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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CCCLXXVII>
しおりを挟む「『異国の地で愛に殉じる年若い夫婦』なんて、奴らにとっては恰好の餌だろうからね。あることないこと並べ立てて、ここぞとばかりに持て囃してくれると思うよ……。そういうの、いつの世も大衆受けがいいものだしね?」
彼はにこやかに言ってのけたけれど、そこには確かな侮蔑と嫌悪が滲んでいた。
「死んでも、ずっと……あなたと一緒に生きられる……?」
声に出してみたはいいけれど、拭いきれない違和感がある。
わたしの望みは、本当にそんなことで叶られるものなの?
「…………ああ。もちろん概念的な話ではあるし、叶わない確率のほうが高いリスキーな賭けにはなるけどね? ヒトが生きている限り、物語は類型に沿って量産され続ける。そんななかで生き抜くのは簡単なことじゃない。たくさんの似たような新しい物語たちに押しやられて、あっという間に誰の記憶からも消えるかもね」
心中プランナーにジョブチェンジしてしまった彼の背中に爪を立てたけれど、その行動にどんな想いと願いが込められているのかは自分にもよくわかっていなかった。
「でもさ、もし俺たちが物語のなかの登場人物として後世に語り継がれることになったら……。まさに『泥中の蓮』だと思わない?」
爪が食い込みすぎたのか、彼は鼻に皺を寄せたけれど、ものの数秒でシンメトリーの美貌に元通り。
わたしを現世に引き留めておきたいのだとばかり思っていたけれど、話しているうちに気が変わってしまったのだろうか。
わたしはふとした瞬間に湧き起こる希死念慮とようやく決別できたかと思っていたのに、こんなところでわたしたちはすれ違ってしまうの?
鼻の奥がつんとして、彼の意向に従ってしまおうかと考え始めた、まさにそのとき。
「…………だけど、それを知る手段がないのが残念だね?」
という言葉で、はっと我に返った。
さんざん『死ぬことで、わたしたちの愛を永遠のものとして生き永らえさせる計画』について説いていたくせに、やはり彼自身はそれを望んではいないらしい。
しかし、揺れる瞳が物語っているのは、現世への未練などではなく、こんなときでも生涯の伴侶への尽きせぬ愛のみで。
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