けどんココはワシ等の護る土地やけんの。
ほんなら勝手にされんのは困るちゅうし、仁義はとうてもらわんといかん」金長狸は見下ろしながら言った
「はあ、、、、」気のない返事しかオジーはでなかった
「ほんならワシの話ば聞いて貰うけん、、、、そん前に猫又、近こうきんしゃい」神輿の上から金長狸は軽く指を立て【ひょいひょい】手招きした
オジーはちょと腰が引けて前に出れない。「ほな、はよう」すると神輿の右側のもう一匹の鎧兜の狸が「叔父貴が呼んどる」と野太い声で言いオジーの背中を促す様に押した。
二、三歩踏み出るオジー、金長狸は神輿の踏み台から一歩足を伸ばす
ぬっと顔をオジーに近ずけると、思った以上に金長狸はデカい。大狸というよりは目の周りが黒い超巨大な熊、その気になればオジーなど一飲み出来そうだ
「う~ん、、、、」金長狸はオジーをまじまじと眺めると、首をクックッと曲げオジーのひょいと襟元をつまむと
「!、」少し持ち上がるオジー【スパッツ】とオジーのスカジャンとパーカーは脱がされ上半身が裸になる
オジーは両手を上げたままのになり、金長狸は巨大なグローブの様な手でオジーの上半身を撫でまわし指でつまんで少し毛を引っ張ったりした。
されるがままに身動き出来ない、金長狸は左手でオジーのあがった両手を親指と人差し指で掴みクルッと回す。
金長狸はオジーの毛並みを確かめつつ、オジーの脇腹の皮を摘まんだり伸ばしたりした
「、、、、良い!良い!ええ毛並みや!!、、、、思った以上や!!!」嬉しそうに眼を輝かしてポンと軽くオジーの肩を叩く
よろよろとオジーは神輿の踏み台から滑り降りると地べたに座り込んだ。
「オジー大丈夫?」優花がオジーに駆け寄り言う「、、、こっ、怖ええ、、喰われるかと思った、、」オジーの心臓はバグバグ鳴ってた。
「まず、話さねばならん事やけん。わいが今土地の守護者にのうて大分たつ~う」少しだけ語尾があがる
神輿の上で軽く目を伏せ気味に金長狸は言った
「今、町は昔色々おうて、そいわそいわ大変ようたが、わいも仲間と共に戦い町を栄ささせんと頑張っりよった」
【かつての若い頃の金長狸の戦いの回想が入る】(巨大な蛇と戦い、デカい狛犬とのたたかい等)
「こん町が栄るたびに、わしは大きく強くこの金玉袋も大きゅうのうた」
優花とオジーは金長狸と金玉袋を見上げる
「、、、、大きいなり過ぎた!」と金長狸は『ふう~』ため息をつく
ジロッと優花とオジーを見下ろす
「おまんら、ワシ等が来るちょきに木の影エ~から見ちゃろ、、、、」と立ち上がる金長狸は自分の金玉袋を持ち上げ踏み台を一歩踏み出すが、
ドンと重そうに引きずる「ワイの自慢の金玉袋、おおきゅうなり過ぎて歩くのもままならン!」
「親ビン!」太三郎が「叔父貴!」両脇の鎧兜の狸が大粒の涙を流してる。「、、、、うっうっつ」周りの狸達のすすり泣く声が聞こえる
金長狸も空を見上げ瞳を潤ませていた「わいはこん町を愛しておる!」「わい金長んは、こん町を隅々まで行き守り!栄えさせんが!氏神としての誉じゃけん!」
金長狸はゆっくりと神輿の椅子に座ると金玉袋を軽くめくり、オジーと優花に見せる。引きずるせいか赤く擦りむき腫れていた
「こん自慢の金玉袋、いま痛うての~全てを見守んのは難しゅうのうた、、、、」ガクッと項垂れる金長狸
「、、、、可哀想」と優花は言った。オジーはキョトンとしていた。
篝火が風で揺れる
「でだ、これじゃ!」と懐のタブレットをオジーと優花に見せた
相変わらずオジーの変な場違い動画が流れている
「わしは猫又おまんを見てピーン!と来た、おまんの皮でわしの金玉袋包めば歩けると思ったじゃけん!」
「、、、、へっ?」ポカーンとなるオジー
「猫又おまんの皮でわしのふんどしを作るんじゃ」オジーと優花はお互いに顔を見合わして
「ええええええええっ!!!!!!!!!」と叫んだ!
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6 :金玉袋とふんどしとオジー
「これ天啓じゃけ」金長狸は大真面目な顔で言った
「なななんあんなんなんん、、、、」オジーは目の前の大狸が何を言ってるか分からず、半分頭が真っ白に半分慌て言葉にならない。
「ふんどし??それっって、パンツのことだよね?」優花は口がポカーンと開いたまま言った
金長狸は神輿の椅子に座り「まあ、現代風に言うちょパンツやな」と目を上に向けて軽く顎を撫でた
「又猫、おまんの毛並み、皮の伸び、張りは思うとるよりヨカけん!わしの金玉袋を守るんには素晴らしか」
「、、、、、」オジーはアワアワして言葉が出ない
「狸さん、狸さんの事は可哀想だけど、オジーをパンツにするなんて駄目だよ!オジー死んじゃう!」優花はオジーの肩に抱きつき金長狸に言った。
金長狸は半目になり顎に手を当てたまま「皮を剥ぐゆうても、背中の首から尻尾の上までじゃ」「又猫は妖怪じゃけん死にはせんじゃろ、半年後には戻る。暫くは
動けんやろうが」と冷たく言い放つ
「いやいやいや、、無理、無理、無理、無理」オジーは」両手を金長狸に向けながら首を左右に振った
「痛いんは一瞬じゃき、ちぃと我慢せい」と金長狸は煙管を咥えた
「じたばたせんと諦めんしゃい、天啓じゃけん」「ほなけん悪い話ばかりでないで、わいの金玉袋を守るん言うは運がおんしに行くゆうことや!」
篝火が風で揺れ『パキッ、パキッ』と音立てる。金長狸の影が揺れてオジーと優花に伸びた
いつの間にか取り籠んでる狸の群れが近い。逃げられない絶望的な空気が流れてる
「、、、、芝右衛門」金長狸が人差し指を立ててクイッと振った「はっ!」左側の鎧兜の狸がオジーの両手をガシッと掴んで両手を広げた、異常に力が強くてビクともしない
数匹の狸がオジーの両足を左右に引っ張り貼り付け状態になった、そのまま猿轡をオジーに噛ませた「うんぐっつっつ!」
「すまんな、、、」芝右衛門狸は大きな瞳で太い眉毛をキリリとさせポツリと呟く
「オジー!」優花は狸達に捕まれ後ろ手にされた
太三郎狸が刀を抜いて降ろすと、一匹の狸が桶を持って来て柄杓を桶から拾い上げて水を汲み刀の峰にかけた。
「んんんんんんんんんんっつう!」オジーは首を左右に激しく振った
太三郎狸は前に出て「安心しんせい、拙者の腕は超一流やけん逆に動くと危のなる、、、首が飛ぶのは嫌じゃろ?」
「!!!!」オジーは頭から血の気が引くのを覚えた
〖ザッツ〗っと太三郎狸は両足を広いて刀を肩越しに上げ、八相の構えをした。「お覚悟!」
言うと同時に刀を振った!
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「オジー!!!!!」優花が狸達の手を振りほどきオジーの処に飛び込んできた!!
「なんと!」 太三郎狸が焦る! 振り下ろした刀が優花の髪を散らす
【ザッツッッーーーーー!】優花はオジーに抱き着いたまま倒れこみ地面にへばりついた!
