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炎の術士、嵐を呼ぶ

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青嵐は、不思議な子だった。阿と吽が疲れ果て、地に横なっている間に、火を起こし、紫鳳を介抱していた。そばに連れている馬も、青嵐を信頼している様子が見てとれた。その青嵐が、いきなり瑠璃光の名前を出してきた。名の響きに、一瞬、紫鳳の耳が動くのを、青嵐は、見逃さなかった。
「知っているんだね」
うっすらと目を閉じる紫鳳の肩を掴み、語気を強めた。
「ずーっと探しているんだ。」
紫鳳は、面倒臭そうに、薄めで、こちらを見ている。
「会いたいんだ。瑠璃光が、三華の塔に現れるって聞いて、ここまで来たんだ」
「俺らも、その瑠璃光を探していて。。」
慣れない嘘に、阿は、ドギマギしている。
「どうして、会わなきゃ行けないの?」
吽が優しげに聞いた。
「それは。。。あの。」
青嵐は、口ごもった。四人の間で、炎だけがゆらゆらと揺れている。
「噂に聞いたんだ。大陸に凄い魔導士がいるって。香を扱い、他人にもなれるって」
「そんな噂あてに、ならないよ」
紫鳳は、口を開いた。
「今、この地にいるかなんて、わからないし、他人になるなんて話聞かない」
阿は、すぐ、紫鳳と瑠璃光が入れ替わる事かと、思ったが、黙った。
「瑠璃光が、お前に興味を持てば別だけど」
阿は、繁々と青嵐を眺めた。どう見ても、瑠璃光が気に入った紫鳳とは、対照的でやや野性味が強い。女性に近い美貌の瑠璃光とは、ますますかけ離れた容姿だった。
「興味を持つって?」
「子供は、知らなくていいの」
阿は、自分の容姿を忘れて声を上げた。
「そういうお前も、子供だろう」
「ほら。。。」
紫鳳は、頭を抱えた。雨は、一向に止む気配もなく、紫鳳達は、眠りにつく事にした。皆が、闇の中で、眠りについている間、炎だけが、輝き、縦や横に形を変えていた。青嵐の掌で、小さな炎が、幾つも踊り、形を変えていた。まるで、意思がそこにあるかの様に。
「気づいている?紫鳳?」
そっと吽が聞いた。紫鳳は、答える代わりに寝返りを打った。
「何か、厄介な拾い物したかもよ」
結構な術師。炎を操り、瑠璃光に会いたがる。それぞれに、嫌な予感があり、隙を見て、青嵐から逃げようと考えていた。
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