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目が見えなくても。
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「待っているから」
待っている。
澪は、そう言った。
僕の帰国をそのまま、待つというのか。
僕には、答えを、遠伸ばししている様に、感じた。
「待っていてくれなくていいよ」
あろう事か、僕は、そんな事を言ってしまった。
「澪が、この人って、決めた人がいたなら、それでいいよ」
「そうなの」
澪が、視覚障害者でなかったら、僕の表情から、本心を読み取る事ができただろう。
だけど、
澪は、それができない。
素直に自分の気持ちを、言葉で表現する事を忘れた僕は、どう、伝えたら、いいのか、わからなかった。
「海。蒼が、見つかったみたいだから」
もう、この会話は止めよう。
そう、言っているようだった。
「逢いに行こう」
僕は、澪と一緒に行こうとした。
「ごめん・・・用を思い出したから」
「送ろうか?」
「大丈夫・・・」
そして、澪は、言った。
「一人でも、大丈夫だから」
僕に対する答えに、聞こえた。
「パパが、迎えに来るから」
言っては、いけない言葉が、僕らの間には、ある。
「君の目が、見えたら、どんなにいいか・・・」
言葉が、必要でなくなる。
見つめる事で、通じる言葉がある。
考えては、いけない。
澪は、大変な事故に遭った。
命が助かっただけでも、感謝しなければならない。
自分の命を投げ打って、助けた恋人が居るのだから。
僕らは、互いに分かり合う事ができるのか。
「わかったよ・・・」
僕は、澪を遠くから、見送る事にし、蒼に逢いに行く事にした。
海の心がわからない。
自分の素直な気持ちをぶつけてみた。
彼が迷っているのが、声の色で分かった。
全てを捨てて、欲しいとは言えない。
彼が、全力で、自分を包んでくれる事に期待した。
踏み込んでくれない。
彼の心が揺れるのは、何処にあるんだろう。
彼の表情を見れば、知る事ができるのだろうか。
彼を見つめたい。
彼の顔が見たい。
これほど、目が見えない事を悔やんだ事はなかった。
目が見えなくても、モデルはできる。
自分でも、可能性がある。
そう思って、生きてきたのに。
一番知りたい人の気持ちがわからない。
「パパ・・・私ね。気付いたの」
迎えにきた、父親に車内で、語りかけた。
あの事故以来、言ってなかった事。
「こんなに、目が見えない事が悲しいなんて、思っていなかった」
澪の頬を何かが、伝っていった。
「どうして、あの時、私は、死ななかったの?」
「澪?」
親として、辛い言葉だった。
待っている。
澪は、そう言った。
僕の帰国をそのまま、待つというのか。
僕には、答えを、遠伸ばししている様に、感じた。
「待っていてくれなくていいよ」
あろう事か、僕は、そんな事を言ってしまった。
「澪が、この人って、決めた人がいたなら、それでいいよ」
「そうなの」
澪が、視覚障害者でなかったら、僕の表情から、本心を読み取る事ができただろう。
だけど、
澪は、それができない。
素直に自分の気持ちを、言葉で表現する事を忘れた僕は、どう、伝えたら、いいのか、わからなかった。
「海。蒼が、見つかったみたいだから」
もう、この会話は止めよう。
そう、言っているようだった。
「逢いに行こう」
僕は、澪と一緒に行こうとした。
「ごめん・・・用を思い出したから」
「送ろうか?」
「大丈夫・・・」
そして、澪は、言った。
「一人でも、大丈夫だから」
僕に対する答えに、聞こえた。
「パパが、迎えに来るから」
言っては、いけない言葉が、僕らの間には、ある。
「君の目が、見えたら、どんなにいいか・・・」
言葉が、必要でなくなる。
見つめる事で、通じる言葉がある。
考えては、いけない。
澪は、大変な事故に遭った。
命が助かっただけでも、感謝しなければならない。
自分の命を投げ打って、助けた恋人が居るのだから。
僕らは、互いに分かり合う事ができるのか。
「わかったよ・・・」
僕は、澪を遠くから、見送る事にし、蒼に逢いに行く事にした。
海の心がわからない。
自分の素直な気持ちをぶつけてみた。
彼が迷っているのが、声の色で分かった。
全てを捨てて、欲しいとは言えない。
彼が、全力で、自分を包んでくれる事に期待した。
踏み込んでくれない。
彼の心が揺れるのは、何処にあるんだろう。
彼の表情を見れば、知る事ができるのだろうか。
彼を見つめたい。
彼の顔が見たい。
これほど、目が見えない事を悔やんだ事はなかった。
目が見えなくても、モデルはできる。
自分でも、可能性がある。
そう思って、生きてきたのに。
一番知りたい人の気持ちがわからない。
「パパ・・・私ね。気付いたの」
迎えにきた、父親に車内で、語りかけた。
あの事故以来、言ってなかった事。
「こんなに、目が見えない事が悲しいなんて、思っていなかった」
澪の頬を何かが、伝っていった。
「どうして、あの時、私は、死ななかったの?」
「澪?」
親として、辛い言葉だった。
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