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荘園に佇むあの日の君
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細い通路から、抜け出すと一面が光の海になっていた。瑠璃光の後ろから、覗き込んだ景色に、紫鳳は、声を上げた。
「これは?」
瑠璃光は、振り向くと嬉しそうに笑った。
「ここまで、育てるのに何年かかったと思う?」
そこは、皇宮の奥にある荘園。薬草の畑だった。おそらく官僚達は、誰一人として知るものはなく、ごく一部の奴婢達と瑠璃光が作り上げた薬草園。知らない者は、畑の一角だと思うであろう。知る人ぞ知る。漢薬となる薬草を瑠璃光は育てていた。
「何で、ここに?」
「一番、安全だろう。それに、一番、必要な所だ」
薬草園の中では、古い落ち葉を拾い集めたり、若芽を摘む奴婢達の姿が見えた。
「漢薬書があっても、肝心の薬草がなければ意味がない。ここにある薬草は、私が引き継いだ物もあれば、あちこちから、集めて来た物もある」
青嵐は、思わず駆け出し、あちこちの薬草の匂いを嗅ぎ回った。
「すげ!扱うのは、お香だけでないんだな」
青嵐は、葉を擦り合わせ、沸き立つ香を楽しんだ。
「これだけ集めていれば、治療もできるわね」
紗々姫は、風蘭の襟元を掴むと、薬草園の地面に叩きつけようとした。
「危ない!」
紫鳳が、支えようとしたが、瑠璃光が、風蘭の腰の辺りを支えた。
「誰かの為に、ここまで、広げたのね」
紗々姫は、瑠璃光の鼻先に、突っかかる。
「風蘭の為だけではないと思う。確かに、風蘭は、長い時間をかけて、蛟の精を飲まされてきたせいで、傀儡になってしまった。けど、ここにある薬草は、それを治す物だけではないようだ」
紫鳳は、紗々姫に向き直る。
「風蘭の様な人を治療する為、多くの人を助けるために、集めた物だよ。蘇rは、勿論、紗々姫の為でもあるんだよ」
「私の?」
瑠璃光は、紗々姫が怒る理由がわからなかった。勿論、紫鳳のいう通り、風蘭の為だけに作った薬草園ではないが、風蘭の事がきっかけだったのだ。
「紗々姫。望むなら、君も、普通の人間に戻れるのでは?」
紫鳳は、紗々姫に優しく話しかけた。
「勿論、君が望めばだけど」
元は、人だった紗々姫は、元に戻れるだろう。が、死にそうになっていた赤子の自分は、十二神将の力で、生を受けたのだから、望めない。紫鳳の言葉に、紗々姫は、言葉を失った。
「私が?」
今まで、イライラしていたのが、嘘のように、心の水面が静まり返った。
「妬いていた?」
何に?瑠璃光と親しげな風蘭に?紗々姫は頭を振った。
「望まないわ。非力な人間など」
紗々姫は、風蘭の細い顎を掴む。
「早く、あいつらが目を覚ます前に、この女の体から、解毒する事ね。いつまで、私の力で抑えられるか、わからないから」
「離して!」
風蘭は、紗々姫の手を叩く。
「無礼な」
「勢いだけは、皇帝なのね」
「なんて!」
「まあまあ・・・」
瑠璃光が、二人の間に入る。
「そう簡単に解毒できる訳でもない。」
瑠璃光は、紗々姫の手をとる。
「ところで・・・。持ってきてくれたか?」
「何を今さら」
紗々姫は、それでも悪い気はしないらしく、少しだけ、笑うと、着物の袂から、陽の元の国から持参した長い葉をもつ花を出した。
「菖蒲?」
紫鳳も怪訝な顔をしてみた。
「そうだ・・・・」
そう言うと瑠璃光は、薬草園の中央へと風蘭を連れて歩いていく。
「どこへ連れていく」
「清めるのさ」
「これは?」
瑠璃光は、振り向くと嬉しそうに笑った。
「ここまで、育てるのに何年かかったと思う?」
そこは、皇宮の奥にある荘園。薬草の畑だった。おそらく官僚達は、誰一人として知るものはなく、ごく一部の奴婢達と瑠璃光が作り上げた薬草園。知らない者は、畑の一角だと思うであろう。知る人ぞ知る。漢薬となる薬草を瑠璃光は育てていた。
「何で、ここに?」
「一番、安全だろう。それに、一番、必要な所だ」
薬草園の中では、古い落ち葉を拾い集めたり、若芽を摘む奴婢達の姿が見えた。
「漢薬書があっても、肝心の薬草がなければ意味がない。ここにある薬草は、私が引き継いだ物もあれば、あちこちから、集めて来た物もある」
青嵐は、思わず駆け出し、あちこちの薬草の匂いを嗅ぎ回った。
「すげ!扱うのは、お香だけでないんだな」
青嵐は、葉を擦り合わせ、沸き立つ香を楽しんだ。
「これだけ集めていれば、治療もできるわね」
紗々姫は、風蘭の襟元を掴むと、薬草園の地面に叩きつけようとした。
「危ない!」
紫鳳が、支えようとしたが、瑠璃光が、風蘭の腰の辺りを支えた。
「誰かの為に、ここまで、広げたのね」
紗々姫は、瑠璃光の鼻先に、突っかかる。
「風蘭の為だけではないと思う。確かに、風蘭は、長い時間をかけて、蛟の精を飲まされてきたせいで、傀儡になってしまった。けど、ここにある薬草は、それを治す物だけではないようだ」
紫鳳は、紗々姫に向き直る。
「風蘭の様な人を治療する為、多くの人を助けるために、集めた物だよ。蘇rは、勿論、紗々姫の為でもあるんだよ」
「私の?」
瑠璃光は、紗々姫が怒る理由がわからなかった。勿論、紫鳳のいう通り、風蘭の為だけに作った薬草園ではないが、風蘭の事がきっかけだったのだ。
「紗々姫。望むなら、君も、普通の人間に戻れるのでは?」
紫鳳は、紗々姫に優しく話しかけた。
「勿論、君が望めばだけど」
元は、人だった紗々姫は、元に戻れるだろう。が、死にそうになっていた赤子の自分は、十二神将の力で、生を受けたのだから、望めない。紫鳳の言葉に、紗々姫は、言葉を失った。
「私が?」
今まで、イライラしていたのが、嘘のように、心の水面が静まり返った。
「妬いていた?」
何に?瑠璃光と親しげな風蘭に?紗々姫は頭を振った。
「望まないわ。非力な人間など」
紗々姫は、風蘭の細い顎を掴む。
「早く、あいつらが目を覚ます前に、この女の体から、解毒する事ね。いつまで、私の力で抑えられるか、わからないから」
「離して!」
風蘭は、紗々姫の手を叩く。
「無礼な」
「勢いだけは、皇帝なのね」
「なんて!」
「まあまあ・・・」
瑠璃光が、二人の間に入る。
「そう簡単に解毒できる訳でもない。」
瑠璃光は、紗々姫の手をとる。
「ところで・・・。持ってきてくれたか?」
「何を今さら」
紗々姫は、それでも悪い気はしないらしく、少しだけ、笑うと、着物の袂から、陽の元の国から持参した長い葉をもつ花を出した。
「菖蒲?」
紫鳳も怪訝な顔をしてみた。
「そうだ・・・・」
そう言うと瑠璃光は、薬草園の中央へと風蘭を連れて歩いていく。
「どこへ連れていく」
「清めるのさ」
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