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Mistake
Mistake【28】
「ああ、そういうのもあるね?♡ あっちは『空の高さ』だったり『空の深さ』だったり色んなパターンあって大喜利化しちゃってるとこありそうだけど、こっちは原典から残ってるやつだったと思うよ♡♡ 最初の部分だけクローズアップされて有名になっちゃってるだけ♡」
手持ち無沙汰なのか、はたまた萎えさせないようにという涙ぐましい努力か、響の右手は時折竿を扱いている。その動きは妙にこなれていた。
「あっそ。……それはわかったけど、この話いつまで続けるの? ここは教室でもなければ国語の授業でもないし、響とあたしは教師と生徒でもないと思うんだけど?」
「教師と生徒かぁ♡♡ ……考えてみれば、僕たちってちょうど教育実習生と教え子ぐらいの年の差だよね♡♡ 月ヶ瀬さん?♡」
ネクタイを外し、股間を丸出しにした状態で教師のロールプレイを始めた響は間違いなく滑稽だ。
(……想像つきすぎる♡♡ 女子生徒に囲まれて連日質問攻めの天道先生……。あたしはどうせ陰から見てる事しか出来ないでしょうけど)
しかし、響に骨抜きにされてしまっているあたしは、遠い昔に一度や二度程度呼ばれたかもしれない名前で呼ばれた途端、不快感に近い違和感か、あるいは違和感に擬態した興奮のせいで肌が粟立った。
「…………だからなんだっての?♡ あたし、教え子と恋愛関係に発展する教師は一律で軽蔑してるわよ。男も女も。……話に聞いてるケースはほとんど男の教師だけど。卒業するまで手出さないパターンも『だから何?』としか思わないからね。真面目に生徒と向き合って真面目に指導してたら、教え子は教え子にしか見えなくて当たり前でしょ。恋愛感情募らせる――までは仕方ない事だとしても、実際に行動起こしちゃうのは違うでしょ。アウトもアウト、生徒の年齢によってはペド、何歳だろうと子どもは子ども。教師側は犯罪者。異常だしキモいし美談とか胸きゅんエピソードとして消費されてんのもやっぱり不気味だし恐怖。無理!」
「ふふふっ♡ 奏はやっぱり真面目だねぇ♡♡ ……教師と生徒としてじゃなくて普通に出会えてて良かった~♡」
「何言ってんの。響もあたしもそもそも教師になろうなんて一度も考えた事ないタイプの人間でしょ……じゃなくて、ですよね? ――――天道さん?♡」
「まぁね♡ 月ヶ瀬先生の言う通り、候補にも上がらなかったなぁ。学校は普通に楽しかったけど、学生時代でお腹いっぱい。お昼自動的に給食かお弁当になっちゃうのも嫌だし。お昼は絶対外に食べに行ってリフレッシュしたいもん。……奥さんが愛妻弁当作ってくれるなら、毎日喜んで食べるけど♡♡」
(愛妻弁当の詳細聞きたいけど、聞いたら響の思う壺な気がする……! そうでなくてもこっちは結婚したあとの妄想が湧いて湧いて困ってるってのに……♡♡ 抑えて、ここは抑えるのよ奏…………! 今じゃなくたって聞けるじゃない、その程度の事なら!)
「奏?♡♡」
子犬の皮を被った狼で教師のロールプレイに勤しんでいた変態こと響は、ようやくいつものようにあたしを呼んだ。
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