その日、猫は希望と願いを天秤にかける

留菜マナ

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第二章 あの海の向こうへ

3-11

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すると、神様降臨!
まばゆいほどの光が、海翔くんをキラキラと包み込んだのにゃ。

海翔くんの周囲を踊り狂う光の粒子。
やがて、その光が勢いよく、海翔くんに伝播していく。
にゃにゃー。
不可思議な力の到来が過ぎ去った後、海翔くんの周りで漂っていた光は霧散していたにゃ。

「これで、葛城颯太は生き返ったにゃ」
「にゃんと!?」

にゃん吉先輩の突拍子のない発言に、我輩、喜色浮かぶ声で身を乗り出したにゃ。
我輩の感嘆の声に反応して、海翔くんと六花ちゃんは顔を見合わせたにゃ。

「海翔、どう?」
「……うーん。何だか、不思議な感じだな」

瞳を重ね合わせたまま、二人は頬に朱を上らせたにゃ。
次いで、海翔くんは唇に照れくさいような笑みを浮かべる。

「でも、確かに颯太の存在を感じる」
「……そうなんだ」

六花ちゃんの笑顔に、海翔くんは穏やかな笑みを返す。
そんな温かい光景を見て、我輩、絶え間なく笑んでしまいそうになる口元を抑えていたにゃ。

良かったにゃ~。
二人の願いが叶ったにゃ。
そう思うだけで心高まる。
喜びを噛みしめていると、空全体が燃えるような茜色に染まり、世界が目覚め始める。
朝日。
ぱちくり瞬いている間に、我輩の視界を占めるのは紺碧の空の色になる。
雨に洗われた青よりももっとずっと青く澄んだ色に、我輩は瞳を丸くしたにゃ。

「六花、帰ろう」
「……うん」

声を震わせる六花ちゃんの手を、海翔くんはそっと握りしめる。
不思議な異界列車『にゃんにゃん号』。
その旅先で見つけた、虹の色を湛える花々をきっと忘れぬように、とその瞳に映すにゃ。
……良かったにゃ。
でも、やり遂げた達成感があるのに、すべてが終わったという実感は……まだ、湧いてこないにゃ。
その理由は……。

「にゃん太郎、行くにゃ」
「にゃ?」

しみじみとしていた我輩に、声をかけてきたのはにゃん吉先輩だったにゃ。

「願いをかなえたからと言って、そこで終わりじゃないにゃ。我ら、神の使いの役目はなんにゃ?」

ぎくり、と身を固くした瞬間に、我輩、はっと気がついたにゃ。

「人間たちをひそかに観察して、人間の困り事やこの世を彷徨っている人間の魂の未練を、神様と一緒に解決していくことにゃ。そして、その人間たちを幸せいっぱいにすることにゃ」
「そのとおりにゃ」

どうだ、とばかり、我輩が笑ってみせれば、にゃん吉先輩は唇をむっと引き結んだにゃ。

「二人の願いはかなえた。だけど、それで終わりじゃないにゃ。お主も、平中ハルカの件で身に染みているはずにゃ」
「にゃ……」

大好きな人の名前を告げられて、我輩、思わず顔を赤らめる。
ハルカちゃんの花のようなあの笑みを思い出すと、胸が弾んだにゃ。

「それって……ハルカちゃんの時みたいに、三人を幸せいっぱいにしたらいいのかにゃ?」
「そのとおりにゃ」

我輩の答えに、にゃん吉先輩は満足そうにしていたにゃ。

「それが、神の使いの猫の役目にゃ」

にゃん吉先輩は、どこかにいるらしい他の神の使いたちの気配に呼びかける。

「これからも我ら、神の使いは、人間たちに幸せを届けるにゃ!」
「にゃー! 我輩、がんばるにゃ!」

にゃん吉先輩の宣言に、我輩、勇気をもらって一歩踏み出したにゃ。

新たな始まり。
幸せの本をめくれば、猫が踊る。
さらにめくれば、笑顔が満ちる。
今は小さな幸せ……やがてそれも、大きな幸せに変わっていくはずにゃ。



それは作り話みたいな恋だったにゃ。
君に好きと言ったら、世界はどう変わるのだろう――。
中学一年の冬。
長居した夏もようやく鳴りを潜め、聞こえ始めた冬の足音。

「六花」

ふと懐かしい声で名前を呼ばれて、六花ちゃんは息を呑んだにゃ。
六花ちゃんの視線は、無意識のうちに声の主を探す。

「あ……」

すぐに声の主を見つけて、六花ちゃんの心臓はどくんと大きく脈を打ったみたいにゃ。
もう会えないはずの男の子が、夕日に照らされてそこにいたにゃ。
次第に、胸が高鳴る。
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