62 / 86
第62話 1536年 6際 九島兄弟を探せ!だぞ
しおりを挟む
九島二郎に渡した地図には、
蝦夷地の港がいくつか記されていた。
小樽港。
江差港。
函館港。
釧路港。
この中で――
蠣崎氏の勢力圏外で、
かつ港同士が近く、
冬を越さずに動ける南側となると。
選択肢は一つしかない。
江差港だ。
江差へ向かう船の上。
九島は不安そうな顔をしていた。
対照的に、安田はやけに明るい。
俺
「安田。舟酔いは大丈夫か?
松前じゃ大人しかったな」
安田
「若様のおかげでピンピンしております。
この蝦夷地が、若様の天下統一の第一歩だと思うと
嬉しくて」
俺
「アイヌってな、男でも耳に穴開けて
耳飾りするんだぞ。
安田もやってみるか?」
安田
「耳に鈴を付けたら、
うるさくて眠れないじゃないですか?」
俺
「神社の飾りじゃない。
鈴は付けない。
鉄とか、そのままの輪だ」
安田
「……威厳がなくなるので、やめておきます」
威厳、気にしてたのか。
そんな話をしているうちに、
江差港が見えてきた。
港には――
長尾家の旗を掲げた弁才舟が一隻。
少なくとも、
九島兄弟の誰かは無事だ。
全員無事でいてくれ。
座礁を避けるため、
小型舟を降ろして接岸する。
上陸するのは――
俺、九島、島田、水斗、安田、赤目滝。
残りは非常時に備えて待機。
「兄ちゃーーーん!」
次女・**時香(六歳)**が、
全力で駆けてきて――
長男・九島弥太郎に抱きついた。
ぴょんぴょん跳ねて、大喜びだ。
弥太郎
「皆、無事か?」
時香
「無事だよ!
兄ちゃん聞いて!
すっごく大変で――」
途中で、
弥太郎の目から安堵の涙がこぼれた。
それを見て、時香も泣く。
つられて、安田も泣く。
……お前はいいんだよ。
「実秀様~!」
別方向から声。
安田
「おー!
お前たちも無事だったかー!」
蝦夷地派遣組の十人だった。
いつの間にか交代要員も降りてきて、
親、兄弟、友人同士の再会が続く。
港は、涙だらけだ。
安田の顔も、ぐしゃぐしゃ。
そこへ、
長女・逸香がやってきた。
逸香
「若様。
来ていただき、本当にありがとうございます」
俺
「他の兄弟は?」
逸香
「三郎、四郎、六郎、七郎は
もう一隻で、アイヌの村を回って
取引に行っています」
そして続けて、
逸香
「若様。
エサシコタンの村長をご紹介します」
俺
「……通訳は?」
逸香
「少しなら、私でも」
嫌な予感がした。
いつの間にか甘粕と直江も降りてきており、
なぜか直江が号泣している。
直江、
お前はそういうキャラじゃないだろ。
聞けば、
直江には弟がいて、
跡継ぎ問題で色々あったらしい。
……今日は泣く日か。
九島弥太郎は、
相変わらず時香に絡まれている。
いい兄だ。
後回しにしよう。
泣いている安田と直江も後回しだ。
俺、甘粕、逸香で
村長に会いに行く。
逸香
「来たよー」
(アイヌ語)
村長
「おー、逸香か。
入れ入れ」
(アイヌ語)
逸香は俺を指さす。
逸香
「この人、一番偉くて
神の声、聞ける。
若いけど」
(アイヌ語)
村長
「それは凄い。
今、神様は何と言っている?」
(アイヌ語)
逸香
「聞く」
(アイヌ語)
……待て。
逸香
「若様。
村長が、神様は何と言っているかと」
俺
「ちょっと待て。
どうしてそうなった」
考える暇もない。
俺
「村長に、
俺たちに優しくすれば
良いことがあるって
神様が言ってると伝えろ」
逸香
「私に優しくすれば
良いことあるって」
(アイヌ語)
……違う。
村長は逸香の頭を撫で、
肩を揉み、
満足そうに俺を見る。
俺
「逸香。
多分だが――
お前のアイヌ語、
正確に伝わってない」
逸香
「えっ?」
仕切り直す。
俺は
越乃柿酒と蜂蜜を取り出した。
俺
「これを飲んで、舐めて、
味見してって伝えろ」
逸香
「これ舐めろ。
これ飲め」
(アイヌ語)
村長、
柿酒を舐め、
蜂蜜を飲んでむせる。
俺
「それは贈り物だと伝えろ」
逸香
「これやる」
(アイヌ語)
……やっぱり、微妙だ。
俺
「逸香。
もういい。
