くず異世界勇者~こんなくそ世界でも勇者してやるよ~

和紗かをる

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第6章 戦力が少ない方が防衛作戦をする時は、殴られる前に殴るが正解だよな

6-2

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「うん?なんか踏んだか・・・」
 近距離の転移を使い、停戦交渉の為に相手の本拠地まで来たつもりだったが、闇の中にかがり火が灯る砦近くに転移して着地する際に、何か柔らかい物を踏みつけてしまった。
 ぐにぐにと気持ち悪い。
 粘着質な魔物でも居たのかと思って足元を見ると、真っ黒なローブにくるまれた豚の魔物が居た。
「おいおい、ちょっと不用心じゃないか?いくら負け戦の夜だからって生き消沈にもほどがあるだろう、寝床の近くで豚の魔物を徘徊させるとか、本当に騎士団か?」
「仕方ありませんわ勇者様、所詮彼らは勇者様に刃を向ける程度の知識しか持ち合わせていませんもの、偶像の見えない神とやらを信仰し、見えて喋れて触れる勇者様を信仰しないのです者たちですもの」
「ちょっと、盲信が怖いんですけど姉姫様、彼等も人間、俺たちも人間、オーケー?」
「?ええっと、オーケーですわ・・・」
 まったく、交渉役として姉姫様を肩車してきたが、ちょっとこの性格が怖い。
 一途と言えば聞こえはいいが、姉姫様こそ狂信者じゃないか?ご神体がおれってのも微妙だし。神様に祭り上げられるような趣味は無いんだがな~
「ええい、人を足蹴にしていつまでくっちゃべっておるか!神官でありこの地方の長たる我に暴力を働いて無事で済むとは思っておるまいな!」
「え、なんか豚が喋った・・・」
「ええ、大変珍しいことですけれど、この豚は喋るようですわね」
 魔物も進化すると喋る様になるんだろうか?そうなると亜人種ってのが居たら、そいつらは元は魔物出なのかもしれない。
こっちの世界では、家畜以外所謂野生動物と言う存在は絶滅しているらしい。森に魔物が跋扈していたら、ただの動物でしかない鹿や猪は長くは生きていけないだろう。肉食動物だって同じだ。狩るべき相手が、自分より強い魔物だったら、勝負にならず飢え死にしてしまう。
そんなわけでこの世界には、元の世界にいた様な動物は姿を消すことになる、生き残った動物は、魔物と渡り合う力を持った人間と折り合いをつけて生存した家畜たちだけと言う事らしい。
つまり野生の豚なんてものは存在せず、この喋る豚も魔物の一種って結論には変わりはない訳だが、それでも喋る豚と言うのは甚だ珍しい。
 だが、この豚にはある種もとの世界の豚が持っていた愛嬌の様な物がない。これでは見世物小屋の親父も買い叩いてくるかもしれん。
「だれが豚じゃ!我は神官と言っておるだろうが!どうせ辺境の物も知らぬ底辺の濃度か何かであろう、とっとと神に許しを請い、我にその命を捧げるが良いぞ」
「なぁ姉姫様」
「何ですか勇者様」
「なんかうるさいし、黙らせても良いよなぁ?」
「もちろんです勇者様、うるさい豚なぞに係わっている方が間違いなのですよ、大体勇者様がせっかく足を運んだと言うのに、出迎えもないなんて不敬ですわ、なんなら豚だけと言わず
このあたり一帯を黙らせた方がよろしいかと思いますわ」
 なんか、両手を胸の前で組んで、くるくると踊り出しそうな雰囲気で姉姫様がご機嫌だ。
 ちょっと姉姫様よ、一応俺らは停戦交渉に来たのであって、この辺りを焦土に変えに来たわけじゃないんだけど、そこのところは覚えていないのかな?
 めんどくさくなったらそれも選択肢の1つだけど、一応な、意味のない人殺しは避けておきたいんだ。避けようとして、誰か、身内側に被害が出れば、話は別だが。
「まっいっか、とりあえず豚は黙らせておこう、よっ」
 足元でじたばたする豚の腹に、軽くつま先を食い込ませる。おお~柔らかい。
 この豚は良く肥えているな。脂肪付き過ぎで旨くはないかもしれない。
「ぐぅえっ」
「さて静かになったわけだが姉姫様よ、交渉するには偉いやつが居そうな場所を探さなきゃいけないわけだが、この砦で偉そうなやつが居そうなのは何処になる?」