オジーの猿ぐつわが勢いで外れる「優花!!!」オジーは抱き着いたままの優花を見上げた
優花の髪を束ねてる組紐がポロッと落ちて、リュックサックの側と肩ひもが切れていた
「、、、大丈夫だよ」優花はオジーの上で頭を上げた「 優花、」安堵の顔をするオジー
太三郎狸は「危のうござる!拙者で無ければ二人とも真っ二つでござった!」と片目を閉じて言った
超絶な刀裁きで優花がオジーに抱き着いた瞬間に太三郎は刀の軌道を変えたのだ
神輿の上から「なんばしよる、娘ご」静かに低い声で金長狸は言った
優花は立ち上がり「オジーは、オジーは私の猫だよ、、、絶対に傷つけさせない!」オジーの上で仁王立ちになり両手を広げた
優花の束ねていた髪が肩まで降りてなびく
金長狸は神輿のへりを掴むと【バキッ】と音がして金属の枠がへこんだ「娘ご、これは定めじゃき人ごときが口を挟むこんでないきに!」立ち上がる金長狸。
金長狸の目は青白く輝き瞳が見えない、代わりに巨体が黒く闇に溶け込み身体の周囲から青白いオーラが噴き出し滲み出る
「猫又を渡さんかい!」ドスの効いた野太い声が地面に響き渡る、金長狸声は空気を振動させる程だ。
「オジーは渡せない!どんなことがあっても渡さない!」優花を見上げると不思議なオーラが優花を包んでいる。
「優花、お前、、、」オジーは驚いた、白金色のオーラが見える
「人の子とは故、わいに逆ろうて無事にはすまんぞ、、、」金長狸は益々黒く濃くなる
じりじりと狸達がオジーと優花に近づく
優花のオーラがオジーにも纏わり、切れたリュックサックを照らす【 ! 】オジーはリュックサックを見ると中のパーカーが激しく輝いてた
「待って!待って!、、、」オジーは優花の股の下から手を挙げた
「なんじゃ!大人しゅう皮を差し出すん覚悟を決めたんか?」金長狸の横顔が怖い 「オジー!」優花が叫ぶ
「違う、違う、、、そうじゃ、そうじゃない!」オジーは首と両手を同時に激しく振った
「金長狸様、要はあなたの金玉袋の傷を癒して護れればいいんでしょう!」とオジーは言った
「そいじゃ、おんしの皮が有れば出来る言うておる」
「俺、、じっ、自分の皮は無理ですが代わりの物でいいならどうです!」「代わり?そんなもん有るんけ!?」金長狸は胡散臭そうに言った
「有ります!有ります!、、、⦅多分⦆、、、」オジーは最後は小声で言った「嘘なら皮を剥いで貰うけん」金長狸は椅子に座り込む「はあ、、、、」と気のない
返事を返す「まあ、ええか出してみい」金長狸のオーラが鎮まる。「ありがとうございます」とオジーは頭を下げる
「オジー大丈夫なの?」心配そうに声を掛ける『いいか、よく聴いて、、、』オジーは小声で優花に話しかける
遠巻きに狸達はオジーと優花を見守り金長狸は神輿の上から眺めながら「あんま時間はないぞい」と耳の穴を小指で掻く。
ユラユラ篝火の光が照らす
「あの~」オジーは神輿の脇の太三郎狸に話しかける「なんぞなもし?」
「俺の背中の皮を切らずに毛だけ切れますでしょうか?」オジーは聞いた「そげな事簡単じゃが親ビンに断らんと出来ん」
「はあ~お願いできます?」オジーは頭を軽く下げた
「親ビン、猫又が毛だけ切れるか言うおりますがいかがしよります?」太三郎狸は神輿の金長狸にきいた
顎を突き出した金長狸は手を上下に振った「ええやろ、半分位残して切れ」
太三郎狸は振り返り「親ビンの許しがでたけん、かまわんぞ」オジーは「ではお願いします」と正座をした
「あの~ホントに皮は切らないで下さいね」恐々、太三郎狸に言う「大丈夫じゃきに!拙者の腕は天下一じゃけん」
「はあ~」と言うとオジーは目をつぶって背筋を伸ばした「オジー、、、」優花は心配そうに両手を組んだ。
太三郎狸は八相の構えをすると「はっ!」と声を発する。【シュッ】ほぼ音もなくオジーの肩から腰の辺りの毛がフワフワとゆっくり落ちた
〖キンッ】太三郎狸は刀を鞘に収める「安心せい」太三郎狸が声をかけた。
オジーはどっと冷や汗が噴き出る気がした。「オジー!」優花が駆け寄る「毛を集めるぞ」オジーと優花が落ちた毛を拾い始めた
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7:金玉袋を包む物:奇跡と着績
オジーと優花は向かい合って作業をしていた
【フアア~】とあくびを上げる金長狸、神輿の椅子の上で鼻毛を引き抜く「そろそろ時間じゃけん」
「出来た!、、、でも大丈夫かな?」優花が顔を上げるて言った「これでダメなら頭を下げて切られる皮を減らしてもらうしかない」
「オジー死んじゃうんじゃない?」と心配する「ハハッ、、、もうなるようにしかないからな」目が泳ぐオジー
オジーは畳んだ大きな布を優花と一緒に持って金長狸に近づく。優花は金長狸を見上げると「すみません、その金玉袋を持ち上げてもらいません?」と言った
「うむ、、」金長狸は両手で金玉袋の端を掴みクイッと持ち上げた。オジーが「失礼します」と頭を下げ、優花とオジーは急いで上がった金玉袋隙間に
赤い布を丁寧に手早く広げる。それは優花の切られたリュックサックからこぼれた赤い『悪魔』逆さに書かれたパーカーの前側を切り伸ばした物だった。
パーカーの上にはオジーの切り取られた毛が敷き詰められている。
二人が金玉袋の下にパーカーを敷き終わると「狸さん大丈夫、置いてみてください」と優花が言った
「うむ、」金長狸は金玉袋をパーカーの上に置くと、僅かながら光の雫がこぼれる様に発光した 「!?」目を開いて驚く金長狸「こいわ、、!」
パーカーの端と袖口を伸ばして結ぼうとオジーがするが長さが足りない
オジーは金長狸に恐る恐る「あの~何か、つなぐ紐の様なものがあればお願いしたいのですけど、、、、」と軽く頭を下げる
金長狸は「太三郎、芝右衛門ふんどしの紐ばもってきんしゃい」呼んだ
「へい!親ビン!」太三郎達はスタスタと足を速めて大きな、しめ縄を持ってきた。「これでいいけ?」太三郎と芝右衛門が頭の上に担いで持ってきた
縄の長さだけで4.5メーターは雄に有る、太さも10センチを超えてる〖えっ!〗と少しビビるオジー
優花が「大きな縄!でもこれじゃ~結びずらいなあ」とこぼす。
すると太三郎狸が「手伝うじょ、親ビン良いけ?」と金長狸に聞いた「せやな、手伝うてやれ」太三郎狸と芝右衛門狸も紐を結ぶのを手伝う
「出来たね!」優花は軽く額の汗をふいた「でも少しちいさいね、伴倉庫みたい」と笑った。パーカーは金長狸の金玉袋の底面の半分を覆う位のサイズしかない。
ぱーかーの端をしめ縄でむすんで金玉袋を腰ひもで繋いでいる
「とりあえず、今やれることはこれぐらいが限界だな」オジーは汗を拭きながら言った
「ええか?」金長狸はオジーと優花を見つめる、固唾をのむ二人。
金長狸は神輿の椅子のひじ掛けに両手をかけグッと力を込めて立ち上がった、そしてゆっくりと一歩前に足を出す。
大きな金玉袋は引きずる処、包んだパーカーが光の雫が発行して接地面から僅かに浮き上がり滑る様に進む
金長狸は「ほおおお!」と感嘆の声をあげた
「親ビン、どんな具合で?」太三郎狸が興味深そうに聞いた「うう~ん!こいは不思議やどないのうてん?」金長狸はオジーを見下ろして聞いた
ホット肩を撫でおろしながら言った「、、、その布には魔除けの色と『悪魔』の文字が逆さにプリントされてますのでタロットカードの‘回復‘の意味があります」
「金長様は氏神様なので、もしかしたら効果があるのかな~と」説明した。金長狸はゆっくりと神輿の椅子に座りなおした「ほう?タロットカードとは?」と尋ねる
「西洋の、西洋の占いですか、日本で言うおみくじの様なもですね」金長狸は少しだけ片方の眉をあげた「伴天連のもんか?」
ちょっとヤバい?気に入らないのか?心臓がバクバク鳴る「でも、でも悪いもんでは、ありません!実際効き目がありましたし!」バタつくオジー