俺達が帰るって言え」
逸香
「帰れ」
(アイヌ語)
村長、立ち去る。
俺は頭を抱えた。
逸香は確実に受け入れられている。
だが――
通訳ができない。
これは致命的だ。
どうする。
そこへ、
九島弥太郎が来た。
時香が、まだまとわりついている。
俺は二人から少し離れ、
小声でこの件を弥太郎に話す。
俺
「通訳がいない。
どうする」
弥太郎
「若様、申し訳ございません。
逸香も、お役に立ちたい一心で……」
俺
「責めてない。
解決策だ。
何かないか」
弥太郎
「……明日、三郎たちが戻るそうです。
通訳問題を解決したから、
別の村へ行ったのだと思います」
俺
「……なるほど」
弥太郎
「通訳の件は、
三郎に聞きましょう」
――希望は、そこにあった。
蝦夷地の港がいくつか記されていた。
小樽港。
江差港。
函館港。
釧路港。
この中で――
蠣崎氏の勢力圏外で、
かつ港同士が近く、
冬を越さずに動ける南側となると。
選択肢は一つしかない。
江差港だ。
江差へ向かう船の上。
九島は不安そうな顔をしていた。
対照的に、安田はやけに明るい。
俺
「安田。舟酔いは大丈夫か?
松前じゃ大人しかったな」
安田
「若様のおかげでピンピンしております。
この蝦夷地が、若様の天下統一の第一歩だと思うと
嬉しくて」
俺
「アイヌってな、男でも耳に穴開けて
耳飾りするんだぞ。
安田もやってみるか?」
安田
「耳に鈴を付けたら、
うるさくて眠れないじゃないですか?」
俺
「神社の飾りじゃない。
鈴は付けない。
鉄とか、そのままの輪だ」
安田
「……威厳がなくなるので、やめておきます」
威厳、気にしてたのか。
そんな話をしているうちに、
江差港が見えてきた。
港には――
長尾家の旗を掲げた弁才舟が一隻。
少なくとも、
九島兄弟の誰かは無事だ。
全員無事でいてくれ。
座礁を避けるため、
小型舟を降ろして接岸する。
上陸するのは――
俺、九島、島田、水斗、安田、赤目滝。
残りは非常時に備えて待機。
「兄ちゃーーーん!」
次女・**時香(六歳)**が、
全力で駆けてきて――
長男・九島弥太郎に抱きついた。
ぴょんぴょん跳ねて、大喜びだ。
弥太郎
「皆、無事か?」
時香
「無事だよ!
兄ちゃん聞いて!
すっごく大変で――」
途中で、
弥太郎の目から安堵の涙がこぼれた。
それを見て、時香も泣く。
つられて、安田も泣く。
……お前はいいんだよ。
「実秀様~!」
別方向から声。
安田
「おー!
お前たちも無事だったかー!」
蝦夷地派遣組の十人だった。
いつの間にか交代要員も降りてきて、
親、兄弟、友人同士の再会が続く。
港は、涙だらけだ。
安田の顔も、ぐしゃぐしゃ。
そこへ、
長女・逸香がやってきた。
逸香
「若様。
来ていただき、本当にありがとうございます」
俺
「他の兄弟は?」
逸香
「三郎、四郎、六郎、七郎は
もう一隻で、アイヌの村を回って
取引に行っています」
そして続けて、
逸香
「若様。
エサシコタンの村長をご紹介します」
俺
「……通訳は?」
逸香
「少しなら、私でも」
嫌な予感がした。
いつの間にか甘粕と直江も降りてきており、
なぜか直江が号泣している。
直江、
お前はそういうキャラじゃないだろ。
聞けば、
直江には弟がいて、
跡継ぎ問題で色々あったらしい。
……今日は泣く日か。
九島弥太郎は、
相変わらず時香に絡まれている。
いい兄だ。
後回しにしよう。
泣いている安田と直江も後回しだ。
俺、甘粕、逸香で
村長に会いに行く。
逸香
「来たよー」
(アイヌ語)
村長
「おー、逸香か。
入れ入れ」
(アイヌ語)
逸香は俺を指さす。
逸香
「この人、一番偉くて
神の声、聞ける。
若いけど」
(アイヌ語)
村長
「それは凄い。
今、神様は何と言っている?」
(アイヌ語)
逸香
「聞く」
(アイヌ語)
……待て。
逸香
「若様。
村長が、神様は何と言っているかと」
俺
「ちょっと待て。
どうしてそうなった」
考える暇もない。
俺
「村長に、
俺たちに優しくすれば
良いことがあるって
神様が言ってると伝えろ」
