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第五章 夢を追うわたしたちと光の天使
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「まだ、見つかっていないみたいだよ」
「そうなんだ。心配ー」
思わぬ会話に、心臓が早鐘を打つ。
ええっ、どういうこと?
みんな、悠真くんのことを忘れていたんじゃなかったの。
めちゃくちゃ動揺していると。
「桜ノ宮くん、もしかしたら誘拐されたかもしれないよ」
「あり得るー」
女子数人が声を上げるのを聞いてドキリとする。
今の悠真くんは、わたしの弟だ。
つまり、わたしの家にいる。
同居しているようなものだ。
「まだ、手がかりすらも見つかっていないらしいよ」
「何だか、神隠しみたいだね」
噂が妙な流れになっている。
どうなっているんだろう。
ぎまんさんが、悠真くんをわたしの弟に見せかけていたんじゃなかったの?
わたしの困惑をよそに、クラスのみんなは心配そうに悠真くんの話題を続けていた。
*
結局、何も分からないまま、帰りの会が終わる。
わたしはランドセルを背負い、大急ぎで教室を出る。
そして、転がるように学校を出た。
汗が出るほど、必死に走って。
それでも身体は不思議なほど、冷たいままだった。
「ただいま! お母さん、悠真くんは!」
玄関のドアを開けて、大慌てで家に飛び込む。
「花乃、お帰りなさい。そんなに慌ててどうしたの?」
お母さんは不思議そうに首を傾げる。
わたしは切羽詰まったように言った。
「ねえ、お母さん、悠真くんはどこ? どこにいるの?」
「悠真なら、リビングにいるわよ」
お母さんの視線を追うと、リビングからとてとてと足音が聞こえた。
「花乃、どうかしたのか?」
悠真くんは小さな身体を左右に揺らしながら、わたしの前に来た。
水色のスモックに、黄色い通園帽子。
四つ葉のクローバーもようの幼稚園バックを肩からななめかけにしている。
幼稚園から帰ったばかりみたい。
良かった。
悠真くんはまだ、わたしの弟のままだった。
わたしはほっと胸を撫で下ろす。
「あのね、悠真くん、大変なの。学校のみんなが、悠真くんが行方不明になっているって話していたの」
心臓がどくどくと脈打つのを感じながら言う。
「マジかよ……」
思わぬ言葉に、悠真くんはぽかんと口を開けた。
「本来のオレ自身は行方不明になっている状態か。でも、元の姿には戻っていないな」
悠真くんは自分の小さな手のひらを見つめる。
「どういうことなのかな……」
頭の中で何とか整理して理解しようとしても、感情が追いつかない。
この不可解な状況も、ぎまんさんの力によるものなのかな。
『ぎまんは人をあざむいたり、だましたりすることだぜ。偽装――他のものであるかのように見せかけることを指している場合もあるけどな』
ふと、悠真くんが告げた言葉が蘇る。
「そうなんだ。心配ー」
思わぬ会話に、心臓が早鐘を打つ。
ええっ、どういうこと?
みんな、悠真くんのことを忘れていたんじゃなかったの。
めちゃくちゃ動揺していると。
「桜ノ宮くん、もしかしたら誘拐されたかもしれないよ」
「あり得るー」
女子数人が声を上げるのを聞いてドキリとする。
今の悠真くんは、わたしの弟だ。
つまり、わたしの家にいる。
同居しているようなものだ。
「まだ、手がかりすらも見つかっていないらしいよ」
「何だか、神隠しみたいだね」
噂が妙な流れになっている。
どうなっているんだろう。
ぎまんさんが、悠真くんをわたしの弟に見せかけていたんじゃなかったの?
わたしの困惑をよそに、クラスのみんなは心配そうに悠真くんの話題を続けていた。
*
結局、何も分からないまま、帰りの会が終わる。
わたしはランドセルを背負い、大急ぎで教室を出る。
そして、転がるように学校を出た。
汗が出るほど、必死に走って。
それでも身体は不思議なほど、冷たいままだった。
「ただいま! お母さん、悠真くんは!」
玄関のドアを開けて、大慌てで家に飛び込む。
「花乃、お帰りなさい。そんなに慌ててどうしたの?」
お母さんは不思議そうに首を傾げる。
わたしは切羽詰まったように言った。
「ねえ、お母さん、悠真くんはどこ? どこにいるの?」
「悠真なら、リビングにいるわよ」
お母さんの視線を追うと、リビングからとてとてと足音が聞こえた。
「花乃、どうかしたのか?」
悠真くんは小さな身体を左右に揺らしながら、わたしの前に来た。
水色のスモックに、黄色い通園帽子。
四つ葉のクローバーもようの幼稚園バックを肩からななめかけにしている。
幼稚園から帰ったばかりみたい。
良かった。
悠真くんはまだ、わたしの弟のままだった。
わたしはほっと胸を撫で下ろす。
「あのね、悠真くん、大変なの。学校のみんなが、悠真くんが行方不明になっているって話していたの」
心臓がどくどくと脈打つのを感じながら言う。
「マジかよ……」
思わぬ言葉に、悠真くんはぽかんと口を開けた。
「本来のオレ自身は行方不明になっている状態か。でも、元の姿には戻っていないな」
悠真くんは自分の小さな手のひらを見つめる。
「どういうことなのかな……」
頭の中で何とか整理して理解しようとしても、感情が追いつかない。
この不可解な状況も、ぎまんさんの力によるものなのかな。
『ぎまんは人をあざむいたり、だましたりすることだぜ。偽装――他のものであるかのように見せかけることを指している場合もあるけどな』
ふと、悠真くんが告げた言葉が蘇る。
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