金長狸は‘ニッ!‘と口元を緩ませる「せやな!伴天連のモンでもわる~ないな、そいに猫又、貴様の毛の効果も有るんやろ!」とガハハハッと笑った
オジーはフウ~っと息を大きく吐く、優花が「良かったね!オジー私に感謝しないと」と笑顔で言った
金長狸は大声で「又猫、近うきんしゃい!」と呼んだ
「へっ?」また緊張するオジー「大丈夫じゃき」金長狸は手招きする。オジーはおずおずと神輿の踏み台を上がった
【バンッ!】とオジーの肩を叩く「猫又、おんしやるやんけ!この礼はいずれするき、楽しみにしちょき」と顔を寄せてた
「じゃが一つだけ問題があるかの」と真顔になる。「えっ?」焦るオジー
金長狸は「わしの見立てじゃと、こん布は持って二か月やろ」「必ず二か月後に新しかふんどしを奉納せい、、、さもなくば今度こそ、おんしの皮を剥いでふんどしにするけん」
とドスの効いた声で囁いてオジーの毛を引っ張る。滝汗をかくオジー「おんしの皮で作おうた、ふんどしなら三年は持つきの!」目がクルクル回る
脇で聞いてた優花が「ダメッ!オジーをいじめちゃ!オジーは私の猫だからね!」優花はプンプンして言った
金長狸は又ガハハハッ!と空を見上げて大笑いをして「大丈夫きに、約束を違えねば大丈夫きに」と又、大笑いした
「娘ご、おんし中々の豪気じゃの!嫌いじゃなかよ!」と言い金長狸は優花を手招きした。
優花が近づくと金長狸は懐から白い風呂敷に包んだ箱をつまみ手渡した「なにこれ!?」と声を上げると金長狸は「御守りじゃ、大事にせい」と言った
「ふーん?有難う狸さん」箱は優花が抱える位の大きさだった
芝右衛門狸が「叔父貴、そろそろ時間じゃきに」「うむ、せやな、、、」金長狸は立ち上がると「おまいら今宵は‘祝い‘じゃけん!帰って酒ば煽るばい!」と手を上げた
『ワア――――――――!』と狸達が沸き立つ。 ぴょんぴょんと太三郎狸が優花に近づいて「娘ご、おんし人にしとくには惜しいのう、狸なら嫁にしたいじょ」頭の後ろに手を組んで言った
優花は「狸さん面白い!」と返した
祭囃子の中で神輿を担ぎあげる狸達、来た方と逆に向き直して「ほな!約束はまもりんしゃい!」と金長狸は片手を挙げてヒョイヒョイと振った
「出来たふんどしは何処に収めれば」とオジー言うと金長狸は上の方を指して「境内に奉納せい」と背中越しに答えた
【ドンシャン!ドンシャン~ピーシャンヤララ~】笛や太鼓吹き鳴らす。狸達の百鬼夜行が始まる
白い靄が辺りを包むと祭囃子の音が小さくなっていく、先程の喧騒が嘘のように静かになった
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8:祭りのあと:狸のお話の終幕 :優花と猫のオジー
濃い靄が晴れるとそこは神社の石段の踊り場だった
「なんか、すごかったね!」優花はワクワクしながら言った。オジーはへたり込み「死ぬ処だった、、、」と呟く
「なんか狸さんにプロポーズされたの私が初めてかな!?」とオジーに聞くと「、、、似合いなんじゃない、狸顔だし」と座り込んだまま答えた
「ひどっ!オジーは私に感謝しないとダメなんだからね!、、、やっつぱり躾が足りないのかな?」と眉をあげ腕を組んだ
「そもそも優花がネットに動画を載せなければこんなことに、、、まあ、助かったからいいか」オジーは立ち上がると
優花の頭に手を置いて「ありがとう、助かった」と軽く撫でた。優花はニンマリ笑って「もっと褒めて」と言う「、、、調子にのんな」とオジーは呟く
オジーが服を着ている横で優花は金長狸から貰った、風呂敷袋の包みを地面に置いてしゃがみ込んでいた。
「なに入ってるのかな?」優花は包みを見つめながら呟く、オジーは「変なもん入ってたら怖いから開けんなっ!て」
言ってるそばから袋をほどく優花「って!」目を大きく見開くオジー
風呂敷の中には桐の木箱があり蓋を『パカッ』と開ける優花 「あっつ!」優花が叫ぶ、オジーが箱の中を覗き込む
「狸の置物だっ!」信楽焼の狸の置物が入っていた、優花が両手で持ち上げる。背中に金長と掘ってある
まじまじと信楽焼の狸を見つめると優花は「金玉袋大きいね!」と言って笑った「もう、金玉袋いいよ」ウンザリしながらオジーは言い聞かせる様に言った
「帰るぞ」オジーが背中を丸めながら歩くと優花が背中に飛びついた「わっ!」ビックリするオジー
優花は「オジー寒いでしょ?背中の毛いっぱい切られたから」「私が温めてあげるよ」とおんぶ状態になりながら耳元で囁いた
「寒くない!もう、子供じゃないんだから歩け!」とオジーは言うが優花は離れない
「感謝が足りないな!オジーは私が居なければ今頃、狸さんの金玉袋のパンツになっているんだからね!」
首に両手を回して、ぎゅううーー!と締めた「、、、苦しい!苦しい」「分かったから首をしめるな」
「有難く想え!」と偉そうに言う「、、、へいへい」オジーは優花をおんぶしながら階段を降りる。
優花が手前に持ってる風呂敷包みの箱がユラユラ揺れてる
「オジーお腹減った、ハンバーガー食べたい!」「は?まだ正月二日だぞ、まだ家にお餅がいっぱいある」
「いいの、食べたいの!ついでにチキンも食べる!」
「やっつぱり、子供じゃないか!?」
「何をおお!!」小さくなる二人
遠くで祭囃子の音がする 透き通る青空の下 大きな森のある神社の境内から広がる街並みが見える
⦅おしまひ⦆
:初詣と大狸の杜のお話 :優花と猫のオジー:
リビング。正月らしさゼロの部屋の中、王子は
〖愚者〗と書かれたカーキ色のパーカーを着て、
こたつでだらけている。テレビではお笑い番組が流れている。
王子は、ふてぶてしい顔でテレビを見ながら
頭をコタツの天板に横倒しにして
「正月ほどやることのない日はないな」と思う
するとキンキン声を張り上げながら優花はリビングに駆け込んできて
「オジー! 今から初詣に行こう!」
王子は振り返りながら怪訝な顔で
「……オジーはやめろよ、なんど言ったら、、、」
優花は得意げに胸を張り
「だって猫の姿のおじさんには、ちょっと違う名前が似合うと思って! どう? 可愛いでしょ!」
王子は面倒くさそうに目を閉じると
「可愛くなくていい。俺はおじさんで充分だ。」ぼつりとこぼす
「猫でおじさん、、、名前が王子だし、おおじ、オジー呼びやすいし猫にピッタリ」得意気に優花は言った
『人の話を聞かない奴だ』とため息が出る
王子はパーカーのフードを少し被りながら
「正月ってのはだな。こたつに入って、笑って、食って寝る。それでいいんだよ。」
「オジー、またそのパーカー着てるの?」
王子は少しくすんだカーキー色を大体着ている
「いいだろ。これが一番楽なんだよ。」
優花はパーカーの胸元を指さしながらニヤリと笑い
「だって、〖愚者〗って書いてあるんだよ!? 何、、、馬鹿の自己紹介なのかな?」と軽く小首をかく
王子ちょとムッとして
「違う。これは深い意味があるんだよ。」
「どこが!? ただの引きこもりが開き直ってるだけじゃない?」と語尾を上げて言いながら
自分のリュック下し中から白いパーカーを取り出す。胸元には大きく〖賢者〗の文字が書かれている。
優花は得意げにぱーかーを広げ
「じゃあね、見てみて私のこれ! オジーが愚者なら、私は賢者だね!」
王子は呆れた顔で「お前な……よくそんな恥ずかしいもん買ったな。」
「それをオジーには言われたくない」
優花はパーカーを頭にかぶり下に降ろすと、頭と腰に手をおきポーズを決めて
「似合うでしょ!? 賢者って感じする?」
王子は真顔でめを細めて「全然しない。むしろお前が愚者だろ。」
「ひどい!そんなこと言うオジーにはチュルルお預けにするよ!」と優花はたしなめる様に言う
「ニャッッつ」思わず変な声が出てしまう王子
