人魚すくい

片喰 一歌

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第3章 おかしな町のおかしな住人

第17話 紙飛行機

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「全員が同率一位になった回はどうなったの? 永遠の愛を誓う権利は、当時ここに住んでいたすべてのカップルに与えられたんでしょう? 順番はどのように決められたのかしら。そのための特別投票が行われたの? そうではなくて、主催者の側から勝手に割り振られたりしたのかしら…………」 

 記憶を辿るうちに頭痛の足音を察知した案理は、思考を別の疑問に切り替えた。

「ええっとね、みんなで同じ日の同じ時間に一斉に誓った――とかじゃなかったかなあ。前住んでた人に聞いた話だから、ほんとかどうかはわかんないけど! でも、その人結構な古株だったし、嘘吐くような人でも根拠のないゴシップを鵜吞みにしちゃうようなうっかりさんでもなかったから、あたしはそれ信じてるんだ!!」

「同じ日の同じ時間に? 確かに平等ではあるんでしょうけど――……。みなさんはそれで納得していたの?」

「あ、なるほどね? アンリちゃんはみんなが同時にさせられたんじゃないかってとこを気にしてるんだね? 優しいなぁ♪」

 マリカは町全体を覆う膜ではなく案理の腕をつついた。
 
「ちゃんと一組ずつ誓わせてもらえたんじゃない? 他の人たちは招待客みたいな感じで、かえってそれぞれ主役感味わえたかもよ?♡♡」

「確認したいのだけど、永遠の愛を誓う儀式に他の住人を招待することは出来ない……のよね。今までの話を聞く限りでは」

「そうそう。だから、次の投票でアンリちゃんたちが一位に輝いて永遠の愛を誓う権利が与えられたとしても、当日あたしがお祝いに駆け付けたりとかは出来ないんだ~。だから、もし一位になったら速攻お祝いしよーね!! 大体みんな次の日か明後日には儀式みたいな感じのハードスケになってるから!」

「せ、忙しないのね…………。それも主催者からの指定なの? そうだとしたら、苦情も出そうなものだと私は思ってしまうのだけど……」

 案理はほとんど悲鳴のような声を上げた。何を隠そう、彼女はあまりフットワークが軽いほうではないうえに、何かをするときは入念に準備をしておきたいタイプだった。

「あたしの知ってる範囲では聞いたことないな~。形式は投票だけど、実際は戦いみたいなもんだし」

「戦い?」

「うん。権利をかけた争奪戦。こんだけ人いたらソリ合わない人なんていくらでもいるし、派閥もあるみたい。あたしはそういうのめんどいからそこにも属してないし、誰々さんがどこどこの派閥らしいくらいの情報しかないけど、要はそのくらい人気の権利ってことで――」

「大体の人は一刻も早く永遠の愛を誓いたいということね。……そう急ぐものでもないのではと思うのだけど……」

「お? アンリちゃんってば、余裕だねえ♡♡ 愛されてる者特有の自信ってカンジ♡♡ でも、あたしも同感だな~。競って誓うもんでも焦って誓うもんでもないよねえ、永遠の愛なんて。……ま、儀式じゃなくてずっとずっと二人で幸せに暮らせる場所への引っ越し目当てかもしんないけどね!」

 マリカは道端に捨ててあったチラシを広げ、紙飛行機を折り始めた。

「…………あ。そういえば、そうだったわね。永遠の愛を誓う権利は愛する人と永遠に幸せに暮らせる場所へ引っ越しする権利とも言い換えることが出来る……のよね…………」

「だね! 何を目的に参加するかはみんな違うと思うけど、どっちにしても勝たないことには捕らぬ狸の皮算用でしかないんじゃない? だから、もし本気で一位狙いに行くなら『どうしたら勝てるか』について考えたほうがいいと思う」 

「ええ。私もそのために情報を収集して――……。マリカさんのお話を聞いているだけだけれど……。頼ってばかりでごめんなさいね」

「いいのいいの! あたしは話す相手が出来て嬉しい、アンリちゃんは情報ゲット出来て対策練れる。これぞの関係っしょ♪」

 完成した紙飛行機を右手に構えたマリカは、遠くに照準を定めて振りかぶった。

「それを言うならウィンウィンね。……ふふふふっ。マリカさんと話していると元気が出るわ」

 紙飛行機は飛ばされてすぐ膜にぶつかって落ちてしまったが、案理の気持ちは晴れ晴れとしていた。
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