神様、恋をすれば世界は救われるのですか? 〜余命二年の侯爵令嬢が、選ばれなかった未来の先で最愛を見つける物語〜

お月見ましろ

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《観測の罪》

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 その子は、根を張る花のようだった。

 踏み荒らされても折れず、
 折れないくせに、決して鋼にはならない。

 弱く見えて、弱さに甘えない。
 守られる立場に甘んじず、
 守られない未来にも、自分の足で立とうとする。

 ――アイリス。
 その名に相応しく、光を拒まない存在だった。

 危険を知らないわけではない。
 恐怖を理解していないわけでもない。

 それでも、考える前に動く。
 後悔するくらいなら、傷を負うことを選ぶ。

 合理でも、正義でもない。
 ただの選択だ。

 ――それが、世界を壊す選択だとしても。

 気づけば、視線が追っていた。
 気づけば、目を離すことができなくなっていた。

 彼女が選ぶたび、
 世界の歯車が、ほんのわずかに軋む。

 それを理解しながら、
 私は、何も止めなかった。

 止める理由が、なかったからだ。

 ――もし。

 もっと早く出会っていたなら。
 もし、この人生が、最初から違っていたなら。

 背負う責任も、立場も、名前も。
 与えられた役割が、すべて違っていたなら。

 私は、
 人であることに、ここまで縛られずに済んだのだろうか。

 未来は、見えない。
 正しさは、いつも遅れてやってくる。

 この世界は、あまりにも脆く、
 それでいて、壊れることを恐れすぎている。

 守りたいものが増えるほど、
 選択肢は、ひとつずつ削られていく。

 ――それでも。

 もし、この想いが、
 観測という名の檻を越えてしまうのなら。

 もし、私が、
 “選ぶ側”に立ってしまうのなら。

 世界が壊れても、構わない。

 彼女の笑顔が、
 その犠牲になるくらいなら。

 ――観測の罪。


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