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第5話 1533年 3歳 猿千代、初陣だぞ
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祖父・長尾為景が、国中の内乱鎮圧のため遠征することになった。
豪族・野島(弟)が反乱。
近隣の野島(兄)とは
「反乱には加担しない」
という証文を交わしていた。
味方総数四千。
三千が先発。
祖父は千人を率いて後詰め――
春日山城には千人の留守隊。
その日、俺は守役・安田の用事で
春日山城に来ていた。
――その時だった。
野島(兄)が証文を破り、
春日山城を出発して一時間の森に伏兵を置いた。
祖父の隊は三割を失い、
春日山城へ退却。
敵二千。
味方残り千七百。
時刻は夕刻。
正門の外では
鐘、ほら貝、鬨の声。
尖らせた丸太で正門を叩き、
破壊を試みている。
俺は天守から正門を見下ろし――
明らかにおかしい点を見つけた。
俺は安田に告げる。
「お祖父様に話したい」
安田が珍しく困った顔をする。
安田
「叱られるの私なんですけど……」
俺
「大丈夫だ。行くぞ、安田」
<猿千代の進言>
作戦会議室。
優しい顔をしていた武将たちが、
今は全員――殺気に満ちている。
特に祖父の為景が凄い。
俺
「お祖父様、聞いて下さい!」
――二回言っても無視。
安田が深呼吸し、叫ぶ。
安田
「長尾為景様!
この安田が命をかけます。
若様の話をお聞き下さい!」
長尾為景
「何じゃ猿千代。
ここは子供の来る所ではない。
さっさと出て行け」
安田が土下座する。
安田
「少しだけで良いのです。
若様の話をお聞き下さい」
長尾為景
「猿千代、良い守役を持ったな。
安田に免じて聞いてやる。申してみよ」
俺
「野島軍は、
お祖父様を逃がせば、
明日には援軍が来て挟撃される危険があります。
それなのに――
遮二無二に攻めて来ない。
その証拠に、
梯子が見えるのに敵は使っていません」
他の武将
「野島の馬鹿は弟のための時間稼ぎだ。
挟撃されたら和議をするつもりだろう」
俺
「それでは和議で野島が不利になります。
自ら不利になる作戦を立てるのはおかしいです」
長尾為景
「一理ある。
確かに野島の攻めは甘い。
正門を開いて撃って出る作戦を立てていた所だ」
俺
「敵の狙いは夜襲です。
裏門に手引きする者がいます。
誰か、
急に金遣いが派手になった者はいませんか?」
武将
「……そういえば。
裏門の門番の嫁が、
最近やけに自慢していたらしい」
俺
「その男を洗って下さい。
そして裏門前の土を掘り、罠を作って下さい。
夜襲は士気を上げるため、
敵の大将が先陣を切る可能性が高い。
弓矢隊を用意して下さい」
(前世で読んだ軍記と、
自衛隊で習った夜襲教範が一致した)
長尾為景
「……恐らく猿千代の言は正しかろう」
<裏門の夜>
真夜中。
敵大将・野島。
毒虫の如く嫌われる男。
手柄はすべて自分のものだと信じて疑わない。
お膳立てをしているのは中島。
能力はあるが、子供ほどの背丈。
どこにも雇われず、仕方なく野島に従っている。
野島
「いいか、俺のおかげだぞ。
感謝しろよ、お前ら」
中島
「野島様のおっしゃる通りです。
僕ら何も出来ません」
(馬鹿だろ。
裏門当番と話をつけたのも、
作戦を提案したのも俺だ)
中島が指笛を鳴らす。
裏門が開いた。
野島
「よし、俺に続けー!」
中島
(早くこいつ死ねばいいのに)
――次の瞬間。
野島の顔、胴体に
弓矢が次々と突き立つ。
中島
(やったー! 糞虫が死んだぞ!)
中島は野島の死体を盾にする。
中島
「降伏する!
みんな! 糞虫は死んだぞ!
糞虫のために死ぬな!
降伏しろー!」
白旗が振られる。
野島の兵士たちが歓喜する。
「やったーーー!
喜んで降伏するぞ!」
皆が野島の死体を蹴り、
唾を吐きかけながら去っていく。
長尾家の兵士が唖然としていた。
――何をすれば、
ここまで嫌われるのか。
<戦の終わり>
長尾為景の前に出された中島。
中島
「野島弟を刺殺して参ります。
その後、野島一族を縛り首にして下さい。
そして――
長尾為景様のもとで働かせて下さい」
長尾為景
「野島一族と何があった?」
中島は、
辱めと虐げの歴史を語る。
長尾為景は涙を浮かべた。
長尾為景
「中島。
儂はお主の忠誠を疑わん。
存分に恨みを果たして参れ」
二日後。
野島一族は縛られ、首となった。
中島に平和が訪れる。
中島
「俺……
今まで本当によく耐えれたよな。
誰も褒めてくれないけど、
俺、やったよ」
部下
「中島さんは、
今までよく我慢出来ました。
俺なら無理でした」
中島
「これから長尾家で頑張ろうぜ!」
祖父・為景が俺を見る。
長尾為景
「……よく見抜いたな、猿千代。
今回勝てたのは、
猿千代と中島のおかげだ。
猿千代。
部下や領民は大事にしろよ。
野島の領地では、
領民が祭りをしている。
恐怖で縛ると、
こうなるのだ」
俺
「わかりました。
野島にはなりません。
絶対に!」
春日山城への帰路。
俺
「安田の土下座と、
春日山城の忘れ物のおかげで
手柄を立てられた。ありがとう。
……何を取りに戻ったんだ?」
安田
「……若様の団子でございます」
俺
「団子で戦に巻き込まれる大人がいるかーー!!」
※雷蔵、風馬、水斗という家来が出来た。
後日、順次詳しく語ろう。
豪族・野島(弟)が反乱。
近隣の野島(兄)とは
「反乱には加担しない」
という証文を交わしていた。
味方総数四千。
三千が先発。
祖父は千人を率いて後詰め――
春日山城には千人の留守隊。
その日、俺は守役・安田の用事で
春日山城に来ていた。
――その時だった。
野島(兄)が証文を破り、
春日山城を出発して一時間の森に伏兵を置いた。
祖父の隊は三割を失い、
春日山城へ退却。
敵二千。
味方残り千七百。
時刻は夕刻。
正門の外では
鐘、ほら貝、鬨の声。
尖らせた丸太で正門を叩き、
破壊を試みている。
俺は天守から正門を見下ろし――
明らかにおかしい点を見つけた。
俺は安田に告げる。
「お祖父様に話したい」
安田が珍しく困った顔をする。
安田
「叱られるの私なんですけど……」
俺
「大丈夫だ。行くぞ、安田」
<猿千代の進言>
作戦会議室。
優しい顔をしていた武将たちが、
今は全員――殺気に満ちている。
特に祖父の為景が凄い。
俺
「お祖父様、聞いて下さい!」
――二回言っても無視。
安田が深呼吸し、叫ぶ。
安田
「長尾為景様!
