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第2章 【すくった人魚のもどしかた】
第10話 飴の思い出
しおりを挟む「…………あら? 透明?」
転がり出てきた飴玉の色は、案理の予想とは少々異なっていた。
「ええ。何味かは、食べてからのお楽しみです」
カナタも手の中の袋から飴玉を取り出した。こちらも案理のものと同じく、透明だった。
(たくさん種類があったヨーヨーとは違って、飴は一種類だけなのね。……パッケージもそうみたいだし。言われた通りにすぐに仕舞ったりしないで、もっとよく見ておけばよかった)
案理が目を凝らしてもカナタのほうのパッケージの細部を確認することはかなわなかったが、色使いに関しては目立った差異は見られないので、案理と同じ柄である可能性は高そうだ。
「缶の飴だと、透明はどんな味だったかしら? レモン? いえ、パイナップル?」
案理は気を取り直して、味の予想をし始めた。色は外してしまったが、こちらはある程度絞り込みが可能だ。
「缶の飴ですか? ……意外ですね」
すると、カナタがすぐさまそれに反応する。
「え?」
「案理さん、所作も言葉遣いも良家のご息女って感じですから。庶民のお菓子のこともご存知だなんて思いませんでしたよ」
「その程度、私だって――――」
馬鹿にする意図はなかったのかもしれないが、カナタの素直な感想は、『一般家庭と異なっている』として遠ざけられることの多かった案理を刺激するには十分すぎるひと言だったと言えよう。
いつも傍らにいた誰かがよく携帯していた缶から何色の飴が出てくるかで、その日一日の運勢を占うということをしていた――――。
(『黄色なら金運が、桃色なら恋愛運がいい日』――――なんて、お遊びでしかないけれど、とても楽しかった……)
おぼろげながら、案理の脳裏にはそんな記憶がよみがえってきた。
(…………いえ、そうよね。カナタさんの言う通りじゃない……。私はどうして缶の飴のことなんて知っているの……? 誰に教えてもらったんだった……?)
「どうしたんですか? いつまでも手に持ったままじゃ、溶けちゃいますよ。知ってるんだったら抵抗も少ないでしょうし、食べましょうよ。ほら……」
――――と。難しい顔で考え込む案理の口元めがけ、何かがやってきた。カナタの指――――につままれた透明な飴玉だ。
「あ……ええ、そうね。大丈夫よ。運んでもらわなくても、自分で……! そちらはあなたが召し上がって頂戴な」
一歩後退した案理は、大ぶりの飴玉を口に入れた。
「……よかった。じゃあ、僕もいただきますね」
それを見届けたカナタも、案理に続いて飴玉を自身の口に放り込んだ。
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