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第1章 人魚すくいのおかしな屋台
第6話 きみを呼ぶ声が聴こえるかい?
しおりを挟む「……どういうことかしら? 他にも何か条件が?」
「そう。条件を満たした人にしか、『人魚すくい』の挑戦権は発生しないんだ」
その問いに答えたのは、レインではなくミコトだった。
「成功率は100%だ。……ヒヒッ。参加権と言い換えてもいいかもしれないね……」
それに続いて、レインが独り言のように呟いた。
(『失敗しても、ひとつは持ち帰らせてもらえる』ということでいいのかしら。儲け度外視というのは、本当みたいね。でも、今気になるのは――――)
案理は若干の疎外感をおぼえつつ、レインを見つめ続けた。
「昔こそ、お代を払えば誰でも挑戦出来たけどねえ。だけど、それじゃあ、いけなかった。……だあれも幸せになんてなれなかった……。だから、条件をつけたってわけさ。それが…………今から何年前になるのかね」
レインは徐にヨーヨーをひとつ手に取り、慈しむように撫でた。
「…………その条件というのは?」
カバードポーチが特徴的な家は、きちんと玄関扉が閉まっているにもかかわらず、案理の目には来客を待ち侘びているように感じられた。
「耳を澄ませてみて、案理。何か声が聴こえないかな?」
沈黙を破ったのは、涼やかなハスキーボイスだった。
「声? 今だって色んな音と声が聞こえていて、耳栓をしたいくらいなのだけれど」
祭り会場はふたりが到着したときよりも混雑しており、様々な音が重なり合っている。ゆえに、互いの声を聞き取るので精一杯だ。
「本当に?」
「……まあ、そうだねえ。今年は本当に賑やかだ。聴こえるはずのものが聴こえないのは、もったいない……。どれ、ちょいと手助けしてやろう」
レインは指輪で重そうな指をパチンと鳴らした。その手にはもうヨーヨーはない。
「これでどうだい?」
「…………」
案理は素直に耳を澄ませたが、プールのあとに水が入ってしまったときのように、喧噪が遠くに響くばかりだった。
自分だけ膜を隔てた別世界に飛ばされてしまったようで恐ろしかったのは事実だが、彼女はそんなことに構っている場合ではなかった。
(何も聴こえない。残念だけど、私には資格がなかったのね……)
案理の耳にはっきりと誰かの声が聴こえたのは、それを伝えようとしたときだった。
『ここです。僕はここです……。どうか見つけて。あなたの手ですくって……』
「!?」
案理が息を呑んだのを見ると、レインは満足したように目を細め、再び指を鳴らした。
「き……聴こえた! 聴こえたわ! 『ここです』って、『見つけて』って…………! でも、この声はどこから……?」
すると、こもっていた音は一気に解放され、喧噪が戻る。
「よかったね。きみにもすくう資格があったみたいだ」
そう言ったミコトの視線は、案理ではなくレインに向けられていた。
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