死神の守人

蘇 陶華

文字の大きさ
28 / 50

真実の継承者

しおりを挟む
僕が目を覚ましたのは、街外れにある大きな病院のベッドの上だった。あの後、力尽きた僕は、倒れ込み牛頭と馬頭は、沙羅の元に連れて行く訳には、いかず途方に暮れたらしい。悩んだ結果、牛頭が、僕の事業所の車を運転し、病院の前に、放置して行った。まあ、よく言えば、救急外来に送り届けてくれた。その後、多分、沙羅の元に行ったのだろう。何も、音沙汰はなく、僕は、ぼんやりと天井の電気を見つめていた。どうやら、二夜は、寝込んだらしい。背中の傷は、縫合されており、どうして、怪我をしたのか、みんなは、首を傾げていた。約束通りなら、沙羅は、元通りになり、八も解放されている筈だった。待っていた。元気な八が、顔を出してくれるのを。意識を取り戻した僕に、病院は、退院の許可を出し、僕は、家に帰る事になった。突然、仕事を休む事になったし、市神が、どうなったのかも知りたかった。あの信徒達に、守護神として、祀りあげられているんだろう。ふと、隣のベッドから、テレビの音が、耳に入った。
「なんだって、大きな犬だな」
気になり、カーテンを開け、画面に見入った。
「どうしたんですか?」
僕は、思わず声を掛けた。
「あぁ。。元気になったかい?最近、妙な事が続いてね。大きなカラスが出たかと、思ったら、今度は、犬の群れだ」
「犬の群れ?」
画面に1匹の犬が、大きく映しだされていた。犬じゃない。。。。地獄の番犬だ。。。僕は、慌てて、身の回りの物をバックに押し込んだ。僕の意識がない間、牛頭と馬頭が、いろいろ世話をしてくれていたらしい。
「どうした?帰るのかい?」
隣のおじさんが声を上げた。
「えぇ。。退院許可が降りたので。おせわになりました」
僕は、靴を履くのも、中途半端で、部屋から飛び出した。地獄の犬が来るなんて。。。誰が、脱走したの?沙羅は?あの女は?そして市神は?エレベーターのボタンを押すのも、もどかしく、窓から飛び出したかったが、思い出し、僕は、笑った。
「バカだな。もう飛べない」
市神。何してる?地獄の犬が、群れて現れるなんて、大物が来ているんだ。早く、捕まえてみろよ。本当の継承者なら、僕より、凄い所を見せろよ。エレベーターが、僕の居る階に上り、そして、ドアが目の前で開いた。
「!」
僕は、後ずさった。
「遅くなったな」
八が、壁を背にして立っていた。いや。。。壁に、寄りかかりながら、やっと立っている状態だった。
「なんだよ」
僕は、駆け込み、八を抱えた。
「やっと。。逢えた」
八は、途切れそうになりながら、僕に伝えた。
「随分、時間が掛かった気がする」
そう言って、八は、倒れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...