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追う蛟は、龍になれる日を望む

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聚周が、瑠璃光との同行を望むとは、思わなかったので、成徳は、2人の出陣を見送りながら、やはり、瑠璃光だけは、どうしても、葬りたくなっていた。冷宮は、帝の寵愛い飽きた女子たちの行く末だったが、妖との子供と恐れられた瑠璃光を隔離するには、最適の場所と用意されていた。認められぬ自分より、さぞ、惨めな生活をしているだろうと覗き見ても、やはり、名前の通り光り輝く皇子は、変わらなかった。数多の妖が、瑠璃光の世話に通っていた。無論、その中には、未だ、行方不明の龍神の叔父も、いたのであろう。どこにいても、瑠璃光は、成徳にとって、憎むべき存在だった。妖の力を借りて、幸せに過ごしていると、思っている成徳に声をかけてきたのは、蛟の精だった。蛟の王は、龍神の子が、皇帝の座に座る事を妨害し、蛟の子を座らせたいと考えていた。
「互いの利益が同じなら」
成徳は、自らの身体を捧げた。瑠璃光ではなく、蛟の自分が、同じ皇帝の血を引く自分が、母親が原因で、継承者として認められなかった自分が、力をつけて、皇帝の座に返り咲く、その時を成徳は、夢みたが、一度、宦官となった、成徳g、その座に着くのは、叶え難く、自分の傀儡を探すしかなかった。
「それなら・・・・」
瑠璃光に似た子を探そう。成徳は、血眼になって、探し出したのが、風蘭だった。風蘭を一生縛り付け、自分が、呪いと香の国、冥国の最高峰に立つ。その夢が、叶った。幸いにも、瑠璃光は、皇帝の座に興味はなく、成徳の策略で、冥国を追い出す事に成功していた。
「後、少しだったのに」
瑠璃光が帰ってきた。そのタイミングで、他国が、冥国に侵略してきた。今まで、何度も、侵略の危機はあったが、龍神の子が皇帝という噂が、冥国を守っていた。それが、崩れ落ちた瞬間だった。
「それなら」
成徳を推す宦官は、多い。勿論、聖徳が蛟と知らない為だが、妖との血を引く、彼が皇帝の座に就く事を嫌う重臣は、多い。龍神の加護を受けても、皇帝自らが、妖であっては、人間の世界を治める事はできない。
「これを機に・・・」
何人もの重臣が成徳に囁く。
「粛清してしまえ」
アルタイ国が冥国を狙っている。瑠璃光も聚周、そして、風蘭でさえ、亡き者にしてしまえ。皇帝の座に就くものは、新たに、作り上げれば良い。
「今が、良い機会です」
成徳にささやく。
「皇帝の座につくのは、龍神だけとは、限らない」
蛟の王が、そう言った。自分が、この戦で、姿を変え、その座に就こうではないか。
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