奇跡に近い今日の話

留菜マナ

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第四章 これからあなたたちと

4-6

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時間だけじゃない。
場所も、思い出も。
問われれば思い出せるほどに。
でも、今のわたしには……そばにいてくれる人がいる。

『ねーね』

律に呼ばれたような気がした。
でも、もう、わたしは振り返らない。
律のいない明日を生きるために――。
泣かない、泣くもんか。

「ごめんね。律、こんなお姉ちゃんで……」

昨日を思うだけでは気づけなかったんだ。
今日を繰り返すことしかしなかったからダメだった……。
明日を願う、それだけで未来を歩いていける。

「花乃!」

悠真くんがぐいっとわたしの腕を引っ張った。
まるで悪夢から救い上げるように。
その瞬間、暗闇の中に差し込んできた一筋の光みたいに胸の高鳴りを感じられたんだ。

「……良かった。気がついたんだな」
「きゅい……!」

気がつくと、わたしの目の前には安堵する悠真くんとシューちゃんがいた。
どうやら、先程まで悪夢さんに『悪夢』を見せられていたみたい。
わたしは身体を起こすと、パンドラの箱を手に取った。
悪夢さんは想定外の出来事を目の当たりにしたように呆然としている。

「悪夢さん、これで浄化カタルシス!!」

わたしはその隙を逃さず、パンドラの箱を構えた。
悪夢さんはなす術もなく、パンドラの箱にずばーっと吸い込まれていく。
パンドラの箱の中におさまると、悠真くんが持っているゲーム機の画面に『浄化完了』の青い文字が踊った。

「これでニ体目、浄化完了だな!」
「うん!」

喜びを分かち合うように、悠真くんは小さな手を上げる。
バチンとハイタッチすると、心が温かくなるような気がした。

「にゃっ……!」

その時、パンドラの箱からぴょこっと何かが跳び出す。
それは先程の悪夢さん。
でも、負の運気を浄化したからなのか。
色は白くて、ふわふわモコモコしている。
思わず身構えるけど、悪夢さんは何故か、わたしにすり寄ってきた。

「あれ? 悪夢さんも、白くなっちゃった?」
「猫みたいな鳴き声だな」

悠真くんの言うとおり、悪夢さんは猫みたいにかわいい鳴き声を上げる。
先程、悪夢を見せてきた時とは違い、友好的な態度だった。

「きゅい……きゅい……!」
「にゃんにゃん……!」

シューちゃんと悪夢さんは、すっかり仲良くなったみたい。
すりすりとわたしたちになついてくる。
愛らしい仕草に、わたしの声ははね上がった。

「かっわ…………!」
「きゅい……!」
「にゃん……!」

その喜びに反応して、シューちゃんと悪夢さんはぴょんっと大きく跳び跳ねる。
わたしはその瞬間、たとえようのないほどの幸せで満たされていた。
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