「そうそう実はもう一枚パーカー買ったんだ、見てみて」と言うと
リュックから赤いパーカーを取り出すと自分の肩に合わせて王子にみせる
パーカーの胸には小さく四角に背中には大きな黒い文字で【悪魔】と書かれてた。ただし逆さに書いてある
「可愛いでしょ、二枚買うとお得になってたんだ」ニンマリ笑いながらと言った。
「文字が逆じゃね?」と王子は言った
「そうなんだよね、、、なんだろ?印刷失敗したから安いのかな?」と優花は小首をかしげた
少し間をおいて「、、、うーん多分」と王子は言いかけると
優花は突然真剣な顔で「ねえねえ!、オジー。せっかくだから初詣に行こうよ。」と言葉をさえぎると
無理やり王子の腕をひっぱった
「も~う!早く!」
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そんなやり取りの中、優花が初詣の話を切り出す。
「初詣なんて何年も行ってないし、そもそも正月だから神様に挨拶って逆に失礼だろ」
優花は口を尖らせながら「ダメ! 正月は神様に挨拶しないと!」
王子はうだうだししながら「神様はいないが悪魔はいるかもな」と優花を見ながら言った
優花は手を腰に当てながら
「フーン、、、じゃあ神様にはやっぱり感謝しに行かなきゃじゃん!もし行かないと凄い天罰下るかもね」
横目でチラッと亮介をみて一言
「天罰って怖いよね、、、、」王子は自分が猫になったのは姪っ子優花の‘お願い‘を思い出し少し間をおいてモゴモゴしながら
「……理屈が無茶苦茶だ……」とぼつりと言った
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王子=オジーがデフォルトです
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2. 初詣への道中(愚者と賢者の変装)
神社の参道。石段を上がる最中上からお囃子の音が聞こえる
開けた参道には出店があり正月二日目だがそこそこ人通りはある石段を上がる二人。
オジーはジーパンに愚者のパーカーの上からスカジャンを羽織、黒い目出し帽とマスクにパーカーのフードをかぶってる
おまけにサングラスをかけ一見、変質者に見えないでもない
優花は賢者のパーカーの上からダウンを着てピンクのリュックサックを背負い
寒いのに関わらず黒いショートパンツにニーハイを太腿の上までとめている
「オジーなんか変質者か輩みたいだね」階段を飛び跳ね優花は言った
「あんな、、、俺は半月ぶりの外出だし、そもそも顔を出して歩けないだろ」
「えーーーっ?結構可愛いと思うよ、逆に人気でると思うけどね」とちょと意地悪い顔をしながら優花は言った
「他人事だと思って」オジーはぼやいた
参道の屋台を眺めながら歩く2人。
「ちょとお腹すいたから、何か買ってくるからそのベンチで待ってて」
優花はそういうとダッと駆け出す
オジーはベンチに座ろうするといい匂いが横でする
屋台のイカ焼きが鼻の鼻腔をくすぐる
「……凄いいい匂い、なんか腹減った。」フラフラしながら屋台へ
「へい!いらしゃい、」屋台の親父が言った
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「ハフっ、ハフ、、ハフ、、」オジーは人目の付かないベンチで参道とは逆の方を見ながら
イカ焼きと格闘していた。猫舌のせいで思ったより食べにくい
眉間にしわを寄せて何とか口の中でイカを転がしていた」
「オジーは猫だからイカ食べちゃダメだよ!」肩越しから優花が声をかけてきた
『んっぐっ』思わずイカを飲んでしまうオジー細い喉に引っかかる
「げほっつ!げほっつ」熱いうえに飲んだので咳き込む、頭から湯気が出そうだ
「おまっ、、ビックリ!するッつ、、、だろ」思わずサングラスがずれる
「もー!勝手に買い食いして!猫はイカを食べるとお腹を壊すんだからダメなんだよ」ベンチに座るオジーに上から見下ろして言う優花
「はい、お水」とペットボトルを差し出す
急いで蓋を開け浴びるように飲みこむ「げほっつ!げほっつ!」
「はははっはあはっは、、、オジー面白い!漫画みたいな顔してる」ケタケタ笑いながらオジーを指さす
「正月に死ぬところだったわ、」ふーっと息をはく
「でもホントにイカはダメだよお腹壊すからね」「はいっ」と別のトレーをオジーに渡す優花
同時にオジーのイカ焼きを取り上げる
「ああああ、、、俺のイカ焼き」名残惜しそうなオジー
優花はオジーの隣に座るとパクパクと残りのイカ焼きをたいらげる
「これ、は、たこ焼き」オジーに手渡されたのわアツアツのたこ焼き
「タコもイカも同じだろ」怪訝そうな顔をすると
「大丈夫だよ!タコ入ってないから、タコの代わりにチーズはいってる」
「タコの入ってない、たこ焼きッて最早たこ焼きでわないだろ」たこ焼きをどよんと見つめる
トレーを開けると、たこ焼きの上にかかってる鰹節が熱さで踊ってる
「、、、、俺、猫舌なんだけど」
優花は食べ終わったイカ焼きのトナーを置くと、オジーの持ってるたこ焼きに楊枝をさすと
「フーフーしてあげようか?」と笑いながらオジーの前に楊枝の刺さった、たこ焼きを差し出す
ちょっと顔を離すオジー「子供か!食べれるはっ」と一個口に放り込む
「!!!!」「あちいいいいいい!!!」耳の穴から飛び上がるほど湯気が出そう
「はははっはあはっは、、、、オジーほっホントに面白い!!!!」
ベンチに座りながら笑い転げる優花
「アハハ!無理するからさあ、フーフーしてあげっるて」
「んんんんんんんん!」水をガバガバ飲むオジー
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青い空のしたカランカランと神社の鈴がなり二回『パンパン』と手をたたく二人、神前に頭をさげる。
「何願ったの?」優花は尋ねる
「、、、、秘密と言いたいとこだけど」と「早く人間に戻してくださいだよ」
優花は「ええええええええっ、その願いは却下です、かないません!」
「なんでだよ、、、、」
「だって私の願いの反対だもん!私はいつまでもオジーが猫でありますように!だし願わくばもっと可愛い猫になりますように!だから」
「ひで!」
境内の中、二人のやり取りを見つめる人影「これはこれは又、猫の化身様ですね。お正月そうそう珍しい、、、、」
白い羽織に赤い袴、仙人のような白く長い髭の神主
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優花は楽しそうに「オジー! おみくじ引こうよ!」
オジーはスカジャンのポッケに手を入れながら「俺はいいよ、こういうの興味ないし……」
優花は既に箱にお金を入れていた
「いいから引いてみて! 猫の運勢もあるかもしれないよ!」
細い棒の入った箱を両手で振って逆さにする優花
渋々ながらおみくじを引くオジー。優花も隣で引き、結果を見比べる。
「私は大吉! やったー!」ガっ!と両手を上げて喜ぶ優花
オジーはおみくじを広げて「俺は……『凶』だと……?」
優花は爆笑しながら「オジー、今年もついてないね!でも大丈夫だよ私がいるからね」と得意げに人差し指を左右に振った
「うるせえ。」
さらに、おみくじには「動物に関する出来事に注意」と書かれている。
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3、鎮守の杜の大狸:狸様の百鬼夜行
「そろそろ、帰るか」オジーが境内の石段を降りる
「ねえー!お昼ピザにしようよ!」優花は石段を二段飛ばしで降りる
「正月早々、ピザはないんじゃねー?」
「えーー?お餅飽きたし、今時食べたいものたべるっしょ!」少し先に降りた優花は振り返り言う