逸香
「私に優しくすれば
良いことあるって」
(アイヌ語)
……違う。
村長は逸香の頭を撫で、
肩を揉み、
満足そうに俺を見る。
俺
「逸香。
多分だが――
お前のアイヌ語、
正確に伝わってない」
逸香
「えっ?」
仕切り直す。
俺は
越乃柿酒と蜂蜜を取り出した。
俺
「これを飲んで、舐めて、
味見してって伝えろ」
逸香
「これ舐めろ。
これ飲め」
(アイヌ語)
村長、
柿酒を舐め、
蜂蜜を飲んでむせる。
俺
「それは贈り物だと伝えろ」
逸香
「これやる」
(アイヌ語)
……やっぱり、微妙だ。
俺
「逸香。
もういい。
俺達が帰るって言え」
逸香
「帰れ」
(アイヌ語)
村長、立ち去る。
俺は頭を抱えた。
逸香は確実に受け入れられている。
だが――
通訳ができない。
これは致命的だ。
どうする。
そこへ、
九島弥太郎が来た。
時香が、まだまとわりついている。
俺は二人から少し離れ、
小声でこの件を弥太郎に話す。
俺
「通訳がいない。
どうする」
弥太郎
「若様、申し訳ございません。
逸香も、お役に立ちたい一心で……」
俺
「責めてない。
解決策だ。
何かないか」
弥太郎
「……明日、三郎たちが戻るそうです。
通訳問題を解決したから、
別の村へ行ったのだと思います」
俺
「……なるほど」
弥太郎
「通訳の件は、
三郎に聞きましょう」
――希望は、そこにあった。
0
あなたにおすすめの小説
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
【完結】俺が信長で、幼馴染が吉乃と濃姫!? ~転生幼馴染トリオ、本能寺フラグ回避して戦国スローライフ目指します
月影 流詩亜
ファンタジー
事故で転生したのは、まさかの織田信長!?
しかも、隣にいたはずの可愛い幼馴染(双子)も、なぜか信長の側室「吉乃」と正室「濃姫」に!
史実の本能寺フラグを回避するため、うつけの仮面の下、三人は秘密の同盟を結ぶ。
現代知識と絆を武器に、戦国スローライフを目指すサバイバル開幕!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。
俣彦
歴史・時代
三河進出を目論む今川義元から突き付けられた今橋城明け渡しの要求。
一戦辞さずで家中が一致する中、独り冷静だった人物が居たら……。
断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました
八華
ファンタジー
断罪済みの牢の中で悪役令嬢と意識が融合してしまった主人公。
乙女ゲームストーリー上、待っているのは破滅のみ。
でも、なぜか地球でやっていたオンラインゲームキャラの能力が使えるみたいで……。
ゲームキャラチートを利用して、あっさり脱獄成功。
王都の街で色んな人と出会いながら、現実世界への帰還を目指します!
影武者の天下盗り
井上シオ
歴史・時代
「影武者が、本物を超えてしまった——」
百姓の男が“信長”を演じ続けた。
やがて彼は、歴史さえ書き換える“もう一人の信長”になる。
貧しい百姓・十兵衛は、織田信長の影武者として拾われた。
戦場で命を賭け、演じ続けた先に待っていたのは――本能寺の変。
炎の中、信長は死に、十兵衛だけが生き残った。
家臣たちは彼を“信長”と信じ、十兵衛もまた“信長として生きる”ことを選ぶ。
偽物だった男が、やがて本物を凌ぐ采配で天下を動かしていく。
「俺が、信長だ」
虚構と真実が交差するとき、“天下を盗る”のは誰か。
時は戦国。
貧しい百姓の青年・十兵衛は、戦火に焼かれた村で家も家族も失い、彷徨っていた。
そんな彼を拾ったのは、天下人・織田信長の家臣団だった。
その驚くべき理由は——「あまりにも、信長様に似ている」から。
歴史そのものを塗り替える——“影武者が本物を超える”成り上がり戦国譚。
(このドラマは史実を基にしたフィクションです)
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる