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第2章 【すくった人魚のもどしかた】
第5話 消えたもの
しおりを挟む「え? そうかしら。私としては、もう少し差がないほうがいいんじゃないかと思うけれど…………」
しかし、ミコトとの身長差こそがベストだと信じて疑わない案理は、控えめに異を唱えた。
「手を繋いで歩く想定なら、貴女の言う通り、もう少し差がないほうがいいのかもしれません。でも、ベッドの上ではいい感じだと思います。僕たちくらいの身長差って」
「まあ」
青年が浴槽から上がる際に水が溢れ、案理の素足を濡らしていった。
「あなた、元は人魚さんでしょう? 俗っぽい知識もお持ちなのね?」
水の冷たさと青年の開けっ広げな物言いにたじろぎながらも、案理は平常心を装って問いかけた。彼が距離を詰めたので、彼女は彼を見上げなくてはならなくなっていた。
「…………。人魚も人間と同じで有性生殖を行う生き物ですからね。熱烈な視線をいただいても、臨戦態勢に移行しなかったのは奇跡です」
青年はすぐには答えず、だんまりを決め込むかに思われたが、ややあって色の薄い唇を開いた。
「その報告はいらないわ……!!」
難色を示した案理だが、魅力的な女性だと言われているようで悪い気はしなかったのか、にやけた口元を押さえている。
「すみません。てっきり見て知っているものだとばかり」
「見るはずないじゃない! あなたが体格に見合ったご立派なモノをお待ちだなんて、私、知らないんだか……ら…………」
尻すぼみになっていく語尾は、案理が墓穴を掘ってしまったという動かぬ証拠だった。
「お褒めいただき、ありがとうございます。……実践での活躍も楽しみにしていてくださいね?」
青年は身を屈め、案理の耳に直接吐息を送り込んだ。
「!」
案理は後ろに飛びのき、彼と距離を取った。左腕を突き出して『それ以上近寄るな』という牽制も忘れない。
「…………そ、それよりも!」
しかし、案理には彼の状態よりも気になっていることがあった。
「なんですか?」
「ひとつ訊きたいのだけれど、アナタが入っていた水風船はどこへ行ってしまったの? 雑食動物でもないのだから、食べてしまったなんてことはないでしょう?」
壁面が白く、屋根が赤く塗られた北欧風の家が描かれている水風船がどこにも見当たらないのだ。
(手順通りにしなかったせいで……?)
彼女は手順を守らず、ヨーヨーを浴槽に浸けるのではなく、洗面器にヨーヨーの中身を空けてしまっていた。
たとえ素人目には無駄に思えたとしても、その部分こそが省いたり違えたりしてはいけないチェックポイントだったのかもしれない。
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