ウィルとアルと図書館の守人

凪 紅葉

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第二章 ウィルとアルと山頂に棲む竜

守りたい人のために

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「君のその執念はやはり、守りたい人のため、なのかな」

 俺はすぐに応えることが出来なかった。ウィルを守りたい。それもあるが、さっきのあれは……。
 言葉にはしなかったものの、その沈黙が肯定受け取られたのだろう。師匠は笑みを深め、今度は真剣な表情で話を続けた。

「確かに、それは君にとって大きな力になる。しかし同時に君の唯一の弱点とも言えるね」
「力が弱点にですか?」
「力というより、想いの絆と言ったほうがしっくりくるでしょう。もし万が一、それを失うことになれば、君は二度と、剣は振るえなくなるかもしれないとね。あとはそうだね、君は力に飲み込まれてしまいがちだ。まあ、無理もないだろう。剣を握るのも切りつけるのも始めて経験ですからね。それらを踏まえて乗り越えることができたとき、君は今以上に強くなるでしょう。覚えておくといいですよ」

 俺がウィルに対する想いを失う、もしくは逆も然り、そんなことは有り得ないと断言してもいいが、もし万が一そんなことがあれば……。自分はどうなってしまうのだろう。自問自答するが、今は答えが出せない。だって俺は、こうも簡単にマナという力に飲み込まれてしまったから。
 俯いて黙ってしまった俺に師匠はあたふたと慌てて、弁解をしようと口をパクパクさせる。

「す、すみません。変なことを言いましたね。でもねレズリー、弱点は自分で知っておいて損はないはずです。そうならないように、努力することも、対処することもできますから。君は無限の可能性を秘めているということなのですから」
「はい。辿りつく先は自分自身の行動で左右される。そういうことですねよね、師匠」
「そういうことです。期待していますよ、レズリー」
「師匠、ありがとうございます!」

 ホッと胸を撫で下ろす師匠を見て、俺は微笑を零した。
 自分自身の力で切り開く術(すべ)を見つける。それはきっと、思っている以上に大変で、過酷だろうと考える。それでも今、自分にできることがはっきりしたことだけは確かだ。あとはその先の高みに向かって、只がむしゃらに突き進むだけだ。
 新たな目標に、俺は拳を強く握った。

「さて。レズリー、君は本当に優秀な人です。この短期間で、よくここまで成長することが出来ましたね。正直、途中で根を上げるとばかり思っていたのですが……予想以上の高評価です。もはや、私が教えることは何もないです。あとは……」

 一呼吸して、師匠は俺に背を向ける。俺は黙って師匠の逞しいけれど細い背中を見つめて、次の言葉を待った。

「君には最終試験に挑んでいただきます。ですがこの最終試験は、生半可な気持ちで挑めば、命を落としますよ」

 ぴしゃりと言い放たれた師匠の言葉に、その場の空気が一瞬にして冷たくなったように感じられた。
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