異世界に飛ばされたけど『ハコニワ』スキルで無双しながら帰還を目指す

かるぼな

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1.プロローグ

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『上條練夜さん、これから貴方には違う世界に行ってもらいます』

 音ではなく頭に直接響く声。

『ある実験のために貴方が選ばれました』
 
 状況が分からず飲み込めない。
 白く何もない空間。そこに浮いている感覚。
 俺は霊体とか魂みたいな存在になってしまったのか?

 こちらの戸惑いも無視して話は続けられる。

『貴方にはある種子を持って異世界に降りてもらいます』

 種子? 異世界? 降りる?

『そこで種子を芽吹かせスキルを手に入れてください』
 
 どんどん話が進んでいるけど貴女は誰ですか?

『私は貴方の世界で創造主とか女神とか言われている存在です』

 確かに造形は人間のそれとは異なり整いすぎている。

『そしてここは世界と世界の狭間、天界とも言われている場所です』
「その女神様が何故俺を選んだのですか?」
『特に理由はありません。偶々貴方が選ばれました』

 随分と勝手なことだ。

 あまりにも事務的な言い方に寒気すら覚える。
 こちらの都合も完全に無視か。

『貴方には拒否権はありません。これは決定事項です』

 更に断る選択肢も無いと。

『時間もないのですけれど、少しでしたら質問にお答えします』

 現状を受け入れきれていない自分がいる。
 混乱で頭が上手く回らない。

「今からいく世界はどんな場所なのですか?」
『剣と魔法の世界で魔獣などもいる場所です』

 よくあるファンタジーな世界か。

「何か貰える能力とか特典は有るのですか?」
『言語、探知、保管、鑑定能力とこの世界の一般的な装備を差し上げます』

 生活するのには問題ない気もするけど、どうなんだろう。
 街にでも降ろして貰えればなんとかなりそうな気もするが……。

『今から転送される場所は敵のいるダンジョン内です』

 はあっ! いきなり過酷地帯かよ!

『種子が芽吹きスキルが得られなければ生存確率は限りなくゼロに近いでしょう』

 死ぬってこと?

『また瀕死状態にならなければスキルも獲得出来ません。それ故のダンジョンスタートです』

 なっ!

『自力で生き延びスキルを得て、先ずは地上を目指してください』

 次々と新たな情報が追加される。

「ダンジョンの魔獣は俺でも倒せるのですか?」
『何体かは倒せるでしょうけど、全滅させることは現状では厳しいでしょう』

 つまり俺より強い魔獣がいる中、ぎりぎりまで体力を削り死なないようにして種子からスキルを身に付けろと。

『更に発現したスキルが役に立たないものだった場合も生き延びるのは厳しいでしょう』

 どんな無理ゲーだよ!
 
 殺意さえおぼえる展開に俺は言う。

「無かったことにして元の世界に戻してはもらえませんか?」
『先程も言いましたけど、これは決定事項です』

 事務的に女神が冷たく繰り返す。
 何とかして生き残る情報を探さないと。
 
 探知と鑑定を使ってみているけど、エラー表示される部分が多い。

『レベル差がありすぎる相手には能力が効かない場合があります』

 くそっ! 仕方がないので自分を鑑定してみる。

 **************************
 名前:上条錬夜
 種族:人間

 LⅤ :1
 HP :50/50
 MP :7/7
 攻撃力:8
 防御力:5
 魔力 :7
 俊敏 :9
 
 ―スキル―
 『言語』『探知』『鑑定』『インベントリ』

 ―特別スキル―
 『スキルの種』
 **************************

 標準が分からないのでなんとも言えないけれど、弱過ぎじゃないか俺?

 一桁ばかりで強そうには見えない。

『HP50とありますけど、そちらがゼロになると死亡となります』

 他人事だと思って簡単に言いやがって。
 
『あちらに行った際には防具と剣が装備されますので、もう少し強さは上がるのかと』

 状況は最悪だ。

「死亡したらどうなるんだ?」
『何もありません。完全なる無です。生き返りもありません』

 とにかく条件をクリアしない限り死が待っているのは分かった。

「最終目的は? 何をすればいいんだ?」
『そうですね。最終目的は――』

 一瞬の静寂の後。

『自力でまたこの場所に戻ってきて下さい』
「えっ? ここに?」
『ええそれだけです。まあ別にこの場所を目指さず、あちらの世界で一生を終えても構いません』

 どういう事だ?

『居心地が良くなってしまい、諦めてしまう方も実際多いのですよ』

 俺だけじゃないってことか?

『人間の一生など私達からしたら少しの時間ですから、貴方の好きになさって構いません』

 つまり戻って来なくても問題ないと。勝手に選んでおいてその言いぐさと理不尽さに腹が立つ。

「ああ、分かったよ。必ず戻ってあんたをぶん殴ってやるよ」
『楽しみにしていましょう』

 女神は俺の嫌味を気にする素振りも見せない。
 
 まあ女神にとって俺の存在なんて取るに足らないものなのだろう。

『そろそろ時間ですね』

 俺の身体が少しずつ光の粒子となっていく。

『では、貴方の次の人生が良いものでありますようにお祈りしております』

 そんな言葉を苦々しく思いながら俺の意識は光の中に吸い込まれていった。
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