この安田が命をかけます。
若様の話をお聞き下さい!」
長尾為景
「何じゃ猿千代。
ここは子供の来る所ではない。
さっさと出て行け」
安田が土下座する。
安田
「少しだけで良いのです。
若様の話をお聞き下さい」
長尾為景
「猿千代、良い守役を持ったな。
安田に免じて聞いてやる。申してみよ」
俺
「野島軍は、
お祖父様を逃がせば、
明日には援軍が来て挟撃される危険があります。
それなのに――
遮二無二に攻めて来ない。
その証拠に、
梯子が見えるのに敵は使っていません」
他の武将
「野島の馬鹿は弟のための時間稼ぎだ。
挟撃されたら和議をするつもりだろう」
俺
「それでは和議で野島が不利になります。
自ら不利になる作戦を立てるのはおかしいです」
長尾為景
「一理ある。
確かに野島の攻めは甘い。
正門を開いて撃って出る作戦を立てていた所だ」
俺
「敵の狙いは夜襲です。
裏門に手引きする者がいます。
誰か、
急に金遣いが派手になった者はいませんか?」
武将
「……そういえば。
裏門の門番の嫁が、
最近やけに自慢していたらしい」
俺
「その男を洗って下さい。
そして裏門前の土を掘り、罠を作って下さい。
夜襲は士気を上げるため、
敵の大将が先陣を切る可能性が高い。
弓矢隊を用意して下さい」
(前世で読んだ軍記と、
自衛隊で習った夜襲教範が一致した)
長尾為景
「……恐らく猿千代の言は正しかろう」
<裏門の夜>
真夜中。
敵大将・野島。
毒虫の如く嫌われる男。
手柄はすべて自分のものだと信じて疑わない。
お膳立てをしているのは中島。
能力はあるが、子供ほどの背丈。
どこにも雇われず、仕方なく野島に従っている。
野島
「いいか、俺のおかげだぞ。
感謝しろよ、お前ら」
中島
「野島様のおっしゃる通りです。
僕ら何も出来ません」
(馬鹿だろ。
裏門当番と話をつけたのも、
作戦を提案したのも俺だ)
中島が指笛を鳴らす。
裏門が開いた。
野島
「よし、俺に続けー!」
中島
(早くこいつ死ねばいいのに)
――次の瞬間。
野島の顔、胴体に
弓矢が次々と突き立つ。
中島
(やったー! 糞虫が死んだぞ!)
中島は野島の死体を盾にする。
中島
「降伏する!
みんな! 糞虫は死んだぞ!
糞虫のために死ぬな!
降伏しろー!」
白旗が振られる。
野島の兵士たちが歓喜する。
「やったーーー!
喜んで降伏するぞ!」
皆が野島の死体を蹴り、
唾を吐きかけながら去っていく。
長尾家の兵士が唖然としていた。
――何をすれば、
ここまで嫌われるのか。
<戦の終わり>
長尾為景の前に出された中島。
中島
「野島弟を刺殺して参ります。
その後、野島一族を縛り首にして下さい。
そして――
長尾為景様のもとで働かせて下さい」
長尾為景
「野島一族と何があった?」
中島は、
辱めと虐げの歴史を語る。
長尾為景は涙を浮かべた。
長尾為景
「中島。
儂はお主の忠誠を疑わん。
存分に恨みを果たして参れ」
二日後。
野島一族は縛られ、首となった。
中島に平和が訪れる。
中島
「俺……
今まで本当によく耐えれたよな。
誰も褒めてくれないけど、
俺、やったよ」
部下
「中島さんは、
今までよく我慢出来ました。
俺なら無理でした」
中島
「これから長尾家で頑張ろうぜ!」
祖父・為景が俺を見る。
長尾為景
「……よく見抜いたな、猿千代。
今回勝てたのは、
猿千代と中島のおかげだ。
猿千代。
部下や領民は大事にしろよ。
野島の領地では、
領民が祭りをしている。
恐怖で縛ると、
こうなるのだ」
俺
「わかりました。
野島にはなりません。
絶対に!」
春日山城への帰路。
俺
「安田の土下座と、
春日山城の忘れ物のおかげで
手柄を立てられた。ありがとう。
……何を取りに戻ったんだ?」
安田
「……若様の団子でございます」
俺
「団子で戦に巻き込まれる大人がいるかーー!!」
※雷蔵、風馬、水斗という家来が出来た。
後日、順次詳しく語ろう。
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