乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ

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第六話 ベニー&クロイド

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 フェス当日を迎え、僕たちは港の屋外のイベント会場に来ていた。

 「いよいよですね、なんか緊張してきたなぁ」

 「大丈夫よ。この日の為に、ムンちゃんほんとよく頑張ったんだから!」

 
 思い返せばそうだ。
 
 セーラー服を着させられ、ブルマを履かされ、晴れの日も雨の日も登り棒を何往復もして慣れない歌やダンスを練習し、こんなに努力したことはないかもしれない。
 
 最初は嫌々やっていたが、その日々は結構楽しいものだった。
 
 やれるだけやってみよう。
 
 いつしかそういう気持ちが湧いていた。
 
 
 会場の端の方で準備をしていると、遠くから見覚えのある顔が近づいてきた。

 「のこのこ馬鹿面下げてやってきたのね」
 
 ベニー&クロイドの紅とクロだった。
 
 来るなり挨拶代わりに紅がまた挑発してきた。

 「あなたこそ逃げずに来ただけでも褒めてあげるわ」
 
 タオもすかさず応酬する。

 「まぁ記念すべき第1回目の大会に優勝する私たちと、同じ舞台に立てるだけでも良い記念になるんじゃない?」

 「冗談言わないで!このあと惨敗してひぃひぃ泣き喚いて干からびないように、今のうち水分取っときなさいよ!」
 
 出会うなり蔑みあう二人に他のメンバーはちょっと困り顔だった。

 「あの二人なにかあったの?」
 
 二人の罵りあいを不思議に思いシオンが聞いてきた。

 「ま、ちょっと色々ありまして……」
 
 
 会場に来てみてわかったが、今日は別のイベントも開催されていて、どうやらメインはキッチンカーの出店イベントらしく、この広い敷地の中に様々なキッチンカーが並び多くの人で賑わっていた。

 一方僕たちが参加するアイドルフェスの会場というと、敷地の隅っこに申し訳程度に設置され、肝心のお客さんはまばらで、見に来ている人たちもほぼ身内なんじゃないだろうかと推測された。

 
 この大会には9組のアイドルが出場していて、タオさんは出場権を見事手にしたと言っていたが、どれだけの応募があったかも知らないし、そもそもの出場枠もよくわかってない。

 もしかしたら9組しか応募がなかったのではないか、そう思ってしまうほどの客の入り具合だった。
 
 素人が作ったような完成度の低いフライヤーには、その9組のアイドル名が出場順に並んでいた。
 
 僕たち乙じぇねは7組目、対するベニクロ達はなんと1組目だった。
 
 そして、当日聞かされたが、音響チェックこそあるものの、リハーサルなどなく1発勝負でパフォーマンスしなくてはならないのを知った。
 
 1組に与えられる曲数は2曲のみ。
 
 失敗は許されない。
 
 各組はそれぞれ衣装を直したり、打ち合わせをしたり、振りの確認をしたりして、時間は過ぎていった。
 
 そして午前11時、フェスは開幕した。

 

「さあ、皆さま!お待たせしました!アイドル不在と言われてきた神戸にも、やっとこのような大会ができました!今回は記念すべき第1回目の開催となります!出場グループは9組!この神戸を代表するアイドル9組で競っていただきます。尚、優勝賞品は1万円の商品券と優勝トロフィー、更には淡路島への旅行券も差し上げます!それでは、そろそろ参りましょう!第1回ワクワク神戸アイドルフェス!開催です!」

 派遣のMCのお姉さんが会場を少しだけ温かくしてくれ、開幕の曲が流れた。
 
 スーパーで流れてるような電子音の曲だった。
 
 その曲がやがて小さくなり、MCのお姉さんは紹介を始めた。


 「さあ、最初に登場するのはこの二人組!ベニー&クロイドです!!」

 二人がステージ上に現れた。
 
 イメージカラーの赤と黒を基調とした可愛らしい衣装で、ステージの真ん中に立つ。
 
 音楽が鳴りだした。
 
 オリジナルのアップテンポの曲で、イントロから激しい振り付けと、難しいステップから始まり、まず紅がAメロを歌いだした。
 
 続いてクロの歌。
 
 Bメロの二人のハモリ。
 
 サビに入り二人の呼吸がシンクロした。

 
 まずは一曲を終え、ほぼ完璧に歌い切ったのではないだろうか。
 
 続いて2曲目はしっとり系のラブソングが始まり、こちらも丁寧に歌い上げた。

 
 ベニクロのパフォーマンスが終わり、温かい拍手が会場にパラパラ響いた。
 
 口が悪い紅だが、アイドルとしての彼女のパフォーマンスは中々の出来だったと思う。
 
 ただ、クロの方はなにか欠けているものがあるような、そんな気がしていたが、アイドルに成りたての僕が批評できるような身分ではなく胸の内に留めた。

 
 自身の番が終わり、ベニクロの二人が僕たちに近づいてきた。

 「どう?わたしたちのパフォーマンスは?あまりのクオリティの高さに腰抜かしたんじゃない?」と早速挑発してきた。

 「ま、まあまあってとこじゃないかしら?」

 「なによ、ちゃんと認めなさい。このあと自分たちの番で恥搔くだけよ」

 「あなたたちこそまだまだ足りないとこあるみたいだから、私たちのパフォーマンスようく見て勉強しなさい!」

 「ふん!行こ、クロ。他にまともなライバルいないか観戦しよ。じゃあね、変態おじさんたち!」
 

 「きいいい。ほんとむかつくわね、あの小娘!」

 「でも、あの紅って子、結構良いセンスしてたね」
 
 コムが呟いた。
 
 「やっぱりコムさんもそう思いましたか?」

 「うん。基礎がきちんとできてたし、多分どこかで習ってたんだろうね。隣の子はちょっと迷いがあるというか、気になる点はあったけど……」
 
 皆も感じた事は同じかもしれない。

 「さあ、私たちの番までまだ時間があるから、他の人達の演技もみておきましょうよ」
 
 アオの意見に従い、僕たちは観覧席の端の方で、他の演者のライブを観戦することにした。

 
 2組目は、7EAVEN《セブン》と言うおそらく女子高生らしいグループだった。
 
 曲は流行りのKーPOPを用い、ダンスだけの演技だった。
 
 先程のベニクロのライブを見た後では正直見劣りしてしまうが、同じ学校の仲間であろう人達の拍手と歓声で、場内を盛り上げていた。

 3組目、ララちゃんレレちゃんという双子の子たちの演技だった。
 
 ほのぼのとしたカラオケで場を温かい空気にしてくれ、惜しみない拍手が送られた。

 その後も子供たちのパフォーマンスが続いて6組目までが終わり、いよいよ僕たち乙男女じぇねれーしょんの出番が回ってきた。
 
 
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