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第60話 1536年 6歳 蝦夷地に着いたぞ
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松前港に着いた。
今度の港は、キチンとしている。
十三湊とはえらい違いだ。
(……なるほど)
領主は蠣崎氏。
後に松前藩を開く家だ。
現在は安東氏の代官という立場。
元の名は武田信広。
アイヌの反乱を鎮圧し、
血縁もない蠣崎氏の家督を継いだ男らしい。
かなり卑怯な手段を使った、という話も聞く。
もっとも――
1536年時点では、蠣崎氏は幕府に正式に認められてはいない。
甘粕、直江を連れて挨拶へ向かう。
蠣崎氏は、
こちらに舐められまいと居丈高な態度で出迎えた。
こちらは礼式に則り、きちんと挨拶する。
だが――
返礼がない。
(……礼儀作法を知らんのか)
こんな男に、
蝦夷地を任せてはいけない。
――ならば。
さぁ、宣戦布告だ。
俺
「長尾家ではこの度、西洋帆船を開発しました。
それで蝦夷地の商品を仕入れ、日本中に販売したいと考えています。
つきましては、貴殿にご協力を願えないか。
例えば――
昆布一貫目分だと、いくらでお譲り頂けますか」
蠣崎氏
「十貫ですね」
……堺での販売価格と変わらない。
俺
「それは堺での販売価格と同じです。
つまり、
貴殿は我々に協力するつもりはない。
――長尾家を敵に回しても構わない、
そういう理解でよろしいですな?」
蠣崎氏
「敵にするとかしないとかではなく、
我々の規則に従って頂けるなら、五貫でお譲りします。
どうですかな?」
俺
「……考えておきます」
(五貫でも高い)
俺
「半年ほど前、
九島という兄弟がこちらに伺ったと思いますが、
ご存じありませんか」
蠣崎氏
「一週間ほどは見ましたが、
それ以降は知りませんな」
それだけ言って、会話は終わった。
館を出る。
俺
「九島よ。
兄弟たちは、
蠣崎氏の様子を見て、別の港へ行った可能性が高い。
俺たちのように挨拶に来て、
あの対応をされたら――
他へ行くのは自然だ」
二郎には、
蝦夷地で使える港の地図を渡してある。
蠣崎氏の勢力圏外。
そこへ行ったのだろう。
九島は、
心配そうな顔から一転、明るい表情になった。
町で馬屋を見つける。
……相場の三倍。
(指示が出てるな)
「どうせ買わないだろ」という顔だ。
腹は立つが、
店にある三十頭、すべて購入した。
店主は、
「しまった」という顔と、
売上が三倍になった喜びが入り混じった表情。
登録がどうの、薬がどうのと、
引き渡しを邪魔してくるが――
金は払った。
無視だ。
舟に戻り、
米、酒、塩、衣類。
蝦夷地の和人が、
アイヌと取引するために必要な物資を
港の一角に山と積む。
価格は通常の二倍。
――臨時の店だ。
店番は、
赤目の夜雀。
影牙という優男。
影牙は王子様のような顔をしているが、
殺し専門の武闘派。
風魔の抜け忍だ。
女のお手伝いも付けた。
水斗、島田、甘粕たちと兵士は馬で外へ。
出発前、
「一週間は戻らない」という噂を
町中に流しておく。
残ったのは、
女と優男の三人。
そして――
和人が欲しがる商品が、山積みだ。
蝦夷地の和人商人は、
襲われることもあるため武装している。
半分は、
もう強盗だ。
欲しい商品が山とあり、
しかも高値。
なら、どうするか。
――奪うだけだ。
夜雀たちの前に、
武器を持った商人が三十人ほど並ぶ。
商人
「商品を置いて帰りな」
夜雀
「警告します。
武器を置いて帰りなさい」
狼煙を上げさせる。
用意してあった。
すぐに煙が立つ。
商人
「阿呆が。
仲間が帰って来るのは一週間後だ。
お前も内地の売春宿に売り飛ばしてやる。
証拠なんて残すかよ」
次の瞬間。
商人たちは、
夜雀と影牙に斬りかかった。
――だが。
二人は、
隠していた刀で応戦する。
(……強い)
十分後。
島田、水斗たち騎馬勢が戻る。
商人の後方を塞ぎ、斬り込んだ。
同時に、
船も港へ戻る。
黒崎仁、黒田リン。
五十メートル先から、
商人の顔へ次々と矢が突き刺さる。
結果だけ言えば――
夜雀と影牙だけで、
商人三十人は片付いた。
(戦闘力がおかしい)
釣り野伏せだが、
オトリが強すぎた。
戦闘から一時間後。
蠣崎氏が怒鳴り込んで来る。
武装した兵士を、
十名ほど連れて。
蠣崎氏
「貴様ら!
罪も無き町民を皆殺しにしおって!
分かっておろうな!
全員死罪だぞ!」
俺
「……何を見ている。
その“罪も無き町民”は、
全員、刀や武器を持っているだろう。
こいつらは強盗だ。
我々は正当防衛。
むしろ――
蠣崎氏の統治に問題がある。
幕府に報告しておこう」
一歩、前に出る。
俺
「この上杉龍義という名は、
将軍に付けて頂いた名前だ。
お前ごときが、我に死罪とは――
非礼千万。
謝罪と、
見舞い金千貫を要求する」
蠣崎氏
「払うわけないだろ!
糞餓鬼が!