「ピザがダメならケンタでもいいよ、チキンバーガー!」
「正月からジャンクだなー?子供か?」少し呆れ顔のオジー
「子供ですよーっ」とイーッと舌を出してみる優花
「でもオジーは私のペットだから飼い主の言うこと聞かないと駄目でしょ?」おどけてみる
「誰が飼い主だ!俺はペットじゃない!」
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しばらくすると何故か辺りは白い霧に覆われてきた
「、、、、なんか真っ白だね」少し不安そうな優花
「先がよく見えないからゆっくり降りよう」⦅昼間なのに霧とは?⦆オジーもちょっと不安になる
程なく階段の踊り場に出る、空気が冷たい
『カーアー、カーア―』バサバサと頭上をカラスが数羽通り過ぎる、振り返ると降りてきた先の階段も真っ白に覆われて先が見えない
異様な静けさが流れ
オジーと優花は背中合わせに張り付く
『シャン、、シャン、、、シャン』階段の上から鈴の鳴る音が近づいてくる 更に小さな笛の音とお囃子が少し上からも聞こえる
白い霧の中に何かの影が見えると同時に『ぽん、ぽん』と跳ねる小さな音が先にくる
「 、、、、!」ゾクゾクッと寒気がしたオジーは優花を抱きかかえて石段の脇の大きな木の後ろに隠れる
木の影から様子を覗う二人
ぬっと霧の中から大きな担ぎ棒を持った二足歩行の狸達が出てきた、先頭の狸達は山伏の頭巾を被り錫杖で石段を叩きながら降りてくる
中には笛や太鼓を持ち踊り歩く狸、笙を吹く狸もいた。「、何あれ!狸のお祭り!」目を輝かしながら覗き込む優花
『しっ!声がでかい』オジーは小声で言い、優花の口元を手で押さえながら
『あれは多分、狸の百鬼夜行だ、、、あいつらに気ずかれたら帰れなくなるぞ』
『百鬼夜行?』もごもごとオジーの手の中で優花が口を開く
先頭の狸に引き続き神輿を担ぐ狸が出てきた、神輿の上には熊の三倍以上ある大狸が飾り立てられた巨大な椅子に座ってる
見るからにヤバそうな雰囲気がでてる
大きく派手な着物の上に金ぴかな陣羽織をまとい金属バットのおおきさの飾り付けの煙管を咥えてる
着物の前ははだけて胸が出ていた⦅フーーーーーッ⦆と煙管をひと吹き、踊り場の前で
「、、、ここらでいいやろ」野太いこえで大狸は言った。すると今までの騒ぎがピタッとやみ静けさが戻る「おろせや、」と大狸
神輿の前にいる鎧兜を被っている狸が手を挙げて周りの狸が台を神輿の周囲の下に置いた。
鎧兜の狸が踏み台を神輿の前に置いて「親ビンどうぞ、、、」と大狸に声を掛ける
ゆっくりと神輿が台の上に乗ると「ぎゃあー------!」と大狸は悲鳴を上げる!ビックリする周囲の狸
少し離れたオジーと優花の耳をつんざく!
大狸の巨大な金玉袋が神輿と踏み台の間に先っぽが挟まったのだ
「わわわわあっ!親ビン大丈夫ですか!」慌てた鎧兜の狸、思わず大狸の金玉袋っを引っ張る
ぎゅううーー!「ぐうっ!がゆうあああああ!」顔を真っ赤にして唸る大狸。金玉袋が踏み台の隙間から取れると同時に
【バッキイ―――!】と鎧兜の狸を殴った「いってえええやお!太三郎、何度もしやがっちぇ!」金玉袋の先っぽをフーフーと吹きながら大狸は言った
「親ビンすいまへん」と兜の上からこぶをなでて半べその鎧兜の狸
踊り場横の木の影から様子を覗ってるオジー達。あまりの出来事に『ブハアッつ―――』と腹を抱えて吹きだす優花
思わずスマホを取り出し撮影しだした
オジーは『おい!やめろよっ!ヤバいって!』と小声で優花を抑える
『、、、だっつて、こんな面白いのないよ!』と吹きだしながら言う優花
神輿の上の大狸が少し落ち着くと、じろっと木の影の優花達の方に目をやる
「もう、ええやろ、隠れてないで出てきや」ハッと息を止めるオジーと優花
急いで木の影に隠れるがスッと音もなく二人の両脇に先程の鎧兜の狸と似たような格好の狸が仁王立ちで居た
ビックリ!する二匹まるで忍者のようだ
オジーと優花はポンと肩を叩かれると踊り場の中央に転げ出た
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4:鎮守の杜の大狸:杜の守護者 金長狸
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踊り場の中央に出たオジーと優花、目の前には大きな神輿に座る更に大きな大狸がいた
神輿の上の大狸はただならぬ気配と後光のような金色のオーラを纏っている
近くに来れば来る程、思った以上に大きい。と以外にも優花はキラキラと目を輝かせていた。
オジーは【色んな意味ででかい】と大狸と度胸の座った優花に驚いていた
いつの間にか神輿の辺りから霧が引いていき階段の踊り場から神社の境内の中に移ってる
オジーと優花の上空は晴れているが、霧の晴れた辺りは夜中の様だ。ボッツと音がして、辺りをかがり火が照らしオジーと優花を多くの狸が取り囲んでいた。
神輿の前でオジーと優花は跪いていた。スッと殴らた鎧兜の狸が二人の手前に立つ、頭のこぶが兜の上に出てる
鎧兜の狸は近くで見るとオジーより少し小さい位『サッと』手を挙げると
「こちらにおはすわ鎮守の杜の守護者で大狸様:金長様でおあしなされます、控え---!」と声を上げた
『プハーーーツ』と煙管を含ませ白い煙を吐く
神輿の両脇に立つ鎧兜の二匹の狸は片膝を立て中央に座る金長大狸を称える様に手を掲げる
狸達は一斉に頭を下げた。
「大きいーーー!金玉袋っ!」ぷっつううと軽く吹きだす優花。『へつっ?』額から汗が出るようなオジー
「くらっ!しつれいぞ、娘ご」とコブの鎧兜の狸が言った
「よかよかっ!太三郎、、、」たしなめる様に金長狸は言葉を放つ「娘ご、この金玉袋は幸運がつまっちょる、大きければ大きい程この町は栄えるけん」
と金長狸は自慢気に言った「へーー!狸の金玉袋って凄いんだね!」と何か関心したようにすると、優花は両手を伸ばして金長狸の玉袋を触ろうとする
「こらっ!控え!」太三郎狸は優花を制する
『何やってんだよ』とオジーは小声で優花に『だって、幸運って言うし柔らかそうじゃない』悪気も無く答える
金長狸は軽く笑い「ハハッつ中々、豪気な娘ごやけん~わしは嫌いでないわや!」
煙管を口元から離しオジーに向ける「おまん、猫又やろ!最近ここいら一体を騒がす輩わっ」
「えっ?」オジーは全く身に覚えがなかった、そもそもほぼ外に出てないし優花以外に会った記憶が無い。
「、、、、いや俺、、、自分は外にほぼ出てませんので世間を騒がす様な事は覚えがないのですが」頭にてをおき傾ける
「オジーって意外と有名人なんだね!」何も考えずに優花は言った
『そんな訳あること無いだろっ!』オジーは優花に小声で返す
「おまん、白を切る気かえ?」と煙管を咥えると金長狸は着物の袖にてをやるとスッとipat(タブレット端末)を出した
体のサイズがデカいので一番大きいであろう端末が超小型なスマホに見える「そうけ、、、、これうを見ても言えるんけ」
そのタブレットに映し出されてるSNSには加工がされてはいるがオジーの姿だ。
最近話題の【ミーム猫】の様に腰を左右に激しく振ったり、ミュージックに合わて踊っていたのだ。
「!!!!!!!!!」オジーは驚いた!まさか自分の動画がこんなにも流れているのを知らなかった
配信の日付は昨日で数字を見ると既に100万再生を軽く超えていた。
オジーは優花の方を見ると、ケタケタ笑いながら「今時の狸ってスマホ持ってるのね、、、、っ」
続けざまに「そのショート動画面白いでしょ!私が撮ったの加工したの」と言った
「、、、、なあッ!何してんだよ!」思わず優花に詰め寄るオジー
「あっ!ごめんね、、、、オジーには後で言うつもりだったんだ。オジー撮影嫌がってるから」と少し反省しながら顔に手をやりオジーに謝る
