皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

文字の大きさ
18 / 82

新たな嵐が来る前に

しおりを挟む
紫鳳は、疲れ切っていた。気が付くと、全身のあちこちが爆風で切れており、おびただしい出血で染まっていた。爆風の中、何故か、瑠璃光の結界は、紫鳳まで、及ばず、青龍の剣のみが、彼らの命を守っていた。紫鳳は、式神といっても、瑠璃光の庇護の元、造られたに過ぎず、生身の血の通う人間と変わらなかった。捨てられた赤子を、十二神将の魄で、繋いだに変わらず、血を流す事もあれば、万が一、消えて亡くなる事もある。そして、条件さえ揃えば、元の人間に戻る事さえできる。あくまでも、瑠璃光の契約の元の、生きる式神。永遠の命を約束は、されていない。立ち上がる紫鳳の力ない様子に、阿は、素早く気づいた。
「紫鳳。雨が止むまで、もう少し、休みたい」
決して、休もうなんて提案は、聞かないだろうと思い、自分の気持ちとして言った。
「瑠璃光だって、居ないことに気付けば、探してくれる」
「そうだよ。まさか、自分の写鏡として、育てた紫鳳を忘れる事なんて、ないと思う」
阿に唆されて吽も同調した。紫鳳の姿は、痛々しく、もう、青龍の剣は、使えないだろう。休ませたいにも、雨は、激しく紫鳳の体を打ちつけた。この激しさでは、器の人間の体も、壊れてしまう。阿は、辺りを見回した。激しい雨の中を、傘をさした1人の少年が、通りかかろうとしていた。同じように雨に濡れながら、1頭の馬の手綱を引いていた。
「あ。。あの」
阿は、慌てて姿を1人の童に姿を変えて、声をかけた。
「すみません。。。道中、怪我をして困っているのです。どこか、近くまで、休める所は、ないでしょうか?」
吽も、同調するように、男童に姿を変えていた。
「途中、野犬の群れに襲われ、怪我をしています。雨で、休む所もなく、困っています」
馬の手綱を引く少年は、困った様に、紫鳳達を見下ろした。
「私も、雨に降られて困ってる所です。馬も、怪我をしていて、急げない。近くに、人も住んでいない屋敷があると聞いて、そこにいく途中です。よければ、一緒に行きますか?」
少年は、名前を青嵐と言った。物の怪などの祓いをして生活をしており、これから、依頼主の所にいく途中だが、馬が怪我をしてしまい、途中で、馬を休めようとしていた所だと話した。
「この子も、足を怪我していて」
青嵐は、馬を桜と呼んだ。怪我を気遣いながら、紫鳳の怪我の酷さに驚き、馬の背に、紫鳳を乗せることにした。阿と吽も童の姿のまま、青嵐の言う、近くの民家まで、同行する事にした。雨は、酷くそれぞれの体力を奪うが、何とか、青嵐の言う民家まで辿り着く事が出来た。昔は、権力のあった民が、住んでいたと見える大きな屋敷ではあったが、今では、その時の権力も感じられないほど、落ちぶれた屋敷ではあった。
「ここで、休もう」
青嵐は、馬も一緒に朽ち果てた屋敷の中に、入れると、力を失いぐったりとし紫鳳を、床の間に下ろした。
「紫鳳?」
阿が、紫鳳の顔を覗き込むと、少し、寝入っている様だった。
「雨が通り過ぎるまで、休もう」
青嵐は、屋敷のあちこちを探し回り、燃えるものを幾つか集めてきた。慣れた手つきで、火を起こした。
「これから、何処にいくの?」
吽は、青嵐に聞かれて、答えに詰まった。
「はぐれた仲間を探しに」
「はぐれたって、あの大陸の魔道士、瑠璃光?って人かな」
興味深げに、除く顔に、阿は、言葉が詰まっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...