乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ

文字の大きさ
8 / 24

第八話 けっかはっぴょう!

しおりを挟む
 
 「すいませんでしたーー!!」
 
 僕は土下座する勢いで謝った。

 「大丈夫よ。気にしないで」

 「うんうん、それに1曲目すごい良かったよ」
 
 シオンさんとアオちゃんが優しく慰めてくれた。

 「それに良い思い出になったよ」
 
 「コムさん!最後みたいな言い方しないでくださいよー!」

 「まあ、最初にしちゃ十分よく頑張ったわ。あとは残りの組を観戦して結果を待ちましょ」


 頭が真っ白で、その後のことは殆ど記憶にないが、残りの二組も歌い終わり、全組のパフォーマンス終了した。
 

 
 「けっかはっぴょーーーーう!」

 MCが大きな声で叫んだ。

 「それでは第3位から発表です!第3位は……」
 
 会場の喧騒はいくらか落ち着いていた。

 「第3位!、魚崎ピーコック!」
 
 小さなざわめきと小さな拍手が送られた。
 
 このグループはよく覚えていないが、あまりパッとしないパフォーマンスを披露していたのを記憶している。

 「続いて第2位です!第2位はPOLARISHポラリッシュです!」
 
 このグループもあまり記憶には残っておらず、可もなく不可もなくといった感じのパフォーマンスだった。

 
 結果が発表されるたびに、紅が小さくガッツポーズするのが視界に入った。
 
 そしてこちらに向かって喋りかけてきた。
 
 「さあ、いよいよ1位の発表よ。約束はちゃんと守ってくれるんでしょうね?私たちが優勝なら、あなた達は解散だからね」
 
 よっぽど自信があるのか、相変わらず嫌なやつだった。
 
 しかし、手は震えていて、声も微かに震えていた。
 
 彼女なりの強がりなのかもしれない。

 
 「さあ、それではいよいよ1位の発表です!」
 
 ドラムロールが流れ出し、会場の喧騒は静まり返った。

 
 「第1位はー!ララちゃんレレちゃんです!おめでとうございます!」
 
 会場にまた小さな拍手が送られた。
 
 
 
 「あら~、残念!」
 
 タオがまず口を開いた。
 
 他のみんなは無言だったが、この審査の基準が皆正直よくわからないでいた。

 
 そしてMCは進行を続けた。
 
 「はい、今回はこちらの3組以外にも特別な賞があります。敢闘賞……えと、お、おつ、あ、おつとめじぇねれーしょんです!皆様温かい拍手を!」
 
 また小さな拍手が送られた。
 
 
 僕たちには敢闘賞という特別賞が贈られたが、みんなリアクションに困っていた。
 
 審査員席に座っている人たちは、如何にも町内会のおじさんおばさんといった感じで、中には老人まで混ざっている。
 
 老人にも勿論審査する権利はあって当然なのだが、今日の審査には点数もなく、ただなんとなく適当に順位が決められた感は否めなかった。

 茶番じみた大会に、参加者はみなリアクションが薄かった。
 
 そんな中ただ一人、紅だけは悔しがっていた。


 「えっと、この場合って勝負はどうなるのかしら?」
 
 もう誰も今回の勝負に勝ち負けなど意味は求めてなかったが、タオがなんとなく切り出した。

 「わたしたちの負けよ……」
 
 紅がうつむいて答えた。

 「いや、でも僕たちただの敢闘賞だから、これって勝ったっていえるのかな?」

 「負けたとも思ってないけど……でも少なくともあなた達のグループにはなにかがあったと思う。かなり奇抜なグループだけど、それでもなにか引きつけるものがあって……それが敢闘賞に繋がったのかも……だから……」