「あんな、もし世間にこの事がばれたら大変な事になるんだぞ!」
「本当にごめんね、、、、でも、オジーは私の自慢だから、我慢出来なくてさ」とちょっぴり本気で反省してる様だった
『はあーーっつ』と心の中でため息の出るオジー『子供のする事に大人気がないと言い聞かせるよりなかった』
金長狸は「娘ご、おまんが拡げたんけ」
優花は立ち上がり「そうだよ!、広げたのは私。オジーは悪くない」
「おい!優花」オジーは優花の袖を引っ張る
「まあ!そいはそいや!どない悪ーーっても、人間には関係のうけ。これわワシ等、妖怪の問題じゃけんの」
「ワシ等は人間と神事の境にある近うて遠い存在や、そうせい安易に人様の前に出ていけんのじゃ。覚えておき」
金長狸は肘をついて
「まあ、、、、今回は娘ごの行いとして許す、、、、」オジーと優花は顔を見合わせるが
「と言かんのじゃけんな」と金長狸は煙管を吹かした
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5:守護者 金長狸の悩み事
【カア――――ン】煙管を神輿のへりに軽く叩き付ける
遠巻きに篝火がユラユラ揺れる
「又猫、おまんがしよる事はこの際ええ。そうな妖怪はええ意味で自由け、けどんココはワシ等の護る土地やけんの。
ほんなら勝手にされんのは困るちゅうし、仁義はとうてもらわんといかん」金長狸は見下ろしながら言った
「はあ、、、、」気のない返事しかオジーはでなかった
「ほんならワシの話ば聞いて貰うけん、、、、そん前に猫又、近こうきんしゃい」神輿の上から金長狸は軽く指を立て【ひょいひょい】手招きした
オジーはちょと腰が引けて前に出れない。「ほな、はよう」すると神輿の右側のもう一匹の鎧兜の狸が「叔父貴が呼んどる」と野太い声で言いオジーの背中を促す様に押した。
二、三歩踏み出るオジー、金長狸は神輿の踏み台から一歩足を伸ばす
ぬっと顔をオジーに近ずけると、思った以上に金長狸はデカい。大狸というよりは目の周りが黒い超巨大な熊、その気になればオジーなど一飲み出来そうだ
「う~ん、、、、」金長狸はオジーをまじまじと眺めると、首をクックッと曲げオジーのひょいと襟元をつまむと
「!、」少し持ち上がるオジー【スパッツ】とオジーのスカジャンとパーカーは脱がされ上半身が裸になる
オジーは両手を上げたままのになり、金長狸は巨大なグローブの様な手でオジーの上半身を撫でまわし指でつまんで少し毛を引っ張ったりした。
されるがままに身動き出来ない、金長狸は左手でオジーのあがった両手を親指と人差し指で掴みクルッと回す。
金長狸はオジーの毛並みを確かめつつ、オジーの脇腹の皮を摘まんだり伸ばしたりした
「、、、、良い!良い!ええ毛並みや!!、、、、思った以上や!!!」嬉しそうに眼を輝かしてポンと軽くオジーの肩を叩く
よろよろとオジーは神輿の踏み台から滑り降りると地べたに座り込んだ。
「オジー大丈夫?」優花がオジーに駆け寄り言う「、、、こっ、怖ええ、、喰われるかと思った、、」オジーの心臓はバグバグ鳴ってた。
「まず、話さねばならん事やけん。わいが今土地の守護者にのうて大分たつ~う」少しだけ語尾があがる
神輿の上で軽く目を伏せ気味に金長狸は言った
「今、町は昔色々おうて、そいわそいわ大変ようたが、わいも仲間と共に戦い町を栄ささせんと頑張っりよった」
【かつての若い頃の金長狸の戦いの回想が入る】(巨大な蛇と戦い、デカい狛犬とのたたかい等)
「こん町が栄るたびに、わしは大きく強くこの金玉袋も大きゅうのうた」
優花とオジーは金長狸と金玉袋を見上げる
「、、、、大きいなり過ぎた!」と金長狸は『ふう~』ため息をつく
ジロッと優花とオジーを見下ろす
「おまんら、ワシ等が来るちょきに木の影エ~から見ちゃろ、、、、」と立ち上がる金長狸は自分の金玉袋を持ち上げ踏み台を一歩踏み出すが、
ドンと重そうに引きずる「ワイの自慢の金玉袋、おおきゅうなり過ぎて歩くのもままならン!」
「親ビン!」太三郎が「叔父貴!」両脇の鎧兜の狸が大粒の涙を流してる。「、、、、うっうっつ」周りの狸達のすすり泣く声が聞こえる
金長狸も空を見上げ瞳を潤ませていた「わいはこん町を愛しておる!」「わい金長んは、こん町を隅々まで行き守り!栄えさせんが!氏神としての誉じゃけん!」
金長狸はゆっくりと神輿の椅子に座ると金玉袋を軽くめくり、オジーと優花に見せる。引きずるせいか赤く擦りむき腫れていた
「こん自慢の金玉袋、いま痛うての~全てを見守んのは難しゅうのうた、、、、」ガクッと項垂れる金長狸
「、、、、可哀想」と優花は言った。オジーはキョトンとしていた。
篝火が風で揺れる
「でだ、これじゃ!」と懐のタブレットをオジーと優花に見せた
相変わらずオジーの変な場違い動画が流れている
「わしは猫又おまんを見てピーン!と来た、おまんの皮でわしの金玉袋包めば歩けると思ったじゃけん!」
「、、、、へっ?」ポカーンとなるオジー
「猫又おまんの皮でわしのふんどしを作るんじゃ」オジーと優花はお互いに顔を見合わして
「ええええええええっ!!!!!!!!!」と叫んだ!
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6 :金玉袋とふんどしとオジー
「これ天啓じゃけ」金長狸は大真面目な顔で言った
「なななんあんなんなんん、、、、」オジーは目の前の大狸が何を言ってるか分からず、半分頭が真っ白に半分慌て言葉にならない。
「ふんどし??それっって、パンツのことだよね?」優花は口がポカーンと開いたまま言った
金長狸は神輿の椅子に座り「まあ、現代風に言うちょパンツやな」と目を上に向けて軽く顎を撫でた
「又猫、おまんの毛並み、皮の伸び、張りは思うとるよりヨカけん!わしの金玉袋を守るんには素晴らしか」
「、、、、、」オジーはアワアワして言葉が出ない
「狸さん、狸さんの事は可哀想だけど、オジーをパンツにするなんて駄目だよ!オジー死んじゃう!」優花はオジーの肩に抱きつき金長狸に言った。
金長狸は半目になり顎に手を当てたまま「皮を剥ぐゆうても、背中の首から尻尾の上までじゃ」「又猫は妖怪じゃけん死にはせんじゃろ、半年後には戻る。暫くは
動けんやろうが」と冷たく言い放つ
「いやいやいや、、無理、無理、無理、無理」オジーは」両手を金長狸に向けながら首を左右に振った
「痛いんは一瞬じゃき、ちぃと我慢せい」と金長狸は煙管を咥えた
「じたばたせんと諦めんしゃい、天啓じゃけん」「ほなけん悪い話ばかりでないで、わいの金玉袋を守るん言うは運がおんしに行くゆうことや!」
篝火が風で揺れ『パキッ、パキッ』と音立てる。金長狸の影が揺れてオジーと優花に伸びた
いつの間にか取り籠んでる狸の群れが近い。逃げられない絶望的な空気が流れてる
「、、、、芝右衛門」金長狸が人差し指を立ててクイッと振った「はっ!」左側の鎧兜の狸がオジーの両手をガシッと掴んで両手を広げた、異常に力が強くてビクともしない
数匹の狸がオジーの両足を左右に引っ張り貼り付け状態になった、そのまま猿轡をオジーに噛ませた「うんぐっつっつ!」
「すまんな、、、」芝右衛門狸は大きな瞳で太い眉毛をキリリとさせポツリと呟く
「オジー!」優花は狸達に捕まれ後ろ手にされた
太三郎狸が刀を抜いて降ろすと、一匹の狸が桶を持って来て柄杓を桶から拾い上げて水を汲み刀の峰にかけた。
「んんんんんんんんんんっつう!」オジーは首を左右に激しく振った
太三郎狸は前に出て「安心しんせい、拙者の腕は超一流やけん逆に動くと危のなる、、、首が飛ぶのは嫌じゃろ?」
「!!!!」オジーは頭から血の気が引くのを覚えた
〖ザッツ〗っと太三郎狸は両足を広いて刀を肩越しに上げ、八相の構えをした。「お覚悟!」
言うと同時に刀を振った!