覚えてろよー!」
……実に分かりやすい悪役だ。
そう言い捨てて、
蠣崎氏は去って行った。
今度の港は、キチンとしている。
十三湊とはえらい違いだ。
(……なるほど)
領主は蠣崎氏。
後に松前藩を開く家だ。
現在は安東氏の代官という立場。
元の名は武田信広。
アイヌの反乱を鎮圧し、
血縁もない蠣崎氏の家督を継いだ男らしい。
かなり卑怯な手段を使った、という話も聞く。
もっとも――
1536年時点では、蠣崎氏は幕府に正式に認められてはいない。
甘粕、直江を連れて挨拶へ向かう。
蠣崎氏は、
こちらに舐められまいと居丈高な態度で出迎えた。
こちらは礼式に則り、きちんと挨拶する。
だが――
返礼がない。
(……礼儀作法を知らんのか)
こんな男に、
蝦夷地を任せてはいけない。
――ならば。
さぁ、宣戦布告だ。
俺
「長尾家ではこの度、西洋帆船を開発しました。
それで蝦夷地の商品を仕入れ、日本中に販売したいと考えています。
つきましては、貴殿にご協力を願えないか。
例えば――
昆布一貫目分だと、いくらでお譲り頂けますか」
蠣崎氏
「十貫ですね」
……堺での販売価格と変わらない。
俺
「それは堺での販売価格と同じです。
つまり、
貴殿は我々に協力するつもりはない。
――長尾家を敵に回しても構わない、
そういう理解でよろしいですな?」
蠣崎氏
「敵にするとかしないとかではなく、
我々の規則に従って頂けるなら、五貫でお譲りします。
どうですかな?」
俺
「……考えておきます」
(五貫でも高い)
俺
「半年ほど前、
九島という兄弟がこちらに伺ったと思いますが、
ご存じありませんか」
蠣崎氏
「一週間ほどは見ましたが、
それ以降は知りませんな」
それだけ言って、会話は終わった。
館を出る。
俺
「九島よ。
兄弟たちは、
蠣崎氏の様子を見て、別の港へ行った可能性が高い。
俺たちのように挨拶に来て、
あの対応をされたら――
他へ行くのは自然だ」
二郎には、
蝦夷地で使える港の地図を渡してある。
蠣崎氏の勢力圏外。
そこへ行ったのだろう。
九島は、
心配そうな顔から一転、明るい表情になった。
町で馬屋を見つける。
……相場の三倍。
(指示が出てるな)
「どうせ買わないだろ」という顔だ。
腹は立つが、
店にある三十頭、すべて購入した。
店主は、
「しまった」という顔と、
売上が三倍になった喜びが入り混じった表情。
登録がどうの、薬がどうのと、
引き渡しを邪魔してくるが――
金は払った。
無視だ。
舟に戻り、
米、酒、塩、衣類。
蝦夷地の和人が、
アイヌと取引するために必要な物資を
港の一角に山と積む。
価格は通常の二倍。
――臨時の店だ。
店番は、
赤目の夜雀。
影牙という優男。
影牙は王子様のような顔をしているが、
殺し専門の武闘派。
風魔の抜け忍だ。
女のお手伝いも付けた。
水斗、島田、甘粕たちと兵士は馬で外へ。
出発前、
「一週間は戻らない」という噂を
町中に流しておく。
残ったのは、
女と優男の三人。
そして――
和人が欲しがる商品が、山積みだ。
蝦夷地の和人商人は、
襲われることもあるため武装している。
半分は、
もう強盗だ。
欲しい商品が山とあり、
しかも高値。
なら、どうするか。
――奪うだけだ。
夜雀たちの前に、
武器を持った商人が三十人ほど並ぶ。
商人
「商品を置いて帰りな」
夜雀
「警告します。
武器を置いて帰りなさい」
狼煙を上げさせる。
用意してあった。
すぐに煙が立つ。
商人
「阿呆が。
仲間が帰って来るのは一週間後だ。
お前も内地の売春宿に売り飛ばしてやる。
証拠なんて残すかよ」
次の瞬間。
商人たちは、
夜雀と影牙に斬りかかった。
――だが。
二人は、
隠していた刀で応戦する。
(……強い)
十分後。
島田、水斗たち騎馬勢が戻る。
商人の後方を塞ぎ、斬り込んだ。
同時に、
船も港へ戻る。
黒崎仁、黒田リン。
五十メートル先から、
商人の顔へ次々と矢が突き刺さる。
結果だけ言えば――
夜雀と影牙だけで、
商人三十人は片付いた。
(戦闘力がおかしい)
釣り野伏せだが、
オトリが強すぎた。
戦闘から一時間後。
蠣崎氏が怒鳴り込んで来る。
武装した兵士を、
十名ほど連れて。
蠣崎氏
「貴様ら!
罪も無き町民を皆殺しにしおって!
分かっておろうな!
全員死罪だぞ!」
俺
「……何を見ている。
その“罪も無き町民”は、
全員、刀や武器を持っているだろう。
こいつらは強盗だ。
我々は正当防衛。
むしろ――
蠣崎氏の統治に問題がある。
幕府に報告しておこう」
一歩、前に出る。
俺
「この上杉龍義という名は、
将軍に付けて頂いた名前だ。
お前ごときが、我に死罪とは――
非礼千万。
謝罪と、
見舞い金千貫を要求する」
蠣崎氏
「払うわけないだろ!
糞餓鬼が!
覚えてろよー!」
……実に分かりやすい悪役だ。
そう言い捨てて、
蠣崎氏は去って行った。
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