20 / 77
第一章 ウィルとアルと図書館の守人
オレンジ色の朝
しおりを挟む
辺りがぼんやりと明るい。今の今まで意識がなかった頭が少しずつ覚醒していく。
鳥の声が聞こえた。まるで早く起きろと促されているかのように。
もう朝?
眩しい。夜が明けたのか。
「……朝っ!」
意識を取り戻し、僕は勢いよく飛び起きた。見知った僕の部屋だ。
「……アル、いや、ジークだっけ、ジークっ!」
ベッドから飛び出して部屋を出た。今の時間なら多分朝食の準備をしているはずだ。
「ジークっ!」
予想通り、ジークは厨房にいた。小さな身体をせせこましく動かして朝食の準備をしている。
「やぁ、ウィル、おはよう。もう少しゆっくり寝ていて良かったのに」
「ジーク、じゃない、アル?」
「うん。どうしたんだい? 呆然としちゃって。寝ぼけているのかい?」
僕は頭を横に振った。いつものアルだった。まだ意識がはっきりしないけど。やっぱり寝惚けているのかな。
「朝食の準備はもうすぐ終わるから、冷たい水で顔を洗っておいで。目が覚めるよ」
「うん、あり、がと」
僕の礼の言葉にアルは肩を竦めて笑顔で応えてくれた。
いつもの光景だった。僕は朝の支度をするアルの後ろ姿を少しの間見つめた後、顔を洗おうと洗面所に向かった。
蛇口を捻ると大量の水が止め処なく流れた。当たり前だけど。
今の季節、水はひんやりと冷たい。だけどそれが良かった。寝惚けた頭には丁度いいから。
パシャパシャと大量の水で顔を洗い引き締める。
「……冷たい」
タオルで余分な水分をふき取りながら鏡に映った自分と目が合った。そしてそのとき僕は昨夜の出来事を思い出してしまって……膝から崩れ落ちると鏡から僕の姿が消えた。
昨夜の僕は、僕じゃないような声を上げて、もがいて、でも凄く気持ちよくて頭が麻痺してアル、ジークにされるがままにその大きな手と口の中でイってしまった。
それはもう盛大に、勢いよく。
あのあとの記憶が一切ないけど朝起きた時、僕の体は隅々まで綺麗に整えられていた。ジークが後処理をしてくれたんだろう。そういう奴だから。
最後まで、僕の性処理まで。
「~~っ!」
僕は声にならない声で叫んだ。
今なら昨夜の意味を理解できる。嫌でもできる。僕だって男なんだし、当然のことながらそういう知識はもちろんある。ただ、十八にもなってまだ経験がないというだけで……。
昨夜は調子が悪くて意識も朦朧としていたしそんな状態であんな流れになるなんて思いもしなかったから混乱して、ジークに言われるがまま足を開い、て……っ!
「……今日の僕はグダグダだ、絶対」
僕は深いため息を吐いた。
いつまでも戻らないとアルが心配するといけない。
僕はひとまず落ち着くとリビングに足を向けた。仄かにパンの焼ける香ばしい香りが鼻をくすぐった。
お腹が鳴った。
「……今朝のアルはいつもどおりだったし、大丈夫。平常心、平常心だ」
僕はそう言い聞かせながら食欲という本能の赴くままに行動した。
リビングに入るとすでに朝食の用意を整っていて、アルは最後の仕上げと皿にスープを盛り付けているところだった。
「やあ、今、丁度呼びに行こうと思っていたところだよ。さあ、座って」
「う、うん」
平常心だ、ウィル。
大丈夫、大丈夫。
そう内心で祈るように言い聞かせ席についた。
「わぁ、おいしそう。いただきまーす!」
若干ぎこちない気もしたけど気にせずに目の前の料理に集中する。
湯気の立つスープに出来たての数種類のパン、ハムに目玉やきにチーズといった朝食を堪能する。いつのまにか僕の頭の中は食べるのに必死で昨夜の記憶は少しずつどうでもいいように思えてきていた。
「ところでウィル」
「ん? はに?」
口いっぱいにパンを頬張ってしまっていたからそんな返事しか出来なかった。
「身体の調子はどうだい?」
僕は危うく口に入っていたものを噴出しそうになったけど、なんとか堪えた。
「なっ、えっ? か、身体って?」
「ほら、身体が火照って仕方なかったって、昨夜のウィルは可愛かったなぁ。私の手と口で盛大にイってくれて、とても嬉しかったよ」
「なっ、なっ、なっ!」
「何って忘れたのかい? オナニーを手伝っただろ? やっぱり初めてだったんだね。こういう場合、お祝いとかした方がいいのかな? どうしようか? んー、ん? どうしたんだいウィル、顔が真っ赤だよ? まさか、まだ熱があるのかい?!」
「~~アルの大馬鹿野郎ぉぉっ! 大ッッ嫌いっ~!」
「えぇ~?! え? ど、な、なんでだい?!」
大人はズルい、残酷だ。
その日は一日、アルとは口を聞いてやらないと心に決めた朝の出来事。
鳥の声が聞こえた。まるで早く起きろと促されているかのように。
もう朝?
