46 / 82
蛟の姫、降臨
しおりを挟む
「え!」
振り向いた瞬間、紫鳳は、息を呑むと同時に、硬直した。やはり、蛇は嫌いなのだが、主人を危機から救う方法の一つだと、言われると邪険にできなかった。
「ちょっと!」
瑠璃光の様子を見るなり、紫鳳にくってかかった。
「このばか鳥!私の瑠璃光になんて、事を」
頭から湯気が出そうな勢いである。余計に紫鳳は、後ろに引いた。
「来たか・・・」
瑠璃光は、寝台を背に、やっと息をついている様だった。
「一瞬の隙だった」
「そのようね」
紗々姫は、辺りを見回した。
「随分と、埃くさい部屋でのお出迎えね」
紗々姫は、鼻先を着物の袖で、覆った。
「幼少期を過ごした部屋だ」
「そお!」
紗々姫は、指先で、あちこちの家具を、触れ様とし、紫鳳に止められた。
「応急処置を」
「そうね」
袂から、解毒薬を出そうとして、寝台の上の風蘭にようやく気がついた。
「これは・・・・」
男性なのか、女性なのか、判断に困る。わかるのは、蛟の性が、体内にあることと、その影響で、瑠璃光が毒に侵されていると判断した。
「ふうん」
紗々姫は、腕を組む。
「少しずつ、蛟になりかかっていたのね。きっかけがあって、術が発動した。それは、我が君。瑠璃光かしら?」
瑠璃光は、冷たく笑った。
「同じ者、同士ならわかるか?」
「失礼ね。私は、小物じゃないわ」
小瓶を瑠璃光に渡す。
「一時凌ぎでしかないわ。根源を絶たなければ、解毒できない。」
「根源とは?」
紫鳳は、聞く。
「そこよ」
胸騒ぎがするのか、意識を失っている風蘭を指す。
「きっと、瑠璃光を解毒しても、繰り返すでしょう。長年、蛟の性を飲まされていたのでしょう。根本的に払わないと・・・ね。鳥さん」
微笑まれて紫鳳は、固まった。
「まさか・・・」
以前も、似たような事があった。毒に侵された高官の経絡に、紫鳳の羽を刺し、瑠璃光が香の魔導術で払ったのだ。だが、今回は、瑠璃光は、使えない。
「炎の術手は・・・」
宙を泳ぐ目が、一斉に、瑠璃光の目と一致した。
「青嵐」
瑠璃光は、一枚の紙を取り出すと、乾いた筆で、文字を書き上げた。
「召喚せよ!」
紙札は、ぽっと、炎をあげて、一瞬のうちに、炭になった。
「いてぇなー」
地に炭が落ちると、同時に、青嵐が、足元から姿を現した。
「あれ?紫鳳?お?」
慌てて、くるくる周りを見回し、紗々姫と、目が合うと、慌てて、後ろに後退する。
「そうそう、慌てるな。助けを呼んだのだ」
足元から、頭の上まで、青嵐は、何度も見下ろすが、どこから見ても、大陸の女性ではない。見覚えのある佇まいは、陽の元の姫だった。
「いつの間に・・・・?どうやって?」
「我らと似た様な者だ」
「似た様な者かのう」
ニンマリと笑う口元が、妖のものを匂わせた。
「さあ、いくかえ。まずは、そこに、眠る子かね」
紗々姫は、衣服を剥ごうと手を差し出して、瑠璃光に止められた。
振り向いた瞬間、紫鳳は、息を呑むと同時に、硬直した。やはり、蛇は嫌いなのだが、主人を危機から救う方法の一つだと、言われると邪険にできなかった。
「ちょっと!」
瑠璃光の様子を見るなり、紫鳳にくってかかった。
「このばか鳥!私の瑠璃光になんて、事を」
頭から湯気が出そうな勢いである。余計に紫鳳は、後ろに引いた。
「来たか・・・」
瑠璃光は、寝台を背に、やっと息をついている様だった。
「一瞬の隙だった」
「そのようね」
紗々姫は、辺りを見回した。
「随分と、埃くさい部屋でのお出迎えね」
紗々姫は、鼻先を着物の袖で、覆った。
「幼少期を過ごした部屋だ」
「そお!」
紗々姫は、指先で、あちこちの家具を、触れ様とし、紫鳳に止められた。
「応急処置を」
「そうね」
袂から、解毒薬を出そうとして、寝台の上の風蘭にようやく気がついた。
「これは・・・・」
男性なのか、女性なのか、判断に困る。わかるのは、蛟の性が、体内にあることと、その影響で、瑠璃光が毒に侵されていると判断した。
「ふうん」
紗々姫は、腕を組む。
「少しずつ、蛟になりかかっていたのね。きっかけがあって、術が発動した。それは、我が君。瑠璃光かしら?」
瑠璃光は、冷たく笑った。
「同じ者、同士ならわかるか?」
「失礼ね。私は、小物じゃないわ」
小瓶を瑠璃光に渡す。
「一時凌ぎでしかないわ。根源を絶たなければ、解毒できない。」
「根源とは?」
紫鳳は、聞く。
「そこよ」
胸騒ぎがするのか、意識を失っている風蘭を指す。
「きっと、瑠璃光を解毒しても、繰り返すでしょう。長年、蛟の性を飲まされていたのでしょう。根本的に払わないと・・・ね。鳥さん」
微笑まれて紫鳳は、固まった。
「まさか・・・」
以前も、似たような事があった。毒に侵された高官の経絡に、紫鳳の羽を刺し、瑠璃光が香の魔導術で払ったのだ。だが、今回は、瑠璃光は、使えない。
「炎の術手は・・・」
宙を泳ぐ目が、一斉に、瑠璃光の目と一致した。
「青嵐」
瑠璃光は、一枚の紙を取り出すと、乾いた筆で、文字を書き上げた。
「召喚せよ!」
紙札は、ぽっと、炎をあげて、一瞬のうちに、炭になった。
「いてぇなー」
地に炭が落ちると、同時に、青嵐が、足元から姿を現した。
「あれ?紫鳳?お?」
慌てて、くるくる周りを見回し、紗々姫と、目が合うと、慌てて、後ろに後退する。
「そうそう、慌てるな。助けを呼んだのだ」
足元から、頭の上まで、青嵐は、何度も見下ろすが、どこから見ても、大陸の女性ではない。見覚えのある佇まいは、陽の元の姫だった。
「いつの間に・・・・?どうやって?」
「我らと似た様な者だ」
「似た様な者かのう」
ニンマリと笑う口元が、妖のものを匂わせた。
「さあ、いくかえ。まずは、そこに、眠る子かね」
紗々姫は、衣服を剥ごうと手を差し出して、瑠璃光に止められた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる