上 下
32 / 47
1章

新婚夫婦生活か!これは………

しおりを挟む
おれは先生に促されるままユニットバスに
入ってシャワーを浴びた。

シャワーを浴びると冷静になった。
先生とのキス、
先生に触られたこと
先生の下着姿

さっきまではわかっていなかったが
すごいことをしてしまったと血の気が引いていく。

やはり昨日の夜は先生としたんだ。
じゃないといまさっきのことも説明がつかない。

いろいろと頭を駆け巡るが
さっきの先生にされたことを思い出すと
気持ちがよすぎたせいでまた勃ってしまう。

先生はテクニシャンだ。
すごい技術の持ち主だ。
感動さえしてしまう。

おれの股間がおさまらないと
お風呂から出られない。

おさまるのにけっこう時間がかかってしまった。
シャワーなのに長風呂をしてしまう。

「シャワー長かったね。じょうくん」
杏子先生はこっちの事情を知らずに話しかけてくる。

おれは事情が事情だけに恥ずかしくて目を合わせられない。

「じょうくん、朝ご飯作ったから食べていって」

(!!)
それは食べれるものなのか?
合宿で先生が作ってくれた正体不明の料理を思い出す。

「もう、この前のは本当に失敗しただけなの。
 朝ご飯は自信あるから不安にならないで」

そこにはきれいに並べられた朝ご飯があった。
卵焼き、ご飯、味噌汁、浅漬け。
シンプルだがおいしかった。

「先生、料理できたんですね」
本音が漏れる。

「もう、だから言ったじゃない。
 おいしい?」

「はい。おいしいです」

「みっちーよりも?」

「それはみっちーのほうが、」
しまった。気を遣って先生の方がというべきだったが
もう後戻りができなかった。

「ぶぅー」
先生は口を膨らませて怒った顔をしている。

「ごめん、先生………」

「じゃあ、お詫びにキスして」
先生はニコニコしながらとんでもない要求をしてくる。

「い、いや、それは………」

先生は目をつぶって待っているポーズをする。

(しかたない)
そう思い先生の肩を掴む。

先生がちょっとビクッとした。

『ちゅっ』

おれは先生の口ではなくおでこにした。

先生は残念そうな顔をしなかった。
むしろ少し下に目線をそらし恥ずかしそうに
そしてうれしそうな表情をしていた。

「わたしね、じょうくんのおでこのキス好きになっちゃった」

明るく元気な先生が照れくさそうに言う。
これは本気だ。そう思わざるを得なかった。

「先生、ご飯食べましょう。
 おれ、家に帰らなきゃ。じんのが………」

「ごめん!じょうくん、そうだよね。
 今日学校来なくてもいいから」

「先生、教職者が言ってはいけない言葉No.1ですよ、それ」
おれはわらいが止まらなかった。

「ご飯食べたらすぐに帰って。
 このあとは先生が警察に連絡するから。
 もし事情聴取でじょうくんも必要になったら
 携帯に電話するね」

「わかりました」
おれはご飯を食べて急いで靴を履く。

「待って。じょうくん。
 もし警察に何か聞かれても先生と生徒は内緒で。
 18歳のフリーターの彼氏にしといてね」

(たしかにそうだ、先生と生徒の関係がバレたら
 やばいことになりそうだ)

「じゃあ、杏子、行ってくるわ」
おれはそのことを了解したと言う意味も込めて
後ろ向きで片手だけ上げて
彼氏風に言ってみた。

「ねえ、」

(調子に乗りすぎたか!)

肩をつかまれた。

『ちゅっ』

キスをされた………

「さっき唇にしてくれなかったからしちゃった………」

(ドクンッ)
俺の心臓が大きな鼓動を1つ打つ。

もう先生じゃなくて彼女にしか見えない。
その表情が年上なのに愛らしくてかわいい。

俺は目を逸らしてしまった。
「行ってきます」

結局、杏子先生は警察に通報したら
俺も必要ということになり現場立ち合いを一緒にした。

2人とも学校にはだいぶん遅刻していくことになる。

そして現場検証で杏子先生から驚きの言葉が出た。
ストーカーの犯人は『柳田先生』だと。
そして昨日襲ってきたのもたぶん柳田先生だと思うと。

2人はもともと付き合っていたらしい。
最初は清潔感もあり、頼り甲斐のある人だと
杏子先生は思ったらしい。
でも付き合ううちに柳田先生の陰湿さに気付き始めた。

杏子先生に告る男子生徒や他の教職員が馴れ馴れしく杏子先生に話しかけると嫉妬がひどく、杏子先生だけでなく、その相手にも当たることもあった。
だから俺が文芸部に入部して杏子先生と関係を持つようになり
それが柳田先生は気に食わなかったようだ。
それであんな陰湿なことを俺にしてたとは。

柳田先生の束縛が徐々に激しくなり
逃げるように別れたらしい。

そこからも柳田先生の粘着はしつこく続いた。
どれだけ話し合いをしても改善がされなかった。

俺が見た屋上の杏子先生の出来事はまさにこれのことだった。
話し合いも話にならず、ストーカー行為も激しくなる一方。
杏子先生が話し合いはもう無理だと思い、放った一言が
あの『もういい!』だった。

そして杏子先生はその日に警察にストーカー被害を出しに行った。警察からも柳田先生に厳重注意が言い渡された。
同じ学校の教職員だったこともあり、近づくなとまでは言えなかったらしい。

今回の事件で柳田先生は逮捕された。

ストーカーの被害届を出していたこと、
そして昨夜俺がたまたまストーカーの手袋をはぎとったこと、
現場にも指紋が残っていたこと、
それにより柳田先生の犯行と断定できた。

学校では柳田先生は一身上の都合で
退職したことになっていた。

杏子先生は学校にはうまく事情と状況を説明して
俺のことは一切バレずにこの件は収束を迎えた。

逮捕は後日だったが事情聴取を受けた日、
杏子先生と俺は大幅に遅刻して到着する。

お昼を過ぎていた。
5時限目からだった。

5時限目は杏子先生の国語の授業。

「おはよう、みんな。朝のホームルーム欠席してごめんね」
クラスのみんなに謝る杏子先生。

「せんせーい、彼氏とイチャイチャして遅刻したのぉー?」
ばかな男子高校生が杏子先生を茶化す。

「そうなのよー、おでこにちゅってされたら学校行きたくなくなっちゃったの」

(!!)
まさかのオレエピソードをぶっ込んでくる。
1人あたふたしてしまう。

「ひゅーひゅー」
「おれもしてぇー」
男どもが盛り上がっている。

おれは1人顔を赤らめ下を向いてしまう。
しおりを挟む

処理中です...