眩しい。夜が明けたのか。
「……朝っ!」
意識を取り戻し、僕は勢いよく飛び起きた。見知った僕の部屋だ。
「……アル、いや、ジークだっけ、ジークっ!」
ベッドから飛び出して部屋を出た。今の時間なら多分朝食の準備をしているはずだ。
「ジークっ!」
予想通り、ジークは厨房にいた。小さな身体をせせこましく動かして朝食の準備をしている。
「やぁ、ウィル、おはよう。もう少しゆっくり寝ていて良かったのに」
「ジーク、じゃない、アル?」
「うん。どうしたんだい? 呆然としちゃって。寝ぼけているのかい?」
僕は頭を横に振った。いつものアルだった。まだ意識がはっきりしないけど。やっぱり寝惚けているのかな。
「朝食の準備はもうすぐ終わるから、冷たい水で顔を洗っておいで。目が覚めるよ」
「うん、あり、がと」
僕の礼の言葉にアルは肩を竦めて笑顔で応えてくれた。
いつもの光景だった。僕は朝の支度をするアルの後ろ姿を少しの間見つめた後、顔を洗おうと洗面所に向かった。
蛇口を捻ると大量の水が止め処なく流れた。当たり前だけど。
今の季節、水はひんやりと冷たい。だけどそれが良かった。寝惚けた頭には丁度いいから。
パシャパシャと大量の水で顔を洗い引き締める。
「……冷たい」
タオルで余分な水分をふき取りながら鏡に映った自分と目が合った。そしてそのとき僕は昨夜の出来事を思い出してしまって……膝から崩れ落ちると鏡から僕の姿が消えた。
昨夜の僕は、僕じゃないような声を上げて、もがいて、でも凄く気持ちよくて頭が麻痺してアル、ジークにされるがままにその大きな手と口の中でイってしまった。
それはもう盛大に、勢いよく。
あのあとの記憶が一切ないけど朝起きた時、僕の体は隅々まで綺麗に整えられていた。ジークが後処理をしてくれたんだろう。そういう奴だから。
最後まで、僕の性処理まで。
「~~っ!」
僕は声にならない声で叫んだ。
今なら昨夜の意味を理解できる。嫌でもできる。僕だって男なんだし、当然のことながらそういう知識はもちろんある。ただ、十八にもなってまだ経験がないというだけで……。
昨夜は調子が悪くて意識も朦朧としていたしそんな状態であんな流れになるなんて思いもしなかったから混乱して、ジークに言われるがまま足を開い、て……っ!
「……今日の僕はグダグダだ、絶対」
僕は深いため息を吐いた。
いつまでも戻らないとアルが心配するといけない。
僕はひとまず落ち着くとリビングに足を向けた。仄かにパンの焼ける香ばしい香りが鼻をくすぐった。
お腹が鳴った。
「……今朝のアルはいつもどおりだったし、大丈夫。平常心、平常心だ」
僕はそう言い聞かせながら食欲という本能の赴くままに行動した。
リビングに入るとすでに朝食の用意を整っていて、アルは最後の仕上げと皿にスープを盛り付けているところだった。
「やあ、今、丁度呼びに行こうと思っていたところだよ。さあ、座って」
「う、うん」
平常心だ、ウィル。
大丈夫、大丈夫。
そう内心で祈るように言い聞かせ席についた。
「わぁ、おいしそう。いただきまーす!」
若干ぎこちない気もしたけど気にせずに目の前の料理に集中する。
湯気の立つスープに出来たての数種類のパン、ハムに目玉やきにチーズといった朝食を堪能する。いつのまにか僕の頭の中は食べるのに必死で昨夜の記憶は少しずつどうでもいいように思えてきていた。
「ところでウィル」
「ん? はに?」
口いっぱいにパンを頬張ってしまっていたからそんな返事しか出来なかった。
「身体の調子はどうだい?」
僕は危うく口に入っていたものを噴出しそうになったけど、なんとか堪えた。
「なっ、えっ? か、身体って?」
「ほら、身体が火照って仕方なかったって、昨夜のウィルは可愛かったなぁ。私の手と口で盛大にイってくれて、とても嬉しかったよ」
「なっ、なっ、なっ!」
「何って忘れたのかい? オナニーを手伝っただろ? やっぱり初めてだったんだね。こういう場合、お祝いとかした方がいいのかな? どうしようか? んー、ん? どうしたんだいウィル、顔が真っ赤だよ? まさか、まだ熱があるのかい?!」
「~~アルの大馬鹿野郎ぉぉっ! 大ッッ嫌いっ~!」
「えぇ~?! え? ど、な、なんでだい?!」
大人はズルい、残酷だ。
その日は一日、アルとは口を聞いてやらないと心に決めた朝の出来事。
0
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる