風の魔導師はおとなしくしてくれない

七章 タールヴィ家とイザート家

１７

　ライオルは濡れた手を後ろに滑らせ、指を後孔に突っこんだ。

「んんっ」

　異物を入れられる違和感にはいつまでも慣れず、ルイはきゅっと目を閉じた。ライオルは安心させるようにルイの目尻にキスを落とした。ライオルはゆっくりとルイのいいところを指でなでた。ルイの弱いところは全部知られてしまっている。感じる部分をくりくりといじられ、ルイは甘い声をあげた。

「あ、あっ」

　気を抜くとうっかりまた達してしまいそうで、ルイはシーツを蹴って少しずつ後ろに逃げた。羽織っていた夜着とガウンが肩からずり落ち、肘にぶら下がっているだけになった。ライオルはあらわになった華奢な肩にかみついた。

「いたっ……歯を立てるなよ」
「かわいかったから、つい」

　ライオルは歯形のついた肩を満足げに見つめ、二本に増やした指で秘部の奥をかき回した。文句を言おうとしていたルイは、弱いところをこすり上げられてたちまちとろけた顔になり、ライオルを喜ばせた。

　ライオルは指を引き抜くと間髪入れずに猛った自身を突き立てた。

「ふあ！？」

　ルイはいきなり奥を突かれて目を見開いた。挿入の衝撃で軽く達してしまい、自身からとろりと白濁を垂らした。

「あ、だめ……っ、ちょ、とめてっ……」

　ライオルはルイの腕から夜着とガウンを引き抜いて裸にしてしまうと、ルイの背中に腕をまわして抱き上げた。

「よいしょ」
「！？　あうっ」

　急に体を起こされたルイは、自重でライオルの自身を一番奥まで飲みこんでしまった。体勢が逆転し、寝転がったライオルの上にまたがる形になった。

「とめてやるから、お前自分で動け」
「えっ」
「ほら」

　急かすように下から突き上げられた。

「んあ！」
「自分で好きなところに当ててみろよ」

　ゆるゆると奥を突かれると、もどかしくてたまらなくなった。

「んっ、ん……」

　ルイはもっと気持ちよくなりたくて、おずおずと腰を動かした。ライオルの体の両脇に手をつき、必死にライオルを求めた。

「あっ……」

　先ほど指でいじめられた箇所をこすると背筋に甘いしびれが走り、止められなくなった。ライオルはルイの太ももをなで、自分の上で腰をふるルイの痴態を眺めた。

「う……ライオル……」
「なんだよ」
「自分じゃ無理……動いて」
「ふっ」

　ライオルはルイの腰に手を回して体を起こし、元通りルイを寝かせて覆い被さった。

「愛してるよ、ルイ」

　ライオルは入れたものをぎりぎりまで引き抜き、勢いよく奥まで貫いた。それを繰り返され、ルイは気絶しそうなほどの悦楽を与えられて高い声であえいだ。

「ああっ！　あっあっ、きもち、い……おかしくなっちゃうっ」
「はっ……かわいすぎ」

　ライオルは伸ばされたルイの手をつかんでベッドに押しつけ、激しく攻め立てた。ルイは過ぎる快楽にどうにかなってしまいそうだった。

「ん、あっ……きす、してっ」

　もつれる舌でねだるとすぐに口をふさがれた。

「んんっ……ふ、あぁうっ……！」

　強く腰を打ち付けられ、ルイは背筋を弓なりに反らせて絶頂を味わった。弾みで涙がぽろりとこぼれた。同時に熱いものを中にたたきつけられた。

　ルイはくたりと体をシーツに投げ出した。湯浴みをしたばかりなのに、汗やら自分で出したものやらで体中ひどい有様だった。ライオルも額に玉の汗をかいていた。

「……風呂、入るか？」

　ライオルが言った。

「入る……」

　ルイは力なくうなずいた。



　ライオルの部屋の洗面室には風呂の用意がされたままだったが、湯船に張られたお湯はすっかりぬるくなっていた。ライオルは手でお湯をかき混ぜてあたため直し、服を脱いで湯船に入った。ルイは濡らしたタオルで体を拭いていたが、ライオルに引っ張られて一緒に湯船につかった。

「ふう……」

　ルイはライオルの足のあいだに座り、ライオルの肩に後頭部を預けてくつろいだ。香油が垂らされていいにおいのするお湯だった。ルイは浴槽の縁に置かれたライオルの右手をつかみ、両手でもてあそんだ。優しくてときどきちょっと乱暴な手を好き勝手に触っていると、後ろから声をかけられた。

「……なにしてんだ」
「剣を握っている手だなあと思って」

　ルイはライオルの手のひらと自分の手のひらを合わせて大きさを比較した。

「大きいな……この手がいつも俺を守ってくれてたんだなあ」
「……わざとやってんのか……？」
「え？」

　ルイが小首をかしげて後ろを向くと、ライオルはすっと視線をそらした。

　体があたたまるとライオルは湯船からあがり、ルイを浴槽の中に立たせて石けんを泡立てたタオルで体をごしごしと洗った。ルイはライオルにかまってもらえるのが嬉しくて、にやにやと笑っていた。ライオルはそんなルイをじっと見て言った。

「お前、俺のこと好きだよな？」

　ルイはとびきりのいい笑顔になった。

「うん、好きだよ！」
「素直かよ……」

　ライオルはため息をついてルイを抱きしめた。ライオルの手から泡のついたタオルが落ちた。ルイは腰のあたりに熱いものを押しつけられて顔を赤らめた。

「なっ、なんでまた勃ってるんだよ……！」
「お前のせいに決まってんだろ」

　ライオルはルイを湯船から引き上げ、洗面室の壁に後ろ向きに手をつかせた。そして、ルイがよくわかっていないうちに後ろから石けんのぬめりを借りて自身を突っこんだ。

「んあっ」

　さんざんなぶられたルイの秘部は、質量を増した陰茎をあっさりと飲みこんだ。息をつくまもなく中をがつがつとうがたれ、洗面室に肌のぶつかる音が響いた。

「あっあっ、ライオルっ、待ってっ……！」
「無理」

　ライオルはルイの肩口にかみつき、ルイの腰をつかんで腰を振り立てた。ルイは倒れないように震える足を踏ん張った。

「ルイ、好きだ、愛してる……」

　ライオルは甘い言葉をはきながら、ルイの濡れたうなじに口づけた。

「んあ！　あっ、俺も、すきっ……あっ！」

　ルイは思考をどろどろに溶かされ、ひっきりなしにあえいだ。好きになった人が自分を好きでいてくれることが、死にそうなほど嬉しかった。