星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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僕は、時折、天然が入っていると笑われる事もある。
大学の友人にもよく、言われる。
「欲がない」
悪く言えば、
「流される」
寧大だけが、友人ではなく、他にも、友人はいたが、寧大が嫌で、離れていた奴もいる。
「また、あいつとつるんでいるのか?いい事ないぞ。離れろよ」
同じ弦楽器を選択した友人に、よく言われた。
忠告通り。
寧大の奇想天外な才能に惹かれたのは、事実。
僕を利用していたなんて、思いたくもない。
さて、寧大の事は、ともかくとして。
僕の大学の友人達は、それぞれに活躍していた。
もちろん、音楽の世界から、離れて活躍している奴もいれば、オーケストラや音楽雑誌と多岐に渡って、活躍している奴もいる。楽器の世界で、職人の腕を磨いている奴もいた。
僕は、養父母の反対もあって、中途半端に和菓子屋を手伝っている。
バイオリン奏者として、活躍したい思いは、燻っていて、ようやく、榊さんの口利きで、海外への話が飛び込んできていた。
実力?
あるとは、思っていない。
僕は、まだまだ、荒削りらしい。
もっと、技術を勉強すれば、少しは、形になるんじゃないかって、榊さんは、言っていた。
「誰かに、似ている」
きっと、その誰かの影を僕に、重ねているに違いない。
僕に似ている誰かが、恩人らしい。
「でね・・・」
僕らは、カフェに居た。
久しぶりに、澪とデートみたいな事をしていた。
澪の父親の火事の一件で、いろんな事が起きている。
が、ほんの少しの時間でもいいから、僕らは、日常から抜け出し、久しぶりに他愛もない、話をしていた。
追いかけて来るファン達を巻いて、カフェの端っこで、コーヒーを飲んでいた。
「抜けているって、言いたいんだろう?」
話は、戻る。
僕は、肝心な自分のバイオリンを取り戻さず、逃げてきたのだ。
「抜けている・・のね。意外と」
「いや・・・意外じゃなくて」
「おぼっちゃまって、感じよね」
「澪に、言われたくない」
澪は、お嬢様って感じではないけど。
「バイオリン失くして、どうするの?」
「取り戻さなきゃ・・・だな。大事な形見だし」
「形見?なの?」
「母のね」
「そう・・・亡くなったお母様って、バイオリニストなの?」
「違うけど」
「ふ・・・ん」
澪が、曖昧な返事をした。
「あの・・・気になる事があるんだけど」
「何?」
「海と蒼って、同じなの」
「同じって?何が?」
「色が」
「色って?声」
澪が、声を色で、感じる能力があるのは、知っている。
「僕と蒼が?」
「そう・・・全く同じよ。何もかも、同じなの」
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