皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

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青嵐、旅の途中

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風蘭は、ぼんやりと天井を見ていた。記憶は、あちこちと欠けているが、自分が、瑠璃光に災いをもたらしてしまった事は理解できている。決して、瑠璃光は、自分に恋情を抱いている訳ではないことは、理解している。自分が、恋親しんでいる事に、間違いはないけど、瑠璃光が自分に抱く感情は、負い目だったりする事をわかっていた。認めたくはなかった。瑠璃光は、自分の自由と引き換えに、風蘭を苦境に立たせてしまった事に、負い目を感じ、自分を気にかけてくれている。それでも、良かった。少しでも、そばにいられれば。瑠璃光の役に立てれば、それでもいいと思ってはいたが、成徳の欲を満たす為の道具になってしまった事は、本意ではない。まして、妖物と変わってしまう身体になった事は、身を引き裂くほどに辛かった。
「望んではない」
思わず、口から言葉がこぼれ出る。
「どうしました?」
天蓋の外に居た青嵐が、薬湯を渡そうとして声をかけた。
「あ!」
風蘭は、はだけていた衣を慌てて引き上げる。
「あなたは・・」
記憶を手繰り寄せる。いつも、控えめに後ろの方にいた少年だった。まだ、幼さが、顔の端はしに見えるが、瑠璃光が同行している様子を見ると霊力も、ほどほどにあるように見える。浄化する時に、紗々姫と瑠璃光と霊力を合わせて一人だとは思っている。
「青嵐です」
改めて見る風蘭の姿に青嵐は、顔を赤た。肌も露わな年上の女性の姿は、青嵐には、刺激が強すぎた様だった。蛟の精に侵された風蘭を治療する為に、瑠璃光は残れと言っていたが、最初は、紗々姫と同じ蛟と一緒にいるのは、気分が悪いと思っていた。しかし、日々、一緒に過ごし昼夜を治療に費やすうちに、少しずつ、風蘭の内面がわかってきた。
「薬湯を作って来たから、飲んで」
青嵐は、自分の気持ちに気づかれないように、ぶっきら坊の薬湯の入っている器を差し出した。
「ありがとう」
意識がないほど、うなされていたが、青嵐の治療の甲斐があり、この所、意識がはっきりしている。風蘭は、青嵐のおかげでここまで、良くなったと思ったが、二人きりで、いる事がなんとなく恥ずかしくなり、一気に薬湯を流し込むと、あまりの苦さにむせてしまった。
「うぅ!」
むせる風蘭に青嵐は、慌てて、口直しの飴を渡すのを忘れている事に気づいた。
「忘れていた」
風蘭の口元に、飴を載せると、人差し指が、唇に触れてしまい慌てて、指を引っ込めた。
「ごめんなさい」
男装しているのは、極秘であるが、今は、皇帝の身である。
「大丈夫」
風蘭は、口の中の飴を舌の先でそっと転がした。
「あの・・・」
風蘭は、お礼を言おうと、青嵐を見上げると、青嵐も、風蘭を見下ろしていた。
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