「OT転生!異世界でも作業療法は無敵です」

OT.deguchi

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第66話:“それでもそばにいたい” 火花と静けさと、選べる距離

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昼休み、教室の隅。
ユウリは、机の上にビー玉を並べていた。

カリムは少し離れたところに立っていた。

「……今日も、一緒に並べていい?」

ユウリは顔を上げて、迷ったように目を伏せた。

「……今日は、ちょっと、近いと頭が痛い……」

カリムは、わずかに指先を揺らした。
そこに、ほのかに火花が浮かぶ。

「……そっか。……うん、わかった」

そう答えて、2歩下がった。

でも、そのまま背を向けずに、ビー玉を見つめていた。

***

放課後、支援スペース。

ノアは2人に向き合って、ゆっくりと話を切り出した。

「今日は、カリムくんがユウリくんの“選んだ距離”を尊重してくれたね。
 すごく大事なことだよ」

カリムは少し俯いた。

「でも……やっぱり、ちょっと寂しかった」

「うん。そうだよね。
 “離れなきゃいけない”ってなると、悲しくなるよね」

ユウリも、うつむきながらぽつりと口を開いた。

「……僕も、離れたいわけじゃなかった。
 でも、近いと、頭の奥がガンガンするから……」

ノアはうなずき、ビー玉を一つ手に取った。

「じゃあ、“近づかない”じゃなくて、
 “安心して一緒にいられる距離”を、一緒に探してみない?」

ユウリとカリムは、顔を上げた。

***

次の日の昼休み。

ノアは支援室に、小さな紐と鈴を用意していた。

「この鈴は、魔力の揺れをほんの少し知らせてくれる。
 カリムくんの火花が大きくなりすぎる前に、音で教えてくれる道具だよ」

カリムは、そっとその紐を自分の手首に巻いた。

ユウリには、ビー玉と同じくらいの大きさの遮断石が渡された。

「これ、ポケットに入れておくと、
 少しだけ魔力ノイズがやわらぐ。
 でも、完全に閉じちゃうと逆に疲れることもあるから、
 “今はいる”と思ったときだけ持っててね」

2人は顔を見合わせて、同時にうなずいた。

***

午後。
ふたりは、教室の窓際でビー玉を並べはじめた。

カリムは、少し離れた場所に座って、
ユウリに声をかけた。

「ここくらいなら、大丈夫?」

ユウリは手を止め、深呼吸して、考える。

「……うん。今は、大丈夫」

ビー玉は、青から緑、黄色へと並んでいく。
カリムの指先から、小さな火花が一瞬だけ浮かんだ。

そのとき、鈴がやさしく鳴った。

カリムは、すっと手を止めた。

「……ごめん、今ちょっと火が強かった」

ユウリは、遮断石を軽く握りしめて、にこっと笑った。

「ううん。
 ちゃんと知らせてくれたから、こっちも安心できた」

2人は、それ以上多くは語らなかった。
でも、その間にあったのは、**“避ける”でも“我慢する”でもない、
“お互いに選べる距離”**だった。

***

放課後、ミーティング。

ノアは、その日の支援記録を書きながらつぶやいた。

> 【ユウリ×カリム:相互調整支援】
・使用道具:遮断石(ユウリ)、魔力感知鈴(カリム)
・行動:自発的な距離調整・関係維持
・会話:非責め合い、状況説明と確認あり

所感:関わり方の選択肢が“0か100か”ではなく、
“間にある調整”へと進化した。

人と人は、“傷つけないために離れる”のではなく、
“安心して一緒にいるために工夫する”ことができる。



ノアは最後に、こう書き足した。

> 「それでもそばにいたい。
その気持ちを選べることが、
支援のいちばん大事なところなのかもしれない。」



ビー玉の並んだ机の上。
火花がひとつ、やさしく弾けて消えた。

その隣で、ユウリは遮断石を手のひらでそっと転がしながら、
静かに笑っていた。
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