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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【表】
第13話『エンターテイナーの鑑?』
しおりを挟む「エンターテイナーの鑑だね」
「そうかい。…………そうだな。最初は自分に言い聞かせてただけだが、確かにそのうち実感も伴ってきた。形を先に作っとくってのは、何にでも使えるライフハックかもなァ……」
曲げていた身体を伸ばしたおにーさんは、あたしの隣に掛けてきた。
「ところでさ、チュートリアル的な何かはないの? こんな空間があって飲み物まで用意されるってことは、演目に移る前……てか場所を移る前に、かな? 観覧上の注意か何かをおにーさんか他のスタッフさんが話してくれるってことかな~って思ってたんだけど」
三十センチほど空けているのは、あたしとカノジョさんに対する誠意の表れには違いないとは思うが、彼はまだ仕事中のはずだ。他のスタッフがいないとはいえ、サボタージュとは如何なものか。
「応よ。ここはそのための空間だ。……けどな、うちのサーカスは体験型だ。座席に座っておとなしく演目を見てるだけで、疲れきった大人が癒されるか?」
「やー、無理だろうね。映画鑑賞とか観劇とかが趣味の人を否定したいとかじゃないけどさ、座ってぼーっと見てるだけより、カラオケなりジムなり行って声出したり身体動かしたりしたほうがすっきりするもん! 自分で時間決められるってのも大きいのかな?」
首を横に振ったら、おにーさんが満足そうに頷いた。
「そうさ。オレが説明するまでもなかったみたいだなァ。人間ってのは、年を重ねるごとに注文が増える厄介な生き物だ。徐々に化け物になってくのさ。自戒出来る稀有な奴は最期まで人間のままだけどなァ……」
「ああ……。なんかわかるかも。子どもの頃は楽しめてたものもさ、変なところでつっかえて楽しめなくなっちゃったりするよね。あの頃の純粋さは二度と戻ってこないんだなって感じする。成長した証拠なんだとしてもさ、寂しいよね…………って、ちっがーう!!」
と拳を握り締め――ようとして、手の中の瓶のことを思い出した。
「おにーさんと話すのは楽しいよ? イケメンだし、話面白いし。でも、あたしは蛇が好きなの! 人間のオトコとはひと通り遊んできて見事に飽きたし(?)、蛇人間だっていう白夜さんに早く会いたくて会いたくて震えてるわけ!! だから、説明とか諸注意とかあるんだったら、ちゃっちゃと話してほしいなって!」
安心して飲めるように、わざわざ目の前で開けてくれた厚意を無駄にしたくない。冷たくていちばん美味しいうちにいただこう。
飲み口に口をつけ、押し寄せる黒い波を口の中でいなした。
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