星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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音楽家の願い

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流れる景色を見ていた。
澪の叔母は、約束通り、蒼のホテルの玄関に現れた。
「乗って」
運転席から声を掛ける。
真っ白な外車。
普通だったら、好感のない澪の叔母の車に乗る事はなかった。
複雑な心境だった。
分かち合う友人は、いない。
自分は、特別だと思って、エリートの道をまっしぐらに生きてきたから。
精神的に未熟なままで。
今の思いを、聞いてくる存在は、いない。
澪の叔母の車に乗りながら、流れていく景色を見ていた。
「どんな気持ち?」
突然、声をかけてきた。
「どんな気持ちって?」
「自分以外にも、血をわけた兄弟がいたって、知った事よ」
蒼は、眉間に皺を寄せた。
「認めたくないのね」
「僕が知りたいのは・・・」
蒼は、苛立っていた。
「どうして、あなたが、知っているかって事」
「それは、知るわよ。一応、副社長」
工場の火災の一件が、片付いていなかった。
自分の夫の件もあり、澪の力を借りたいと思っていた。
尋ねていった先で、思いがけず、澪達の会話を聞いてしまった。
「私で、話し相手になるなら・・・手思った訳」
「あなたが?」
「澪の叔母でもあるわ」
「叔母だなんて・・・」
全く、雰囲気が違う。
「あの子ばかり、ずるいわ」
叔母は、笑う。
「才能のある人達に、囲まれている。私なんて、あの子の父親の為に、自分の人生を犠牲にしたのに、全く、報われない」
「人徳って、言うのもあるんだよ」
「生意気ね」
「所で・・・どこに行くの」
「私だって、あなたに嫌われるのは、嫌だわ」
「嫌われているとわかっているんだ」
「そりゃあね」
それでも、自分は、蒼のファンと言う事は、黙っていよう。
「少しだけ、協力するから、あなたも、私に協力してほしい」
「僕に?」
「えぇ・・助けてほしいの」
「僕が、あなたを助ける?なぜ?」
「あなたが、行きたかった場所に連れて行くからよ」
「僕が行きたい場所?」
「えぇ・・・あなたが、四條 光瑠の息子なら、一度は、行きたいと思ってるはずよ」
車は、高速道路へと入って行った。
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