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「オジー!!!!!」優花が狸達の手を振りほどきオジーの処に飛び込んできた!!
「なんと!」 太三郎狸が焦る! 振り下ろした刀が優花の髪を散らす
【ザッツッッーーーーー!】優花はオジーに抱き着いたまま倒れこみ地面にへばりついた!
オジーの猿ぐつわが勢いで外れる「優花!!!」オジーは抱き着いたままの優花を見上げた
優花の髪を束ねてる組紐がポロッと落ちて、リュックサックの側と肩ひもが切れていた
「、、、大丈夫だよ」優花はオジーの上で頭を上げた「 優花、」安堵の顔をするオジー
太三郎狸は「危のうござる!拙者で無ければ二人とも真っ二つでござった!」と片目を閉じて言った
超絶な刀裁きで優花がオジーに抱き着いた瞬間に太三郎は刀の軌道を変えたのだ
神輿の上から「なんばしよる、娘ご」静かに低い声で金長狸は言った
優花は立ち上がり「オジーは、オジーは私の猫だよ、、、絶対に傷つけさせない!」オジーの上で仁王立ちになり両手を広げた
優花の束ねていた髪が肩まで降りてなびく
金長狸は神輿のへりを掴むと【バキッ】と音がして金属の枠がへこんだ「娘ご、これは定めじゃき人ごときが口を挟むこんでないきに!」立ち上がる金長狸。
金長狸の目は青白く輝き瞳が見えない、代わりに巨体が黒く闇に溶け込み身体の周囲から青白いオーラが噴き出し滲み出る
「猫又を渡さんかい!」ドスの効いた野太い声が地面に響き渡る、金長狸声は空気を振動させる程だ。
「オジーは渡せない!どんなことがあっても渡さない!」優花を見上げると不思議なオーラが優花を包んでいる。
「優花、お前、、、」オジーは驚いた、白金色のオーラが見える
「人の子とは故、わいに逆ろうて無事にはすまんぞ、、、」金長狸は益々黒く濃くなる
じりじりと狸達がオジーと優花に近づく
優花のオーラがオジーにも纏わり、切れたリュックサックを照らす【 ! 】オジーはリュックサックを見ると中のパーカーが激しく輝いてた
「待って!待って!、、、」オジーは優花の股の下から手を挙げた
「なんじゃ!大人しゅう皮を差し出すん覚悟を決めたんか?」金長狸の横顔が怖い 「オジー!」優花が叫ぶ
「違う、違う、、、そうじゃ、そうじゃない!」オジーは首と両手を同時に激しく振った
「金長狸様、要はあなたの金玉袋の傷を癒して護れればいいんでしょう!」とオジーは言った
「そいじゃ、おんしの皮が有れば出来る言うておる」
「俺、、じっ、自分の皮は無理ですが代わりの物でいいならどうです!」「代わり?そんなもん有るんけ!?」金長狸は胡散臭そうに言った
「有ります!有ります!、、、⦅多分⦆、、、」オジーは最後は小声で言った「嘘なら皮を剥いで貰うけん」金長狸は椅子に座り込む「はあ、、、、」と気のない
返事を返す「まあ、ええか出してみい」金長狸のオーラが鎮まる。「ありがとうございます」とオジーは頭を下げる
「オジー大丈夫なの?」心配そうに声を掛ける『いいか、よく聴いて、、、』オジーは小声で優花に話しかける
遠巻きに狸達はオジーと優花を見守り金長狸は神輿の上から眺めながら「あんま時間はないぞい」と耳の穴を小指で掻く。
ユラユラ篝火の光が照らす
「あの~」オジーは神輿の脇の太三郎狸に話しかける「なんぞなもし?」
「俺の背中の皮を切らずに毛だけ切れますでしょうか?」オジーは聞いた「そげな事簡単じゃが親ビンに断らんと出来ん」
「はあ~お願いできます?」オジーは頭を軽く下げた
「親ビン、猫又が毛だけ切れるか言うおりますがいかがしよります?」太三郎狸は神輿の金長狸にきいた
顎を突き出した金長狸は手を上下に振った「ええやろ、半分位残して切れ」
太三郎狸は振り返り「親ビンの許しがでたけん、かまわんぞ」オジーは「ではお願いします」と正座をした
「あの~ホントに皮は切らないで下さいね」恐々、太三郎狸に言う「大丈夫じゃきに!拙者の腕は天下一じゃけん」
「はあ~」と言うとオジーは目をつぶって背筋を伸ばした「オジー、、、」優花は心配そうに両手を組んだ。
太三郎狸は八相の構えをすると「はっ!」と声を発する。【シュッ】ほぼ音もなくオジーの肩から腰の辺りの毛がフワフワとゆっくり落ちた
〖キンッ】太三郎狸は刀を鞘に収める「安心せい」太三郎狸が声をかけた。
オジーはどっと冷や汗が噴き出る気がした。「オジー!」優花が駆け寄る「毛を集めるぞ」オジーと優花が落ちた毛を拾い始めた
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7:金玉袋を包む物:奇跡と着績
オジーと優花は向かい合って作業をしていた
【フアア~】とあくびを上げる金長狸、神輿の椅子の上で鼻毛を引き抜く「そろそろ時間じゃけん」
「出来た!、、、でも大丈夫かな?」優花が顔を上げるて言った「これでダメなら頭を下げて切られる皮を減らしてもらうしかない」
「オジー死んじゃうんじゃない?」と心配する「ハハッ、、、もうなるようにしかないからな」目が泳ぐオジー
オジーは畳んだ大きな布を優花と一緒に持って金長狸に近づく。優花は金長狸を見上げると「すみません、その金玉袋を持ち上げてもらいません?」と言った
「うむ、、」金長狸は両手で金玉袋の端を掴みクイッと持ち上げた。オジーが「失礼します」と頭を下げ、優花とオジーは急いで上がった金玉袋隙間に
赤い布を丁寧に手早く広げる。それは優花の切られたリュックサックからこぼれた赤い『悪魔』逆さに書かれたパーカーの前側を切り伸ばした物だった。
パーカーの上にはオジーの切り取られた毛が敷き詰められている。
二人が金玉袋の下にパーカーを敷き終わると「狸さん大丈夫、置いてみてください」と優花が言った
「うむ、」金長狸は金玉袋をパーカーの上に置くと、僅かながら光の雫がこぼれる様に発光した 「!?」目を開いて驚く金長狸「こいわ、、!」
パーカーの端と袖口を伸ばして結ぼうとオジーがするが長さが足りない
オジーは金長狸に恐る恐る「あの~何か、つなぐ紐の様なものがあればお願いしたいのですけど、、、、」と軽く頭を下げる
金長狸は「太三郎、芝右衛門ふんどしの紐ばもってきんしゃい」呼んだ
「へい!親ビン!」太三郎達はスタスタと足を速めて大きな、しめ縄を持ってきた。「これでいいけ?」太三郎と芝右衛門が頭の上に担いで持ってきた
縄の長さだけで4.5メーターは雄に有る、太さも10センチを超えてる〖えっ!〗と少しビビるオジー
優花が「大きな縄!でもこれじゃ~結びずらいなあ」とこぼす。
すると太三郎狸が「手伝うじょ、親ビン良いけ?」と金長狸に聞いた「せやな、手伝うてやれ」太三郎狸と芝右衛門狸も紐を結ぶのを手伝う
「出来たね!」優花は軽く額の汗をふいた「でも少しちいさいね、伴倉庫みたい」と笑った。パーカーは金長狸の金玉袋の底面の半分を覆う位のサイズしかない。
ぱーかーの端をしめ縄でむすんで金玉袋を腰ひもで繋いでいる
