風の魔導師はおとなしくしてくれない

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幕間 雨の降る日

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「んっ」

 ライオルは再びルイに深く口づけた。ルイがなんとかキスに応えているうちに、ライオルはルイの下肢に手をはわせた。ルイは息が苦しいやら気持ちいいやらで、なにかを考えるひまもなかった。

 信頼する相手に体を預けることはとても心地がよかった。ライオルは強引だが触れてくる手は優しく、ルイの嫌がることは絶対にしない。ルイはすっかり安心しきっていた。

「あっ」

 後孔に入れられた指に感じるところをこすられ、ルイは足をぴくりと震わせた。するとそこばかりこりこりと刺激され、ルイは甘い声をあげた。

「あぁっ、あっ、そこ、やだっ……」

 いやいやと首を振ったが、ライオルは薄ら笑いを浮かべただけで手をとめなかった。ルイはひっきりなしに快感を与えられ、枕の端っこをつかんであえいだ。

 不意にするりと指が抜かれたかと思うと、なにやらごそごそと物音がした。ルイが不思議に思って顔を上げようとしたとき、再び二本の指に中に侵入された。

「あ、んっ……?」

 指を奥まで突っこまれたが、すぐにまた引き抜かれた。ルイは肘をついて上半身を起こした。

「……今なにか中に入れた?」
「いや?」
「……本当? なんか違和感があるんだけど……」
「すぐなくなるから平気だよ」
「やっぱりなにか入れただろ! なに入れた!?」
「大したものじゃないから気にするな」
「気にするって!」
「怒るなよ」

 ライオルはルイの後頭部に手を置き、文句を言う口を口でふさいで黙らせた。ルイはライオルをどかそうと右手を伸ばしたが、手首をつかまれてそのままベッドに押し倒された。

「おい、ライオルっ……」

 ルイは手足をばたつかせたが効果はなかった。ただ無駄に息を切らせただけで、心臓がどくどくと鳴った。

 だが、だんだんと暴れたこととは関係なく呼吸が乱れてきていることに気がついた。吐息が熱くなり、さっきいじられた中がむずむずしてきた。

「え……な、なに……?」

 ルイは自分の体の妙な変化に怖くなった。ライオルはルイの表情を確認すると、おもむろに胸の飾りにかみついた。

「ひゃっ」

 ルイはびっくりしてうわずった声をあげた。ライオルは小さな突起を舌で転がした。

「気持ちいい?」
「んっ、そこで、喋るなって……」

 ルイは頬を紅潮させて言った。ライオルはにやりと笑うとルイの後孔に指を入れて中をかき回した。

「あっ! あ、あっ」
「はは、中ひくついてるんだけど」

 ルイは恥ずかしいことを言われて眉をハの字に下げた。中を指で突かれるとそれだけで達してしまいそうに気持ちがよかった。でも腹の底からせり上がってくる欲はそれだけでは満たされなかった。

「ライオル……それ、もういい……」
「え?」
「もういいから、はやく……」

 ルイは足をもじもじさせてか細い声で言った。ライオルはにやつきながら顔を近づけてきた。

「なんだって?」

 ルイはライオルがわざと聞こえていないふりをしているとわかっていた。だが、もう怒っている余裕もなかった。

「だから……早く、いれて……!」

 ルイはそう言ってライオルの腕をひっぱった。ライオルはすっと真顔になった。

「はー……かわいい……」

 ライオルは寝間着のズボンの前をくつろげて、とっくに臨戦態勢だったものをルイの中に埋めた。とろけきった中はライオルをぎゅうぎゅうに締めつけて悦んだ。

「っあ、はうっ」
「そんな気持ちよさそうな顔しちゃって……」

 ライオルはルイの体の両脇に手をついて中を攻め立てた。ルイはあっという間に追いつめられ、一度も触れられていない自身から白濁を散らして達した。

「もうイっちゃったのかよ」
「ああっ! イったからっ……う、ごかないでぇっ」

 達して敏感になった内部をこすられ、ルイは悲鳴をあげた。

「んあっ! あ、あっ!」
「すごくよさそうだな……」

 ライオルはぼそっと呟くと腰の動きを早めた。

「あーっ、だめ、っ……!」

 ルイはいくらもしないうちに二度目の精をはき出した。苦しいほどの快楽を与えられて、それでもまだ奥をついてほしくて仕方がなかった。明らかにいつもと感じ方が違う。ルイは半泣きになりながらライオルをにらみつけた。

「おい……さっきの、中に入れたのなんなんだよ……!」
「ああ、あれな」

 ライオルは陰茎をぎりぎりまで引き抜き、最奥にたたきつけた。

「ひああっ!」

 ルイは一瞬頭が真っ白になり、足をびくりと震わせた。ふと、以前一人で街中に出かけて道に迷い、声をかけてきた男にだまされたときのことを思いだした。

「まさか……アトライパみたいなやつじゃ……」
「馬鹿、非合法のものなんかお前に使うかよ」

 ライオルはルイの額に汗ではりついた髪を手でそっとどかした。

「王宮魔導師会が作ったきちんとした媚薬だから安心しろ」
「び、媚薬!? そのどこに安心できる要素があるんだよ!」
「評判通りの効き目みたいだな。高い金を出したかいがあった」
「ふ、ざ、け、ん、な」

 ライオルは優しくルイの頬をなでて淫靡な笑みを浮かべた。

「かわいいお前が見られてよかった」
「俺は全然よくない……!」
「ああ、ごめん。まだまだ足りないよな。気が済むまで抱いてやるから」
「そういう意味じゃ……あっ!」

 ライオルはルイの腰をつかんでがつがつと奥をうがった。ルイは勝手に媚薬を使ったひどい恋人をののしってやりたかったが、口から出てくるのはあえぎ声ばかりだった。

「ああっ、だめっ、またイくぅ……!」

 ルイは背中をのけぞらせて薄くなった白濁を垂らした。もはや弱い絶頂がずっと続いているような感覚だった。そのあいだもライオルは止まらなかった。

 ルイはだらしなく口を開け、焦点の合わない目ではあはあと熱い息をはいた。口端から一筋の唾液が垂れた。

「あっ、あっ、ひいっ……」

 ルイの体のほてりはいっこうに収まらず、長いこと抱かれるはめになった。

 やっと薬の効果が切れて解放されたルイは、もはや立ち上がることもできなかった。ルイの中に出して満足したライオルは、ルイの首筋にキスを落とした。

「すごくかわいかったよ……愛してるよ、ルイ」

 ルイは文句を言う気力さえ残っていなかった。


 ◆


 翌朝。ルイは痛む腰をさすりながらよろよろと自分の部屋に戻った。ライオルはルイの体調を気遣って部屋まで付き添った。

「ルイ、今日は仕事休んでいいから、部屋で寝てろ」
「…………」

 ルイは黙りこくったまま自分のベッドにもぐりこみ、ぷいと壁際を向いた。

「無理させて悪かったよ。俺は仕事に行くけど、大丈夫か?」
「……早く行け。俺は一人でゆっくり休む」
「ああ、そうしてくれ」

 ライオルは後ろを振り返った。そこには眉根を寄せたテオフィロが立っていた。

「テオフィロ、あとは頼むぞ」
「……はい」

 ライオルはそれだけ言ってルイの部屋をあとにした。廊下を歩いていると、後ろから足音が追いかけてきた。

「ライオル様! ちょっと待たんかい!」

 テオフィロだった。ライオルはその場で立ち止まった。

「なんだよ」
「それはこっちの台詞です。ルイ様になにしたんですか? 足腰立たなくなってるじゃないですか」
「まあその、いろいろあって……」
「正直に言ってくださいよ。お世話するのは俺なんだから。昨日帰ってきたときはあんなにご機嫌だったのに、一晩でいったいなにが起きたんですか?」
「あー……その、ちょっと王宮魔導師会の新作の薬を買っ……たまたま一つもらってだな。それを使ってみたら、ああなった」
「はあ?」
「さすが王宮魔導師の作ったものは質がいいな」

 テオフィロのこめかみに青筋が浮かんだ。

「ライオル様……あなた、媚薬でも盛ったんですか……?」
「まあ」
「……誰にもらったんです?」
「ダミアス」

 テオフィロはカッと目を見開いた。

「はあ!? あんな人とまだつながりがあったんですか!? とっくに縁を切ったものと思ってましたよ!」
「おいおい、同じ騎馬師団の隊長同士なのに縁を切れるわけないだろ。普通に友人だよ」
「だめです、仕事以外で口聞かないでください! あんな下半身だらしない人と一緒にいたらあなたまで毒されます! というかもう毒されてます!」
「お前昔からあいつのこと嫌いだよなあ……」
「当たり前です! 隊長になる前のあなたをしょっちゅう夜遅くまで遊びに連れ回して、どれほど迷惑を被ったことか! 酒に酔って、あなたを迎えに来た俺にまで手を出そうとする節操なしですよ!」
「えっ? そんなことがあったのか?」

 ライオルが驚いて聞き返すと、テオフィロはいやそうに咳払いをしてごまかした。

「というかあの人まだ騎馬師団にいるんですか? ルイ様が目をつけられないか心配です」
「それは大丈夫だ。俺のものだから手を出すなって言っておいた」
「ほー? それで恋人にどうぞって媚薬をもらったんですか?」

 ライオルはすっと目をそらした。テオフィロはこれ見よがしにため息をついた。

「あなたはリーゲンスじゃ八つ裂きものの大罪人でしょうねえ……王を誘拐したあげく手籠めにして抱き潰すなんて……」
「言うな」
「とにかくあなたはしばらくルイ様に近づかないでください。ルイ様には毎日きちんと自分のお部屋で寝てもらいます」
「従者とは思えない物言い」
「よろしいですね!」
「わかったよ……」

 ライオルが不承不承うなずくと、テオフィロは肩を怒らせて戻っていった。
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