星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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忘れえぬ友へ

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僕の出生と海外留学の話は、家族以外知らない筈だった。

僕の真実の父親がわかった時、

あぁ・・・やっぱりか。

そんなふうにしか、思えなかった。

だって、

育ての親。

うん。

現在の両親へのバイオリンへの拒否反応が半端でなかったから。

こんなにも、バイオリンを嫌うか?って位だった。

僕が、どうしても、バイオリンの道を行きたいと言った日は、

「出ていけ!」

まで、言われた。

血の繋がらない兄が間に入ったっけ。

こんな理由だから、

僕がバイオリンを弾く姿を叔父は、腹圧な思いで、見ていたんだ。

感動的な対面。

亡くなっているから、ある訳でなく。

唯一の家族が、蒼と聞いて、

あぁ・・・そうかって。

道理で・・・。

何かと彼が目につくし、彼は、僕に絡んで来る訳だ。

だけど。

蒼の障害の事は、知らなかった。

四條 光瑠の名前が、僕らに重くのしかかる。

誰も、知る筈がない事なのに、

僕らは、また、振り回される事になる。

榊さんと、僕は、留学の日程を詰め始めていた。

「騒ぎになる前に、逃げよう」

榊さんの考えだった。

「それでなくても、君は、ある程度、有名人だから」

「過去形ですけど」

「いやいや・・・公平に学ぼうとしている君にとって、四條 光瑠の名前は、枷でしかない」

「僕もピンと来ないんですけど」

感動の父子の対面があれば、違うだろうけど。

あぁ・・・そう言えば、似てる。

程度。

バイオリンの腕で、言われると、僕も辛い。

きちんと、学んできた蒼には、叶わない。

僕らの現実を受け入れられない気持ちとは、裏腹に、

周りだけが、賑やかになっていった。

それは、

もう、忘れかけていた寧大からの電話だった。

「早く、逃げた方がいい」

挨拶もなく、携帯に出ると、そう口早に言う。

「なんだよ!連絡してきたんで、驚いているのか?」

僕は、答えなかった。

「いつまでも、冷たいんだな」

そりゃぁ、そうだよ。

僕を裏切ったのだから。

「あぁ、誤解しないでくれ。実は、俺。一緒に暮らしている奴いるんだ」

音夢だろう。

「結局、そういう事だ」

嬉しそうだ。

僕も、落ち着いてくれて、ホッとするよ。

「みんなが、お前を探しているよ。早く、弟と逃げた方がいい」

「弟?」

「蒼だろう。四條 光瑠の隠し子騒ぎだよ」

「誰が?」

「お前が」

亡くなった母は、正式に結婚していない。

だから、そう言う事になるのか。

「また、お前の周りは、忙しくなるな」

寧大は、僕の不幸が好きな様子だった。
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