皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

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戻れない道と皇帝の顔

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瑠璃光は、風蘭の手を取り、壮園の中央へと進んでいく。壮円は、神泉を中心に放射線状に薬草園が広がり、坂道を降りて行くと、窪地になっているのが、見える。そこだけ、一握りの林があり、泉が湧き出ていた。
「風蘭。聞きたい事がある」
瑠璃光は、真面目な顔をして風蘭に向き直った。
「ここから先は、君が決める事。その決定に従いたい」
意識が、戻っていた風蘭は、うなづく。
「君は、皇帝でいたいのか?」
聞くまもなく、風蘭は、首を振った。
「ただ・・・故郷の父や母が幽閉されているので、従うしかない」
「父や母は、息災と聞く。手厚い生活をされていて、もう、十分と思うが」
「いえ・・・」
風蘭は、首を振る。
「私が、ここに止まるのは、ここにいれば、あなたが戻ってきてくれるから」
「私は、一時的にここに来ただけだ。また、漢薬書を探して、旅に出ようと思っている」
紫鳳を見つめ
「彼と、また、旅に出る。ここには、戻らない」
「何故です?ここにいれば、何でも、手に入る。この薬草園だって、あなたは、自由にできる」
「私は、ここでは、息が詰まる。いろんな国を旅していきたい。見たこともない、妖と出会うのも、楽しいし」
紗々姫が、そっと瑠璃光の手を取る。
「一介の国の王なぞ、つまらぬ。我も、行こうぞ」
瑠璃光は、紗々姫の手から菖蒲を受け取った。
「君の身体から、毒を抜いていきたい。ただ、長い間に身体に溜まった毒を抜くのは、容易なことではない。このまま、成徳の傀儡として生きれば、皇帝の座にいる事はできよう。ただ、毒を抜いてしまうと、皇帝の座には、戻れないかもしれない」
「皇帝の座は、望んでいない。ただ、あなたに会った時に、危害を加える様になるのは嫌」
「それは、私も、望んではいないんだ」
瑠璃光は、紗々姫から、受け取った、菖蒲を細く割いていく。
「君の止まった時間を取り戻していく」
「回りくどい、言い方しないで」
紗々姫は、瑠璃光の言葉に突っかかる。
「わかりやすく、言わないと。皇帝の座にいる為に、止めていた月の物を、甦らせるのよ。女性らしくなるって事ね。どう見ても、あなたの身体は、痩せっぽちで、魅力がない。少年の身体ですもの」
紗々姫は、自分の身体を誇張する様に、風蘭に言う。
「これ、女性っぽいのがいい訳ではないぞ」
紫鳳が嗜める。
「父や母が大丈夫なら、元に戻りたい。自分の意思で会いに行きたい人がいる」
「それなら」
瑠璃光は、紗々姫に合図をすると、すぐ、その場から、紫鳳や青嵐、阿と吽を引き連れ、その場から離れた。不安がる風蘭は、紗々姫に連れられ、林の中の神泉にたどり着くと、身に付けていた物を全て剥ぎ取られてしまった。
代わりに、細く裂いた菖蒲を肌の上に絡ませていく。
「悪く思わないでね」
蛟の鱗が生え出た痕も、丹念に菖蒲で、覆うと、神仙に入るように言った。
「これは?」
一糸纏わぬ姿に、風蘭は、怯んだ。
「これから、解毒する。薬草と神泉。あとは、瑠璃光の術で、成徳と聚周を誘き出すのよ」
風蘭は、恐る恐る神泉に肩まで浸かっていく。
「苦しいかもしれないけど、大丈夫。私がいる」
紗々姫は、風蘭の前に陣取った。
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