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草原の王
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ロッシは、兄の天蓋から出ると、足早に自分の店外へと足を早めた。兄の事は、信頼し尊敬しているが、兄は、自分の事になると見境なくなる。豊かな土地を自分に残そうとしているのも、わかる。だが、怪しげなシャーマンや魔導士を呼び寄せ、自分の持病を怪しげな方法で治そうとしたり、呪いの国、冥国を手に入れようとしたのも、嫌で仕方がなかった。自分は、王の器ではない。兄こそが、草原の王に相応しいと思うが、父親の後妻に入った母親に気を遣い、王座を自分に譲ろうとしている。自分は、望まない。母親は、当然、自分が王位を継ぐことを望んでいるだろう。だが、自分は、器がない。病を治し、王座に着けと言うなら、病など、治さなくて良い。病など・・・。ロッシは、天蓋の中に飛び込むと、隠れるように座っている侍女を見つけ、声をかけた。
「持ってきたか?」
衣服の裾を掴み、物陰に隠れる。
「はい・・・」
器に入れた煎じ薬を、次女の手から受け取ると、ロッシは、躊躇もせずに、流し込む。
「それを・・・飲むと、また」
侍女は、目を伏せる。
「また、血が出るまで、咳が止まらなくなります」
「いいんだ。僕は、このままで」
「私が、飲ませたと分かれば、罰を受けてしまいます」
「わざわざ、具合悪くなるように、薬を飲む奴がいると思うか?誰にも、言わないから、早くいけ」
「はい・・・申し訳ありません」
追い払うように侍女を追い出すと、ロッシは、寝台に横になった。しばらくすると、また、咳が止まらなくなるだろう。きっとお、兄は、心配し、シャーマンのパウダや唐華を呼んで、あれこれと薬を煎じさせるのだろう。
「こんな事止めて」
冥国は、いらない。冥国に伝わる三頭の龍を見てみたいと、シンは、言っていた。このまま、物見遊山で帰ろうでないか?色々思いを巡らせていると、いつもの様に、咳が始まった。いつもより、激しく、咳き込み、血を吐いて転がると、知らせを受けたシンが、天蓋に飛び込んでくる。
「やはり・・・急がなくてはならない」
ロッシの小さな体を抱え上げる。
「急いで、冥国の皇帝に会おう。何か、手立てがあるはず」
ロッシは、シンの顔に手を伸ばし、触れる。
「このまま、帰りたい」
「ここまで、来たんだ。いいか、ロッシ。漢薬書で、病を治すだけではなく、その漢薬を国業として、育てる事で、無駄な戦いをしなくて済むんだ。今なら、本物の皇帝が戻ってきていると聞く、会いに行くぞ」
「いいんだ。僕は、このままで。兄さんの代わりに、王になんてなりたくない」
「何を言っているんだ?」
「母上に気を遣って、僕に王座を渡すつもりなんでしょ?僕は、嫌だ」
「何を言うんだ?」
「僕は、向いていない。刃物を持つのも、馬に乗るのも、嫌なんだ。このままで、いいんだ。兄上の姿を見ているだけで、いいんだ」
「ロッシ。そんな我儘は、できないんだ。漢薬書も、そうだが、民の生活を守らなくてはいけないんだ」
シンは、優しくロッシを立たせる。
「誰かが、やらなくてはいけないんだ。血を流す事はない。さあ、一緒に行ってくれ」
ロッシは、真の顔を見上げると、決心したかのように、頷いた。
「持ってきたか?」
衣服の裾を掴み、物陰に隠れる。
「はい・・・」
器に入れた煎じ薬を、次女の手から受け取ると、ロッシは、躊躇もせずに、流し込む。
「それを・・・飲むと、また」
侍女は、目を伏せる。
「また、血が出るまで、咳が止まらなくなります」
「いいんだ。僕は、このままで」
「私が、飲ませたと分かれば、罰を受けてしまいます」
「わざわざ、具合悪くなるように、薬を飲む奴がいると思うか?誰にも、言わないから、早くいけ」
「はい・・・申し訳ありません」
追い払うように侍女を追い出すと、ロッシは、寝台に横になった。しばらくすると、また、咳が止まらなくなるだろう。きっとお、兄は、心配し、シャーマンのパウダや唐華を呼んで、あれこれと薬を煎じさせるのだろう。
「こんな事止めて」
冥国は、いらない。冥国に伝わる三頭の龍を見てみたいと、シンは、言っていた。このまま、物見遊山で帰ろうでないか?色々思いを巡らせていると、いつもの様に、咳が始まった。いつもより、激しく、咳き込み、血を吐いて転がると、知らせを受けたシンが、天蓋に飛び込んでくる。
「やはり・・・急がなくてはならない」
ロッシの小さな体を抱え上げる。
「急いで、冥国の皇帝に会おう。何か、手立てがあるはず」
ロッシは、シンの顔に手を伸ばし、触れる。
「このまま、帰りたい」
「ここまで、来たんだ。いいか、ロッシ。漢薬書で、病を治すだけではなく、その漢薬を国業として、育てる事で、無駄な戦いをしなくて済むんだ。今なら、本物の皇帝が戻ってきていると聞く、会いに行くぞ」
「いいんだ。僕は、このままで。兄さんの代わりに、王になんてなりたくない」
「何を言っているんだ?」
「母上に気を遣って、僕に王座を渡すつもりなんでしょ?僕は、嫌だ」
「何を言うんだ?」
「僕は、向いていない。刃物を持つのも、馬に乗るのも、嫌なんだ。このままで、いいんだ。兄上の姿を見ているだけで、いいんだ」
「ロッシ。そんな我儘は、できないんだ。漢薬書も、そうだが、民の生活を守らなくてはいけないんだ」
シンは、優しくロッシを立たせる。
「誰かが、やらなくてはいけないんだ。血を流す事はない。さあ、一緒に行ってくれ」
ロッシは、真の顔を見上げると、決心したかのように、頷いた。
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