死神の守人

蘇 陶華

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命は絶たれても、絆は強く

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僕が、市神に能力を渡す少し前、拘束された状態で、八は、瑠眞に必死の抵抗を続けていた。拘束された状態で、流血は、止まらず、瑠眞は、八が、我が身を構わず、抵抗するのを楽しんでいた。
「俺の為に、蓮を試すのは、許さない」
「別に、無理強いはしていない筈よ」
瑠眞は、長く伸びた指先の爪を眺めていた。
「彼が、力を手放すのか?市神を、葬るのか、蘇rは、それで、結果がついてくるだけだから」
伸びすぎた爪を鎌の刃先で、軽く切り落とす。息を吹きかけ、また。見つめ直していた。
「あなたも、知りたくない?自分の為に、彼がどこまで、やってくれるのか」
「別に。。。」
八は、頭を振った。
「もし、蓮が市神に能力を渡した場合は、どうなるんだ?」
「迦桜羅の器になった物が、まともでいられる訳がない。ただの器なのだから」
「と言うと?」
「よくて、廃人だろう」
八の顔色が変わった。
「廃人?普通に戻るのではないのか?蓮は、普通に戻る事を望んでいるのに」
「考えてみろ。神経の末端まで、迦桜羅の能力が、染み付いている。心臓を抜き取ったら、死ぬのと同じだろう。もう、戻れん」
「市神を殺すしかないのか。。」
「無理だろう」
瑠眞は、笑った。
「聖人を殺す事は禁じられているからな。彼には、できない。市神に、力を渡した後、しばらくは、普通の人間として暮らせるだろう。だが、1ヶ月もしないうちに、壊れていく」
瑠眞の仮面の中で、怪しく目が輝いている。
「追い詰められた彼が、どうなるのか、見てみたいと思わないか」
「思わない!!」
八は、床を蹴って立ち上がった。
「蓮を試す為に、俺を使うなら、殺せ!」
瑠眞に、迫った。
「八宮!」
沙羅が、石棺にしがみつきながら、体を起こした。
「挑発に乗らないで。それが、瑠眞のやり口なの」
「うるさいわね!」
瑠眞は、沙羅の石棺に捕まる腕を切り落とした。
「ヒェ」
八は、驚き沙羅の顔を見たが、沙羅は、顔色一つ変えなかった。
「大丈夫」
というと、切られたはずの腕が、元に戻っていた。瑠眞の鎌は、沙羅を切る事は、できない。
「無駄な事でしょ」
沙羅が言うと、瑠まは、気分を害した様だった。
「これは、無駄でないでしょ?」
瑠眞は、長い柄を振り回し、八の首元に、鎌の刃先を充てた。ひんやりとした刃先が、八の首筋にあたった。
「これは、賭よ。沙羅」
瑠眞は、冷たく笑うと、躊躇なく、鎌をひいた。
「八宮!」
沙羅は、思わず、消えそうな体で、石棺から飛び出していった。鎌の刃先が、元の位置に、戻ると同時に、ゴトッと音がして何かが、転がっていった。赤い血飛沫が、洞窟の天井まで、噴き上がり、人形の様に真っ白になった体が転がっていった。八宮の体だった。
「なんて。。事を」
追いかけて、沙羅は泣いた。
「瑠眞!なんて事、なんて事をするのよ!」
「だったら、あなたも、死んでみる?死ぬことさえ出来ないくせに!」
沙羅は、八の頭を抱きしめ泣いた。見開いた目を閉じ、消えかけた体で、八を抱き締めていた。
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