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第八話 けっかはっぴょう!
しおりを挟む「すいませんでしたーー!!」
僕は土下座する勢いで謝った。
「大丈夫よ。気にしないで」
「うんうん、それに1曲目すごい良かったよ」
シオンさんとアオちゃんが優しく慰めてくれた。
「それに良い思い出になったよ」
「コムさん!最後みたいな言い方しないでくださいよー!」
「まあ、最初にしちゃ十分よく頑張ったわ。あとは残りの組を観戦して結果を待ちましょ」
頭が真っ白で、その後のことは殆ど記憶にないが、残りの二組も歌い終わり、全組のパフォーマンス終了した。
「けっかはっぴょーーーーう!」
MCが大きな声で叫んだ。
「それでは第3位から発表です!第3位は……」
会場の喧騒はいくらか落ち着いていた。
「第3位!、魚崎ピーコック!」
小さなざわめきと小さな拍手が送られた。
このグループはよく覚えていないが、あまりパッとしないパフォーマンスを披露していたのを記憶している。
「続いて第2位です!第2位はPOLARISHです!」
このグループもあまり記憶には残っておらず、可もなく不可もなくといった感じのパフォーマンスだった。
結果が発表されるたびに、紅が小さくガッツポーズするのが視界に入った。
そしてこちらに向かって喋りかけてきた。
「さあ、いよいよ1位の発表よ。約束はちゃんと守ってくれるんでしょうね?私たちが優勝なら、あなた達は解散だからね」
よっぽど自信があるのか、相変わらず嫌なやつだった。
しかし、手は震えていて、声も微かに震えていた。
彼女なりの強がりなのかもしれない。
「さあ、それではいよいよ1位の発表です!」
ドラムロールが流れ出し、会場の喧騒は静まり返った。
「第1位はー!ララちゃんレレちゃんです!おめでとうございます!」
会場にまた小さな拍手が送られた。
「あら~、残念!」
タオがまず口を開いた。
他のみんなは無言だったが、この審査の基準が皆正直よくわからないでいた。
そしてMCは進行を続けた。
「はい、今回はこちらの3組以外にも特別な賞があります。敢闘賞……えと、お、おつ、あ、おつとめじぇねれーしょんです!皆様温かい拍手を!」
また小さな拍手が送られた。
僕たちには敢闘賞という特別賞が贈られたが、みんなリアクションに困っていた。
審査員席に座っている人たちは、如何にも町内会のおじさんおばさんといった感じで、中には老人まで混ざっている。
老人にも勿論審査する権利はあって当然なのだが、今日の審査には点数もなく、ただなんとなく適当に順位が決められた感は否めなかった。
茶番じみた大会に、参加者はみなリアクションが薄かった。
そんな中ただ一人、紅だけは悔しがっていた。
「えっと、この場合って勝負はどうなるのかしら?」
もう誰も今回の勝負に勝ち負けなど意味は求めてなかったが、タオがなんとなく切り出した。
「わたしたちの負けよ……」
紅がうつむいて答えた。
「いや、でも僕たちただの敢闘賞だから、これって勝ったっていえるのかな?」
「負けたとも思ってないけど……でも少なくともあなた達のグループにはなにかがあったと思う。かなり奇抜なグループだけど、それでもなにか引きつけるものがあって……それが敢闘賞に繋がったのかも……だから……」
「あの、私たち別にあなた達に解散しろなんて言わないわよ」
僕たちもみんな同感だった。
そして紅が何か言おうとしたが、先にクロが声を出した。
「あの……わたし今日でアイドル活動やめます!だから、紅ちゃんにはアイドルを続けさせてあげてください!」
皆の視線がクロに集まった。
「ち、ちょっと何言ってんのよクロ!?クロが責任なんて取らなくていいんだから」
「そうよ、誰もそんなの望んでないって言ってるでしょ」
「そうじゃなくて……わたし、そもそもアイドルにそんなに興味なかったんです」
「え?」
「紅ちゃんに誘われてなんとなく続けてたけど、今日結果が出なかったら辞めるつもりだったんです!」
「待ってよ!わたし一人じゃ無理だよ!クロが必要なの!」
「わたしね、好きな人できたんだ……」
「――!?」
「男の人、好きになったんだ……だから、ごめんね……」
「クロ……」
紅がクロに対する感情を皆感じ取ってはいたが、誰もなにも言わなかった。
重たい空気の中タオが口を開いた。