「とりあえず、今やれることはこれぐらいが限界だな」オジーは汗を拭きながら言った
「ええか?」金長狸はオジーと優花を見つめる、固唾をのむ二人。
金長狸は神輿の椅子のひじ掛けに両手をかけグッと力を込めて立ち上がった、そしてゆっくりと一歩前に足を出す。
大きな金玉袋は引きずる処、包んだパーカーが光の雫が発行して接地面から僅かに浮き上がり滑る様に進む
金長狸は「ほおおお!」と感嘆の声をあげた
「親ビン、どんな具合で?」太三郎狸が興味深そうに聞いた「うう~ん!こいは不思議やどないのうてん?」金長狸はオジーを見下ろして聞いた
ホット肩を撫でおろしながら言った「、、、その布には魔除けの色と『悪魔』の文字が逆さにプリントされてますのでタロットカードの‘回復‘の意味があります」
「金長様は氏神様なので、もしかしたら効果があるのかな~と」説明した。金長狸はゆっくりと神輿の椅子に座りなおした「ほう?タロットカードとは?」と尋ねる
「西洋の、西洋の占いですか、日本で言うおみくじの様なもですね」金長狸は少しだけ片方の眉をあげた「伴天連のもんか?」
ちょっとヤバい?気に入らないのか?心臓がバクバク鳴る「でも、でも悪いもんでは、ありません!実際効き目がありましたし!」バタつくオジー
金長狸は‘ニッ!‘と口元を緩ませる「せやな!伴天連のモンでもわる~ないな、そいに猫又、貴様の毛の効果も有るんやろ!」とガハハハッと笑った
オジーはフウ~っと息を大きく吐く、優花が「良かったね!オジー私に感謝しないと」と笑顔で言った
金長狸は大声で「又猫、近うきんしゃい!」と呼んだ
「へっ?」また緊張するオジー「大丈夫じゃき」金長狸は手招きする。オジーはおずおずと神輿の踏み台を上がった
【バンッ!】とオジーの肩を叩く「猫又、おんしやるやんけ!この礼はいずれするき、楽しみにしちょき」と顔を寄せてた
「じゃが一つだけ問題があるかの」と真顔になる。「えっ?」焦るオジー
金長狸は「わしの見立てじゃと、こん布は持って二か月やろ」「必ず二か月後に新しかふんどしを奉納せい、、、さもなくば今度こそ、おんしの皮を剥いでふんどしにするけん」
とドスの効いた声で囁いてオジーの毛を引っ張る。滝汗をかくオジー「おんしの皮で作おうた、ふんどしなら三年は持つきの!」目がクルクル回る
脇で聞いてた優花が「ダメッ!オジーをいじめちゃ!オジーは私の猫だからね!」優花はプンプンして言った
金長狸は又ガハハハッ!と空を見上げて大笑いをして「大丈夫きに、約束を違えねば大丈夫きに」と又、大笑いした
「娘ご、おんし中々の豪気じゃの!嫌いじゃなかよ!」と言い金長狸は優花を手招きした。
優花が近づくと金長狸は懐から白い風呂敷に包んだ箱をつまみ手渡した「なにこれ!?」と声を上げると金長狸は「御守りじゃ、大事にせい」と言った
「ふーん?有難う狸さん」箱は優花が抱える位の大きさだった
芝右衛門狸が「叔父貴、そろそろ時間じゃきに」「うむ、せやな、、、」金長狸は立ち上がると「おまいら今宵は‘祝い‘じゃけん!帰って酒ば煽るばい!」と手を上げた
『ワア――――――――!』と狸達が沸き立つ。 ぴょんぴょんと太三郎狸が優花に近づいて「娘ご、おんし人にしとくには惜しいのう、狸なら嫁にしたいじょ」頭の後ろに手を組んで言った
優花は「狸さん面白い!」と返した
祭囃子の中で神輿を担ぎあげる狸達、来た方と逆に向き直して「ほな!約束はまもりんしゃい!」と金長狸は片手を挙げてヒョイヒョイと振った
「出来たふんどしは何処に収めれば」とオジー言うと金長狸は上の方を指して「境内に奉納せい」と背中越しに答えた
【ドンシャン!ドンシャン~ピーシャンヤララ~】笛や太鼓吹き鳴らす。狸達の百鬼夜行が始まる
白い靄が辺りを包むと祭囃子の音が小さくなっていく、先程の喧騒が嘘のように静かになった
--------------------------------------------------------------------------------------------------
8:祭りのあと:狸のお話の終幕 :優花と猫のオジー
濃い靄が晴れるとそこは神社の石段の踊り場だった
「なんか、すごかったね!」優花はワクワクしながら言った。オジーはへたり込み「死ぬ処だった、、、」と呟く
「なんか狸さんにプロポーズされたの私が初めてかな!?」とオジーに聞くと「、、、似合いなんじゃない、狸顔だし」と座り込んだまま答えた
「ひどっ!オジーは私に感謝しないとダメなんだからね!、、、やっつぱり躾が足りないのかな?」と眉をあげ腕を組んだ
「そもそも優花がネットに動画を載せなければこんなことに、、、まあ、助かったからいいか」オジーは立ち上がると
優花の頭に手を置いて「ありがとう、助かった」と軽く撫でた。優花はニンマリ笑って「もっと褒めて」と言う「、、、調子にのんな」とオジーは呟く
オジーが服を着ている横で優花は金長狸から貰った、風呂敷袋の包みを地面に置いてしゃがみ込んでいた。
「なに入ってるのかな?」優花は包みを見つめながら呟く、オジーは「変なもん入ってたら怖いから開けんなっ!て」
言ってるそばから袋をほどく優花「って!」目を大きく見開くオジー
風呂敷の中には桐の木箱があり蓋を『パカッ』と開ける優花 「あっつ!」優花が叫ぶ、オジーが箱の中を覗き込む
「狸の置物だっ!」信楽焼の狸の置物が入っていた、優花が両手で持ち上げる。背中に金長と掘ってある
まじまじと信楽焼の狸を見つめると優花は「金玉袋大きいね!」と言って笑った「もう、金玉袋いいよ」ウンザリしながらオジーは言い聞かせる様に言った
「帰るぞ」オジーが背中を丸めながら歩くと優花が背中に飛びついた「わっ!」ビックリするオジー
優花は「オジー寒いでしょ?背中の毛いっぱい切られたから」「私が温めてあげるよ」とおんぶ状態になりながら耳元で囁いた
「寒くない!もう、子供じゃないんだから歩け!」とオジーは言うが優花は離れない
「感謝が足りないな!オジーは私が居なければ今頃、狸さんの金玉袋のパンツになっているんだからね!」
首に両手を回して、ぎゅううーー!と締めた「、、、苦しい!苦しい」「分かったから首をしめるな」
「有難く想え!」と偉そうに言う「、、、へいへい」オジーは優花をおんぶしながら階段を降りる。
優花が手前に持ってる風呂敷包みの箱がユラユラ揺れてる
「オジーお腹減った、ハンバーガー食べたい!」「は?まだ正月二日だぞ、まだ家にお餅がいっぱいある」
「いいの、食べたいの!ついでにチキンも食べる!」
「やっつぱり、子供じゃないか!?」
「何をおお!!」小さくなる二人
遠くで祭囃子の音がする 透き通る青空の下 大きな森のある神社の境内から広がる街並みが見える
⦅おしまひ⦆
:初詣と大狸の杜のお話 :優花と猫のオジー:
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