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七章 タールヴィ家とイザート家
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しおりを挟む「パーティーのあともずっと一緒にいたじゃないか」
「シャムスにお目付役を頼まれたんだ。ユーノはしばらくカリバン・クルスに逗留して働くから、街を案内してやってくれってさ。シャムスはユーノに甘いんだよ」
「案内……でも婚約は断ったんだろ?」
「ああ。パーティーのあとにまたシャムスに会う機会があったから、そこで断った。残念がられたけど、引き下がってくれたよ。今後もしなにか言ってきても絶対に断るから」
「じゃあ」
ルイは生唾を飲みこんだ。
「お前はユーノのことが好きなんじゃないのか?」
「いや。やることがお前と似てるからかわいいなと思うことはあるけど。別に特別には思ってない」
「……ブルダ大浴場で抱き合ってたのに?」
「えっ?」
ライオルは目を見張った。
「見ていたのか……」
ライオルはオットマンから足を下ろしてルイに向き直り、ばつが悪そうに頭をかいた。
「なるほど、それで急に行ってしまったのか……。あれは、ユーノが第一部隊の馬鹿どもに言い寄られてたから助けただけだ。すごく怖がってしまったから、なぐさめただけだよ」
「……そうだろうとは思ったけど」
「え、わかってたのか? ならいいじゃないか」
「でも、その……」
ルイは口ごもったが、テオフィロに言われたとおりきちんと言葉にすることにした。
「そばにいてやるって言ってたのが、まるで結婚してずっと一緒にいようって言ってるように聞こえて、いやだったんだ……」
子供っぽいことを吐露してしまい、穴があったら入りたい気分だった。ライオルは一拍おいたあと、急に肩を震わせて笑い出した。
「ふふ……それは、悪かったな……」
「謝ってるのかそれ?」
「ごめんって」
ライオルは笑いながらルイをきつく抱きしめた。
「……そこまで思いを募らせてくれるとは予想以上だ……」
「え? なに?」
ルイは頭を抱えこまれているせいでライオルの声がよく聞こえなかった。
「やきもちやいてたんだなって」
「そんなんじゃない。今後ここを出たらどうやって暮らせばいいか心配になって……」
「お前そんなに俺のこと好きだったのか」
「違う」
「違わないだろ」
そう言ってライオルはルイに口づけた。ルイは驚いたが、そっと目を閉じてライオルの背中に手を回した。長いキスだった。ライオルはちゅっと音を立てて離れていった。
「お前、いい加減愛されることに慣れろよ」
ライオルは困ったように笑い、ルイのまぶたに口づけた。
「いやって言ったって、絶対に離してやらないからな」
ルイは嬉しくて涙が浮かんだ。
「うん……どこにも行かないよ。ここにいたい」
ルイは少し腰を浮かせて自分からライオルに口づけた。ライオルはわずかに目を見開き、ルイを抱きしめる腕に力をこめた。
「ん……痛いって」
ルイは口を離して文句を言ったが、ライオルは力を緩めるどころか、そのままひょいとルイを抱えて奥の寝室に連れて行った。ルイは暗い寝室のベッドに横たえられ、覆い被さったライオルにまた口をふさがれた。今度は深く口づけられ、舌と舌を絡まされた。ルイはつたないながらもキスに応えた。
ライオルはルイの夜着のひもをほどき、上に羽織っていたガウンごと前を開いた。ルイはライオルに見られていると思うと無性に恥ずかしくなった。今まで何度も体を重ねてきたが、心持ちが変わったせいかうまく平静が保てない。
「どうした?」
顔を手で覆ってしまったルイに、ライオルが声をかけた。
「なんか……恥ずかしくて……」
「またそんなこと言って。今さらだろ?」
「心臓が壊れそうだ……」
「は……かわいいやつ」
ライオルは笑ってルイの胸の突起を舌先でちろりとなめた。
「っあ」
ルイはぴくりと肩を震わせた。おかしな煙草の煙を吸わされたときのように、感覚が過敏になっているようだ。胸の飾りを舌で転がされ、下腹部がじわりと熱くなった。
ライオルはルイの下着をはぎとり、すでに硬度を持ち始めているルイの中心に手をはわせた。
「あっ」
「もうこんなになってるじゃないか。キスと胸だけで興奮したんだ?」
「……うるさい」
ルイは羞恥でどうにかなってしまいそうだった。それでも体は正直で、ライオルに触れられてどんどん熱が高まっていく。ルイは口を手で押さえたが、抑えきれない声が漏れ出てしまった。
「ん……んっ」
「我慢しなくていいのに」
先端を指でぐりっと押され、快感が背筋を走った。
「あ! やだ……っ」
「イけよ、ほら」
先走りがあふれる自身を水音を立ててしごかれた。ルイはあっさり陥落して白濁を散らした。
「あぁ……っ! あっ……や、今さわんないで……っ」
達しているあいだも手を動かされ、ルイは泣き声をあげてシーツを足で蹴った。
「たまってたんだろ?」
ライオルはルイの出したもので汚れた手を見てにやりと笑った。
「六人部屋じゃ自分で処理もできないしな」
「…………そうだね」
ルイは言いながらふいと横を向いた。
「……違うのか?」
ライオルが鋭く突っこんだ。ルイはあまり言いたくはなかったが、ごまかすとあとが怖いので正直に答えた。
「あの……一人部屋をもらってた」
「え!? 個室は隊長しかもらえないぞ!?」
「ギレットが一人のほうがいいだろうって、管理人に無理を通してくれたんだ。ちょうど一部屋空いていたから、少しのあいだならいいって管理人が許してくれたんだよ」
ライオルの頬がひくりと引きつった。
「……ずっとあいつと同じ二階の一人部屋にいたのか?」
「ま、まあ」
「あいつはお前の部屋に来たか? なにかされなかったか?」
「…………別に」
「嘘をついたら、わかってるな」
「キ、キスされた……でもそれだけ……」
「……あの野郎……」
ライオルはルイの首筋に額をつけて低い声をあげた。ルイはライオルの頭にそっと手を置いた。
「で、でもほら、もうあそこには行かないから!」
「当たり前だ……。くそっ、宿舎は常に人目があるから大丈夫だと思ってたのに、個室は考えてなかった。カドレックのやつ、なんでそんな大事なこと言わなかったんだ……? あぶねえ」
ライオルは再びルイに口づけた。口内を舌でかき回され、ルイは息が続かず少しくらくらした。
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