Temptation Invitation

片喰 一歌

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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【宵】

第89話『祝いの品は◎◎◎◎◎』

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「今の演出がお礼…………?」

 驚いたのは白夜も同じだったようで、爆発音がした次の瞬間にはあたしの頭部を抱き込んでガードしてくれていた。今のはガードを解いた彼の第一声だ。

「わたしはそこまでケチではないさ。金なら生きているだけで湧いてくるし、くだらん名目ぜいきんでごっそり持っていかれるくらいなら、我が団の仲間ファミリーに還元してやりたい。そのほうが有意義だろう。血税で私腹を肥やすことしか頭にない連中が政治の中枢にのさばっている限りはな……」

 肺の中を空っぽにするように長く息を吐き出した団長は、その息に積年の殺意や怨恨を載せていたのかもしれない。
 
「……このスモーク、目眩ましには最適だが、引くのが遅いな……。仕方ない、消えてもらおう。ご苦労だった」

 秘密を知ってしまった無関係な市民の口を封じるかのごとく殺伐とした発言とともに、指を鳴らす音が響いた。スモークが立ち込める前まで鏡があった場所には、二つの小さな箱――ジュエリーボックス――が支えもなしに浮かんでいた。

「ペアリング……?」

 二枚貝のように同時に開いたジュエリーボックスの中央には、シンプルながらも存在感のある指輪が嵌め込まれていた。箱の形状からしてアクセサリー以外の中身ものが出てくることは考えにくかったが――――。
 
(なんでこんなものを? ……新品なのは間違いないと思うけど、箱に被った埃を払い除けたみたいな跡がある。服より先に用意してたんだろうなぁ……。サイズなんて魔法で簡単にいじくれるだろうし)

 ベルベットらしき素材(パッと見ではベロアかと思ったが、先ほどの話を聞くに団長は出費を惜しまない性格のようだし、ベルベットと見ていいだろう)の表面に注視すると、色の濃淡が均一ではなく、毛の流れが右上から左下に向かっているのがわかった。

「ああ、そうだ。とでも思ってくれればいい。中身は検めてもらったから、箱は閉じておく。わたしが言うと恩着せがましくなってしまうが、そこそこ値の張る品だし、厳重に取り扱っておいて損はない。所有者のおまえ達が破損させたりする分には構わんが、贈り主のわたしが破壊するわけにはいかないだろう。開封はあとで適当にしてくれ。交換するのもいいかもしれないな、結婚式でやるだろう。あんな感じで」

 ぱこん、という音をさせて閉まった箱は、ベッドの上に着地した。

「ありがとう、団長」

「あ……ありがとうございます!」

「礼には及ばん。気に入らなければ換金してもらっても構わないぞ。安く買い叩かれてもまとまった金が出来るだろうから、それを元手に新しい指輪ものを買うなり遊興費にするなり好きにしろ」

 白夜に倣って感謝を示すと、団長は得意気に顔を綻ばせた。

「そんなことしませんって!! めちゃくちゃ嬉しいし、あたしじゃこんなセンスいいの選べないし! ……けど、どうしてここまでしてくれるんですか? 『』って……?」

 彼女の細長い鼻の穴やエラ張り気味の直線的なフェイスラインを見上げながら、疑問を口にした。
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