皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

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愛すべき侵略者

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アルタイ王国の本陣を偵察に来た紫鳳だったが、陣を構える近くまで来た時に、ちょっとした気になる事があった。空気が違うのである。冥国は、切り立った山々と深い河に囲まれ、鬱蒼とした密な空気であるが、アルタイ国は草原が多いせいか、空気は乾いて爽やかである。それだけではなく、民族柄も全く異なる。陽の元の国と冥国の雰囲気は、よく似ており、魔術と呪いの世界であったが、アルタイ国には、全く、その香すらなかった。それは、中心に構える王室が原因なのか、紫鳳には、わからないが、地から立ち上る空気が、全く異なる世界に来てしまった事を感じさせていた。また、空を覆う鳥たちの種類も、冥国と異なり、様々な色彩に溢れ、話す言葉も鮮やかだった。
「この国を旅する事もいいだろう」
紫鳳は、天空から草原を見下ろした。瑠璃光と2人で、あてもなく旅するのもいい。いや、青嵐もいる。はて、最近は、すっかりおとなしくなった阿と吽もいる。もしかしたら、紗々姫もついて来るかも知れない。そんな事を考えると、今、起きている戦いを放り出して、旅に出てしまいたくなる。きっと、瑠璃光は、風蘭の為、国を守ってから旅に出るというだろう。瑠璃光が、この戦を治めても、成徳がどう出てくるか、わからない。混乱に乗じて、瑠璃光を始末してくるかもしれない。紫鳳は、アルタイ国の本陣を見下ろすことのできる切り立った崖の上に降り立った。鬱蒼とした木々に囲まれ、誰かが潜んでいても、見通す事ができない。
「ここは、だめよ」
紫鳳に話しかけてきた鳥達がいた。
「どうしてだい?見通しがいいじゃないか?」
大きな鳥の姿のまま、紫鳳は聞いた。
「天子様が、あのテントから移られてきたの」
「皇子?が?」
「そう。あれは、囮。天子様とお供の者が、この山の奥に行った」
「お供の者?」
「草原の民ではなかった。この国境近くの山の事も、よく知っていた。」
国境の草原では、敵に動きがまるわかりになってしまう。だから、山や谷のある激しい地形の国境を選んだ様だが、もう一つの理由がある様だった。
「他にどんな人達がいたんだい?」
「体の大きな獣のような人間が、3~4人。顔の美しい人が、天子ね。そして、怪しい模様を顔に記した人がいたわ」
「怪し人?」
紫鳳は、目を見張った。
「嫌な匂いがした。そうお香ね。こんな所で、お香が漂ってくると思わなかった」
どことなく甘い香りが漂っているかの様だった。
「確かに、残り香がする」
甘くどこか、苦味のあるような香。残り香にしては、強すぎる気がする。
「!」
紫鳳が、もう一度、その鳥達の姿をよく、見ようとした瞬間、視界が前後に大きく揺れた。
「待って!」
紫鳳が、術を解き、姿を戻そうとしたが、両翼を激しく締め付けられてしまった。
「ご苦労だったな」
金の鎖で、締め付けられた大鳥の姿のまま、紫鳳が見上げると大きな体を持つ、髭面の大男が、背後から立ち塞がっていた。
「鳥の姿を持つ側近とは、お前のことかな」
ニヤニヤしながら、大男の掌に、紫鳳は、押さえつけられていた。
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