奇跡に近い今日の話

留菜マナ

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第一章 不思議な願い箱

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放課後、体育館倉庫の近くを通ったのはほんの偶然だった。
その日の授業は午前中までで、わたしは日直で帰りが遅くなっていたから、早く家に帰ろうと急いでいたんだ。
だけど……。

ズシン!!

突然、地面に響くような重い音が聞こえた。

「何の音だろう?」

キョロキョロと音の出どころを探っていると、体育館倉庫が目に入った。
あの場所から音がしたみたい。

「誰かいるのかな?」

わたしは半分開いたままだった扉から中をのぞく。
まず、目に入ったのは、明かりを入れるための小さな窓。
差し込む陽ざしに照らされて、ほこりがうっすらと舞っていた。
体育館倉庫には、授業や運動会で使うものがひととおり詰めこまれている。
でも、ただ一つ――見覚えのないものがあった。
大きくて古そうな箱がどんーっと置かれていたのだ。

「何だろう? あれ?」

わたしは腕を伸ばして、おそるおそる箱に触れてみた瞬間。
ドキンと心臓が跳ねた。
箱の表面には、でかでかと『パンドラの箱』という文字が踊っていたからだ。

「これ、パンドラの箱っていうんだ?」

パンドラの箱?
それって何だろう?
わたしが不思議に思っていると、あるものを見つける。
パンドラの箱って書かれているその下には、なんと箱の解説文が書かれていたんだ。

『この箱には希望の光が入っています。その希望の光は、あなたのどんな望みでも叶えてくれるでしょう』

意表をつくような解説文に、心臓が激しく音を立てる。
この箱を開けると、どんな望みでも叶う!?
それってつまり……。
恋のお願いも叶うというわけで……!
どうしようかと答えを探してみると、それらはいとも簡単に生み出されてきた。

(桜ノ宮くんともっと仲良くなりたい!!)

その一択だった。
記憶の中にいる、初めて出会った桜ノ宮くんの姿を思い起こす。
そう――わたしが桜ノ宮くんと出会ったのは、五年生になったばかりのクラス替えの発表の日。

「今年は何組かな?」

わたしは五年生のクラス表をじっと見つめる。
クラス替えは毎年、ドキドキしてしまう。
わたしの学年――五年生は全部で四クラスだ。
でも、一年生から六年生までのクラス表が張り出されているため、昇降口の前は賑やかさに拍車がかかっていた。
人がたくさんいるというだけで圧倒されてしまう。

「えっと……わわっ!」

自分の名前を探していると、後ろから押されて思わず倒れそうになってしまった。
でも……。

「おい、大丈夫か」

その時、視界いっぱいに飛び込んできたのは、思わず見とれるほど整った顔。
さらっとした髪に、優しげな瞳。
まるで白馬の王子様みたいで。
その瞬間、わたしはそれまで経験したことがないような胸の高鳴りを感じたんだ。
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