 「あの、私たち別にあなた達に解散しろなんて言わないわよ」
 
 僕たちもみんな同感だった。
 
 そして紅が何か言おうとしたが、先にクロが声を出した。

 「あの……わたし今日でアイドル活動やめます!だから、紅ちゃんにはアイドルを続けさせてあげてください!」
 
 皆の視線がクロに集まった。

 「ち、ちょっと何言ってんのよクロ!?クロが責任なんて取らなくていいんだから」

 「そうよ、誰もそんなの望んでないって言ってるでしょ」

 「そうじゃなくて……わたし、そもそもアイドルにそんなに興味なかったんです」

 「え?」

 「紅ちゃんに誘われてなんとなく続けてたけど、今日結果が出なかったら辞めるつもりだったんです!」

 「待ってよ!わたし一人じゃ無理だよ!クロが必要なの!」

 「わたしね、好きな人できたんだ……」

 「――!?」
 
 「男の人、好きになったんだ……だから、ごめんね……」
 
 「クロ……」

 紅がクロに対する感情を皆感じ取ってはいたが、誰もなにも言わなかった。

 
 重たい空気の中タオが口を開いた。

 「そうだ!私たち一応勝ったってことでいいのよね?だったら一つお願い聞いてもらえるかしら?」

 「なによ?今更お願いって……」

 「あなた私たちのグループに入りなさいよ!」

 「な、なに言ってるの唐突に!」

 「あら、お願いなんでも聞いてくれるんでしょ?私たちのとこも今日で二人抜けちゃうから人数減って困ってたのよ。」
 
 タオの急な発言に皆戸惑った。

 「え、二人抜けるってどういうことですか?」

 「このあと事務所で話すつもりだったんだけど、今日でコムちゃんとシオンちゃんが一時離脱してサポートに回るのよ」

 「ええええ!!」
 
 みな一斉に声を張った。

 「離脱ってどういうことですか?」
 
 その質問に対しシオンが答えだした。

 「私たちって、付き合ってるとかそういうんじゃないけど、なんていうか……良きパートナーって感じだったでしょ?」
 
 良きパートナーって言うのは言わなくてもわかっていたが、改めて言われると動揺を隠せなかった。
 
 ただ女性同士だったので実際のところどうなんだろうとはずっと思っていた。

 「それが今回なんだけど、なんていうか……できちゃいまして……」

 「おお!」
 
 ルカとアオは感嘆の声をあげていたが、僕そしてまだ二人と面識の浅い紅とクロは言ってる意味がわからずきょとんとなった。

 「ん?できたってなにがですか?」

 「できたって言ったら、あれしかないでしょ?」

 「ん?」

 「だから……」

 「だから?」

 「赤ちゃん……」

 「赤ちゃん?!」

 「そう、赤ちゃん」
 
 シオンは満面の笑みで答えていた。

 「やだなぁ、からかわないでくださいよ。できるわけないじゃないですか?男性っぽい雰囲気あるけど、コムさんて女性ですよね?さすがにわかりますよ」

 「そうよ。だったらわかるわよね?」

 「いやいや、女性同士で子供出来るわけないじゃないですか?」
 
 一瞬沈黙があった。

 「あれ?」

 「ん?」

 「言ってなかったっけ?」

 「なにがですか?」

 「えと……わたし、男の娘よ……」
 
 シオンは微笑みながら言った。



 「ええええ!!う、嘘でしょ!?」
 
 紅も驚きを隠せないでいた。

 「ごめんなさい、わたしもシオンちゃんを紹介するとき言ってなかったわね。でも女の子は誰でも綺麗になれるって言ったでしょ。わたしのメイク術は凄いんだから」

 「いやいや、言われてもまだ信じられないですよ!」

 「ホントだってば、ほら」
 
 そう言って僕の手を掴み、自分のスカートの中に手を入れ股間を握らせた。
 
 するとそこには、通常サイズながら明らかに僕のよりも立派なモノが小さなパンティの中に入っていた。
 
 僕や紅たちは開いた口が塞がらず、しばらく立ち尽くしてしまった。
 
 僕に至っては、出会った時の事や二人きりでレッスンを受けた時の事、僅か数か月の出来事だが、走馬灯のように駆け巡り、そして憧れを抱いてた淡い恋心のようなものは色んな意味で砕け散っていった。

 
 しばらく方針状態だった僕を置いてけぼりにして、タオは紅をまた説得に入った。

 「ね、そういうことだから二人は産休と育休ってことでしばらくいなくなっちゃうのよ。メンバーも3人になって女の子はアオちゃんだけになっちゃうし寂しいでしょ?だからお願い!」
 
 紅は迷っていたが、渋っているところにクロが割って入って来た。

 「わたしもそれがいいと思う!それで、もしよければわたしもそこのカフェで働かせてもらうことできないですか?アイドル活動は辞めちゃうけど、カフェ店員ならわたしもみんなのお手伝いできそうだし」

 「あら、クロちゃんいいこと言うわね」

 「さ、あとはあなたの返事だけよ」

 色んなお膳立てと条件が重なり、やがて紅も観念しだした。
 

 「わ、分かったわよ、ただ一つだけこっちからも条件出していい」

 「なにかしら?」

 「やるなら本気でやりたいの!アルスタのようなトップアイドルを目指したいの!」

 「私たちだってそのつもりよ」

 「でもコムさんとシオンさんの二人が抜けるとなると、戦力的に今のままじゃ絶対にアルスタに追いつくことなんてできない」

 「それは……」
 
 誰もが思っていることを紅ははっきりと言った。

 「だから、もう一人このグループに入れたい子がいるの」

 「誰よそれ?」

 「伊砂美橙那いさご みとな……」

 「伊砂……!?」

 「そう、Ultimate STARZアルティメットスターのエース、伊砂玲於那いさご れおなの妹よ」

 紅の口から『伊砂玲於那』というワードが出された瞬間、その場に張り詰めた空気が流れた。

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

処理中です...