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最愛の人
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自分は、夜の海に漂っている。心地よい海。昼も夜もない世界に、あの日、放り込まれた。対向車線をはみ出した大型のトラックが、最後の景色だ。隣に居た彼の叫び声と横顔が最後の景色。気づいた時、彼の体が、膝の上にあった。
「庇ってくれた」
そう思った。車の右半分は、なかった。彼は、最後まで、自分を庇い、先に逝ってしまった。
「どうして?」
何度、どうして?と夢の中で、叫んだか。暗い海の中に、答えはない。どうして生きて行ったら、いいのか、答えはない。一緒に行けば良かったのか。そう、苦しんだ澪に、彼の母親が、温かく澪を励ました。
「彼の思いを無駄にしないて」
彼が、生きた証を無駄にするな。澪には、そう聞こえた。彼の命が、鎖となって、澪を苦しめる。自分の細胞、一つ一つの奥底に、彼の命が生きている。そんな時、ふと耳にした歌声があった。友人が見ていたYouTubeだったと思う。その声の色を、澪は、覚えている。美しい新緑の色。伸びやかな若葉のような色が、澪には、見える。生命力に満ち、澪の闇の海に、一筋の光が差して行った。
「え?止めて。誰のチャンネル?」
澪は、あまり、親しくもない友人の携帯を持つ手を掴んだ。
「あまり、知られていない人よ。顔出ししていないけど、バイオリニストって、言ってたけど。ふざけて、歌ったりしているのよ」
「顔出しなし?」
自分は、視覚障害があるから、顔は、あまり、関係ないけど、耳障りのいい声に気を惹かれた。
「ギタリストの子と歌っているのね」
歌詞のフレーズが、離れない。
「~夢ならばどんなに、良かったでしょう。残るあなたの温もり」
何度も、夢だと思いたかった。声が闇の海に、染み込み、差した一筋の光の元、一本の草木が、芽を出す。それは、澪の中で、息吹き、次第に成長し、人の形となっていく。
「これは・・・」
声の色が、澪の視界に、色を与える。暗闇の海が、色を成し、優しい草原の世界へと導く。
「澪」
聴き慣れた声がする。
「誰?」
「忘れたのか?」
忘れるわけがない。この声は。
「そうなの?」
草原の中に浮かびあがる一人の青年。
「あなたなの?」
顔も知らない一人の男性の歌声が、澪の忘れられない恋人の面影を連れてきていた。
「庇ってくれた」
そう思った。車の右半分は、なかった。彼は、最後まで、自分を庇い、先に逝ってしまった。
「どうして?」
何度、どうして?と夢の中で、叫んだか。暗い海の中に、答えはない。どうして生きて行ったら、いいのか、答えはない。一緒に行けば良かったのか。そう、苦しんだ澪に、彼の母親が、温かく澪を励ました。
「彼の思いを無駄にしないて」
彼が、生きた証を無駄にするな。澪には、そう聞こえた。彼の命が、鎖となって、澪を苦しめる。自分の細胞、一つ一つの奥底に、彼の命が生きている。そんな時、ふと耳にした歌声があった。友人が見ていたYouTubeだったと思う。その声の色を、澪は、覚えている。美しい新緑の色。伸びやかな若葉のような色が、澪には、見える。生命力に満ち、澪の闇の海に、一筋の光が差して行った。
「え?止めて。誰のチャンネル?」
澪は、あまり、親しくもない友人の携帯を持つ手を掴んだ。
「あまり、知られていない人よ。顔出ししていないけど、バイオリニストって、言ってたけど。ふざけて、歌ったりしているのよ」
「顔出しなし?」
自分は、視覚障害があるから、顔は、あまり、関係ないけど、耳障りのいい声に気を惹かれた。
「ギタリストの子と歌っているのね」
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「~夢ならばどんなに、良かったでしょう。残るあなたの温もり」
何度も、夢だと思いたかった。声が闇の海に、染み込み、差した一筋の光の元、一本の草木が、芽を出す。それは、澪の中で、息吹き、次第に成長し、人の形となっていく。
「これは・・・」
声の色が、澪の視界に、色を与える。暗闇の海が、色を成し、優しい草原の世界へと導く。
「澪」
聴き慣れた声がする。
「誰?」
「忘れたのか?」
忘れるわけがない。この声は。
「そうなの?」
草原の中に浮かびあがる一人の青年。
「あなたなの?」
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