「そうだ!私たち一応勝ったってことでいいのよね?だったら一つお願い聞いてもらえるかしら?」
「なによ?今更お願いって……」
「あなた私たちのグループに入りなさいよ!」
「な、なに言ってるの唐突に!」
「あら、お願いなんでも聞いてくれるんでしょ?私たちのとこも今日で二人抜けちゃうから人数減って困ってたのよ。」
タオの急な発言に皆戸惑った。
「え、二人抜けるってどういうことですか?」
「このあと事務所で話すつもりだったんだけど、今日でコムちゃんとシオンちゃんが一時離脱してサポートに回るのよ」
「ええええ!!」
みな一斉に声を張った。
「離脱ってどういうことですか?」
その質問に対しシオンが答えだした。
「私たちって、付き合ってるとかそういうんじゃないけど、なんていうか……良きパートナーって感じだったでしょ?」
良きパートナーって言うのは言わなくてもわかっていたが、改めて言われると動揺を隠せなかった。
ただ女性同士だったので実際のところどうなんだろうとはずっと思っていた。
「それが今回なんだけど、なんていうか……できちゃいまして……」
「おお!」
ルカとアオは感嘆の声をあげていたが、僕そしてまだ二人と面識の浅い紅とクロは言ってる意味がわからずきょとんとなった。
「ん?できたってなにがですか?」
「できたって言ったら、あれしかないでしょ?」
「ん?」
「だから……」
「だから?」
「赤ちゃん……」
「赤ちゃん?!」
「そう、赤ちゃん」
シオンは満面の笑みで答えていた。
「やだなぁ、からかわないでくださいよ。できるわけないじゃないですか?男性っぽい雰囲気あるけど、コムさんて女性ですよね?さすがにわかりますよ」
「そうよ。だったらわかるわよね?」
「いやいや、女性同士で子供出来るわけないじゃないですか?」
一瞬沈黙があった。
「あれ?」
「ん?」
「言ってなかったっけ?」
「なにがですか?」
「えと……わたし、男の娘よ……」
シオンは微笑みながら言った。
「ええええ!!う、嘘でしょ!?」
紅も驚きを隠せないでいた。
「ごめんなさい、わたしもシオンちゃんを紹介するとき言ってなかったわね。でも女の子は誰でも綺麗になれるって言ったでしょ。わたしのメイク術は凄いんだから」
「いやいや、言われてもまだ信じられないですよ!」
「ホントだってば、ほら」
そう言って僕の手を掴み、自分のスカートの中に手を入れ股間を握らせた。
するとそこには、通常サイズながら明らかに僕のよりも立派なモノが小さなパンティの中に入っていた。
僕や紅たちは開いた口が塞がらず、しばらく立ち尽くしてしまった。
僕に至っては、出会った時の事や二人きりでレッスンを受けた時の事、僅か数か月の出来事だが、走馬灯のように駆け巡り、そして憧れを抱いてた淡い恋心のようなものは色んな意味で砕け散っていった。
しばらく方針状態だった僕を置いてけぼりにして、タオは紅をまた説得に入った。
「ね、そういうことだから二人は産休と育休ってことでしばらくいなくなっちゃうのよ。メンバーも3人になって女の子はアオちゃんだけになっちゃうし寂しいでしょ?だからお願い!」
紅は迷っていたが、渋っているところにクロが割って入って来た。
「わたしもそれがいいと思う!それで、もしよければわたしもそこのカフェで働かせてもらうことできないですか?アイドル活動は辞めちゃうけど、カフェ店員ならわたしもみんなのお手伝いできそうだし」
「あら、クロちゃんいいこと言うわね」
「さ、あとはあなたの返事だけよ」
色んなお膳立てと条件が重なり、やがて紅も観念しだした。
「わ、分かったわよ、ただ一つだけこっちからも条件出していい」
「なにかしら?」
「やるなら本気でやりたいの!アルスタのようなトップアイドルを目指したいの!」
「私たちだってそのつもりよ」
「でもコムさんとシオンさんの二人が抜けるとなると、戦力的に今のままじゃ絶対にアルスタに追いつくことなんてできない」
「それは……」
誰もが思っていることを紅ははっきりと言った。
「だから、もう一人このグループに入れたい子がいるの」
「誰よそれ?」
「伊砂美橙那……」
「伊砂……!?」
「そう、Ultimate STARZのエース、伊砂玲於那の妹よ」
紅の口から『伊砂玲於那』というワードが出された瞬間、その場に張り詰めた空気が流れた。
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