ガラスの靴は、もう履かない。

蘇 陶華

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人格崩壊

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今まで、思っていた人の人格が全く違うと知ったら、皆は、どう思うのか。確かに、僕は、莉子の顔、全てを知っている訳ではない。
「どうして、歩けないのか?」
思うように動かない足を叩いて、泣いている姿を見た事があった。
「歩けるんだ」
あの日、莉子が倒れた病棟で、僕は、確信していた。彼女を縛っているのは、動けなくなった足ではなくて、傷ついた心痕。深く傷ついてしまった心は、いつの間にか、僕の知らない所で、崩れ始まっていたのだろうか?
「あなたは、どうして、手を治さないのですか?」
今の技術なら、醜く傷痕を消す事だって、できるのに、どうして、彼は、そのままでおくのか?
「それは・・・今は、答えないでおくよ」
「僕だって、無理に聞きたくはりません」
「滑稽な夫婦だと、思うだろう?」
「夫婦?理解できない人だと思っています」
「君らには、わからないだろう。折れやすい心を持った人間の苦しみなんて」
僕だって・・・。苦しみはある。だけど、僕は、答えなかった。早く、手術が終わって欲しい。莉子の人格が、変わるのは、本当なのか?主治医に会って確かめたい。夫の言う事は、本当なのか?あの心陽は・・・一体、どんな関係なのか?
「薬の件は、莉子の友人から聞いたのか?」
僕の心を見透かすように、架は言った。
「あなたと、莉子の友人・・・いや、友人なんかではない。あの心陽という人とは、何があるんですか?」
「僕は、わからない。最初、声を掛けてきたのは、彼女だった。怖い程、才能のある女性だと思っていたが、まさか、莉子の友人だったとはね。莉子と結婚する前に、何度か、食事をした事がある」
「気が多いんですね」
「君も、変わらないじゃないか?」
「一緒にしないで、ください」
「心陽が何か、言ったのか?」
「莉子を彼女に任せて、いいんですか?僕には、危険な匂いしかしない」
「それを決めるのは、莉子だと思うよ」
「意外に、構わないんですね。こういう時は、放置ですか?」
莉子の意志に任せると言いながら、莉子を手放さない架に、愛情を感じる事は、できなかった。僕は、思わず聞いてしまった。
「莉子を大事に思っているのですか?」
架は、笑った。
「そんな感情で、ここまで、来れないよ。」
「愛情はないんですか?」
「なくても、一紙にいる事はできる」
気まずい空気が、僕らの間に流れた頃、手術が終わったと知らせがあった。ドラマのように、主治医が手術室から出てくる訳ではない。説明するから、面談室に来るように言われ、架は、薄笑いをしながら、僕に言った。
「家族として、話を聞いてくるよ。君は、ここで、待つんだな」
僕は、悔しい思いをしながら、廊下で待つことにした。
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