「偉そうなやつですか、そうですわね、ちょっとそこの従僕、わたくしたちを案内しなさいな、恐れ多くも勇者様がお話をしに来たのですよ、平身低頭して一列に並んで出迎えない不届きを偉そうなお方に説教させていただきますわ」
 豚を弄んでいた間に、鎧を来ていない男がこちらを見ていた。戦時に合って自身の陣地であっても騎士であれば簡易鎧くらいは創部している物だから、この男は姉姫様が指摘した通り従僕だろう。騎士も武士も一人では戦えない。鎌倉武士が元を迎え撃った時には、武士1人につき最低でも5人の従者が居たとされる、主人が倒した相手の武士の首を狩ろ持ち歩いたり、損傷した武具の代わりを持って居たり、故郷でっている武士の家族へ知らせを送るために記録するものなど。様々な従者が居た。
 なら騎士にも多数の従僕が必要で、この男がここに居るのは不思議じゃない。そう豚型喋る珍しい魔物が徘徊するよりははるかにだ。
「えっ、あっ、貴方は?その、だれでしょうか?」
 篝火の薄い明るさで、この男が若いことが判った。戦闘の経験も少なく、まさかさっきまで自分たちの騎士を倒した男が俺とは気づいていない。
 敵が堂々と2人だけで陣内にいるなんて、普通は想像しないだろうからな。
「おいおい、もとからこの世界ってのは魔物や魔族ばかり相手で、相手が搦め手を使うって事を考えてないんじゃないか?もし俺が暗殺者とかで、こっそり偉い奴を毒殺しようとしていたらどうするつもりなんだ?もっと警戒する事を覚えて方が良いんじゃないか?」「そうですわ!勇者様のお言葉しっかりと胸に刻みつける事ね、せっかく勇者様が直接教えをお伝えしているのですから」
 姉姫様が未だこっちを向いてボケっとしている従僕の側により、頭をポンポンしている。幼子に物を教えているみたいな行為だが、どちらかと言うと十代半ばの小娘である姉姫様よりも、この従僕のが年上に見える。
「その辺りで勘弁してくれないかな、彼はまだまだ新人ではあるがそれでも大事な仲間で、将来を期待しても良い位にはよきところもあるのだからな」
ポンポンしている姉姫様の背後に2人の男が追加される。
 まったくこっちは見た目だけならば美少女を連れてきてやってるってのに、出てくるのが豚とか従僕とか、おっさん2人とか、ちょっと躾がなっていないんじゃないか騎士団。
 賓客を元成す場合は酒に、美人なお姉さんが定番だろうに。この砦、後で除菌消臭が必要かもな。男くささが染みついたら、いざと言うときに籠城したくなくなるぜ。
「おやまぁ、こちらからお伺いする手間が省けましたわ騎士団長殿、早速ですが、皆様方総じて勇者様にひれ伏して、先ほどの諍いについて泣いて謝罪をし、頭を返して来た道を戻ると言うのならば、恐れ多くも我が勇者様がお見逃ししますわ、いかがいたします?」
にっこりと笑顔で宣言する姉姫様。
あっれ~?俺も大概、初対面の人との会話とか苦手だし、ビジネスでの駆け引きとかも平凡で、後輩から失笑を買うレベルだったけど、姉姫様のこれって交渉なのか?ただの脅しとか、要約して宣戦布告とか言わないか。
 さっきから何度か言っているんだが、喧嘩を売りに来たんじゃないだけどな。
「確かに無益な諍いについては謝罪もしよう、だが、来た道を戻るわけにはいかぬ、そちらが勇者様だと言うのならば猶更、彼女の事についても聞いておきたいことが山ほどある、そちらが戦いを望んでいないと言うのならば、まずは話し合いといこうではないかな?」
 あれれ~?これでいいの?なんかちゃんと交渉っぽくなってる?判らんわこの世界。
 笑顔の下に刃を隠してって感じじゃなく、むしろ刃を突き付けながら、笑顔で喧嘩を売った様にしか感じられなかったんだが。
「いいでしょう、どんなおもてなしをいただけるか楽しみですわ、夜分に訪れたこちらも些か礼を外しておりますし、過度な期待はせずにお招きにあずかりましょう、勇者様それでよろしいでしょうか?」
「あ、うん」
 とりあえず、交渉は姉姫様に任した方がよさそうだ。俺の予測ではこの場についていきなり戦闘って展開も覚悟はしていたが、話し合いになるならば進展と言えるだろう。
 多分な・・・。
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