63 / 82
翼を抱く者
しおりを挟む
紫鳳は、瑠璃光が陽の元の国から連れ帰った式神。その元の姿は、捨てられていた赤子で、明日の命も計り知れなかった。捨てられていた神社にあった十二神将の精を受け、瑠璃光に似せて作り上げれた。言わば、瑠璃光の分身でもある。瑠璃光の香術で、入れ替わり龍神の剣で、闘ってきた。入れ替わる時に、常に瑠璃光の心の中を覗く事がある。確かに、皇帝の座に着くことは、望んでおらず、いつ、心の中を覗いてみても、遙かな空と草原が広がるだけだった。
「旅に出よう」
2人だけの時に、月を見上げながら、瑠璃光が言った。
「どこへ?」
「気の向くまま」
目的もなく、あちこち旅をして、気に入ったらそこで、畑を耕して住む。それが、瑠璃光の願う生活だった。雨の日は、書を読む。時折、村人達に薬草を分けてあげたり、病人を見る。素朴な生き方を望んでいた。
「その前に・・。片付けておきたい事がある」
それが、風蘭の事だったのか。
「その為に、手伝ってほしい」
紫鳳には、わかっていた。どうして、瑠璃光に似せて作られていたのか。
「いずれ時が来たら、わかる」
水鏡に映った2人の顔を見つめ、瑠璃光は言った。
「母がどこに行ったのか、私は知らない。だけど、自分の行きたい所に行ったら、母に逢えそうな気がするんだ」
瑠璃光の声は、頼りなく寂しそうだった。他人が羨む物を持っていても、瑠璃光が1番、欲していたのは、家族の絆かもしれない。いつしか、母親の親族達と張り合える力を手にしても、家族の絆を持つ事は、できなかった。普通の人が、簡単に手に入る事が、瑠璃光には、ない。勿論、捨てられていた自分も。紫鳳は、空高く舞い上がり、アルタイ国の本陣を目指していた。翼を持つ者同士、情報を交換し、国境近くの草原に、向かっていく。下界から、空を見上げれば大きな鳥が待っているかのように、見えるだろう。薄い紫と青のグラデーションを身に纏った大きな鳥が、アルタイ国の本陣の上を回旋していく。
「やはり、現れた様です」
唐華は、袋から、いくつかの小石を放り投げ、戦況を占う。床に散らばった小石の面々は、瑠璃光の行動を表し、翼を持つ式神の行動を示唆している。
「紫鳳と言ったか?」
シンは、唐華に問う。
「陽の元の国に渡り、色々集めてきた様です。冥国で集める事は出来なかったのでしょう」
「それは、お前のせいか?」
「その通りで、ございます」
「陽の元の国か。興味が湧くな」
「まずは、冥国を手に入れてから、目を向けてみましょう」
「ふむ」
唐華は、シンの後ろにある弓矢を手にとる。
「それでは、まず、あの大きな鳥を打ちましょうか?」
「瑠璃光に似ているという顔を見てみるのも、いいだろう」
シンは、弓矢を取ると、天蓋の外へと駆け出して行った。
「旅に出よう」
2人だけの時に、月を見上げながら、瑠璃光が言った。
「どこへ?」
「気の向くまま」
目的もなく、あちこち旅をして、気に入ったらそこで、畑を耕して住む。それが、瑠璃光の願う生活だった。雨の日は、書を読む。時折、村人達に薬草を分けてあげたり、病人を見る。素朴な生き方を望んでいた。
「その前に・・。片付けておきたい事がある」
それが、風蘭の事だったのか。
「その為に、手伝ってほしい」
紫鳳には、わかっていた。どうして、瑠璃光に似せて作られていたのか。
「いずれ時が来たら、わかる」
水鏡に映った2人の顔を見つめ、瑠璃光は言った。
「母がどこに行ったのか、私は知らない。だけど、自分の行きたい所に行ったら、母に逢えそうな気がするんだ」
瑠璃光の声は、頼りなく寂しそうだった。他人が羨む物を持っていても、瑠璃光が1番、欲していたのは、家族の絆かもしれない。いつしか、母親の親族達と張り合える力を手にしても、家族の絆を持つ事は、できなかった。普通の人が、簡単に手に入る事が、瑠璃光には、ない。勿論、捨てられていた自分も。紫鳳は、空高く舞い上がり、アルタイ国の本陣を目指していた。翼を持つ者同士、情報を交換し、国境近くの草原に、向かっていく。下界から、空を見上げれば大きな鳥が待っているかのように、見えるだろう。薄い紫と青のグラデーションを身に纏った大きな鳥が、アルタイ国の本陣の上を回旋していく。
「やはり、現れた様です」
唐華は、袋から、いくつかの小石を放り投げ、戦況を占う。床に散らばった小石の面々は、瑠璃光の行動を表し、翼を持つ式神の行動を示唆している。
「紫鳳と言ったか?」
シンは、唐華に問う。
「陽の元の国に渡り、色々集めてきた様です。冥国で集める事は出来なかったのでしょう」
「それは、お前のせいか?」
「その通りで、ございます」
「陽の元の国か。興味が湧くな」
「まずは、冥国を手に入れてから、目を向けてみましょう」
「ふむ」
唐華は、シンの後ろにある弓矢を手にとる。
「それでは、まず、あの大きな鳥を打ちましょうか?」
「瑠璃光に似ているという顔を見てみるのも、いいだろう」
シンは、弓矢を取ると、天蓋の外へと駆け出して行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる