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妖の皇帝
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瑠璃光が到着したのは、アルタイ国が陣を構える国境近くの人気のない寂れた村の一角だった。兵士達が、こちらに向かって来ると聞いて、村人達が逃げ出した後の様だった。まだ、あちこちに生活の跡が見て取れる。瑠璃光は、率いてきた兵を適当な所で、休む様に告げると、紫鳳を呼び寄せた。
「見張も、何も立てなくていいのか」
兵士に休養を取るように告げた瑠璃光に、聚周は、言った。
「何があっても、おかしくないぞ。どさくさに紛れて、殺されるかもしれない」
「その可能性は、あるだろう」
瑠璃光は、紫鳳の翼を何枚か、抜くと、香を一緒に、辺りに放つ。スパイシーな香りがあたりに満ちると、紫鳳の羽は、何人かの紫鳳になり、あたりに散っていった。
「兵士より、式神の方が役に立つか?」
聚周は、片方の眉を吊り上げた。
「陽の元の国の戦神か・・・」
「その契約だ」
「陽の元の国と言えば・・・」
聚周の頭の片隅にあの紗々姫の姿が浮かんだ。人の形というよりは、蛟の姿だった為、慌てて頭を振る。
「紗々姫の事か?」
察して、瑠璃光が言う。
「陽の元の国にも、蛟が政の世界を侵しているのか?」
「私も、気になっている。陽の元が先なのか、この国が先なのか、わからないが、蛟が、入り込んでいる。龍神を祀る皇室には、多いようだ」
そこで、瑠璃光は、何かと思い出したようで、聚周をキツく睨んだ。
「ところで、成徳の蛟への変化は、お前が、絡んでいたのか?手を貸したのか?」
聚周は、慌てて、手振った
「いやいや・・・俺は、少し、ほんの少し手を貸しただけで、未完成だったから、な」
思わず、大きな声になり、後ろにいる紫鳳に小突かれる。
「お前・・・」
「だって、この国の混乱ぶりと言ったら・・な。あんな青臭い女が皇帝なんて、誰もが、不安になるだろう」
瑠璃光の面影を持つ男性を探すのは、困難だったようだ。
「皇帝の座には、興味はないが、こうも、蛟が、入り込んでいるとは」
人とは、違う気配を感じ、瑠璃光は、話すのを止めた。
「瑠璃光。羽(紫鳳の分身)から、連絡があった。アルタイ国王が、今、村に着いたようだ」
「この感じ・・」
瑠璃光は、風の香りを嗅いでいる様だった。
「術者もいるな」
瑠璃光は、出迎える為、建物の扉へと向かう。
「用心しろよ」
聚周が言うと、紫鳳は、薄く笑った。
「何だよ」
聚周は、気づいた。2人は、入れ替わっていた。扉に向かって行ったのは、瑠璃光の姿をした紫鳳だったからだ。
「お待たせ!」
意に反して、飛び出してきたのは、紗々姫だった。
「協議するって聞いたから、来ちゃったわよ!」
「持ち場を離れるな!」
瑠璃光と思って飛びつこうとしたが、紫鳳の匂いがして、紗々姫は、慌てて、後退した。
「え?またなの?」
「念の為。」
瑠璃光は、座ったまま、足を組んでいる。
「ここまで、来たって事は、何かあったか?」
ゆっくりと足を組み直す。
「あの蛟の野郎が、このまま、引き下がるとは、思っていなくてね」
「それは、私もそう思う」
「きっと、来るわよ」
「陽の元の国と同じ轍を踏むか・・」
「そうね。馴染んでしまう子もいるけどね」
紗々姫は、舌を出した。
「冥國と陽の元の国は、状況が似ているから」
紗々姫は、小さく呟く。
「でも、立て直すわ。素敵な伴侶も見つけたし」
「それは、そっちの瑠璃光で」
瑠璃光は、同じ姿をした紫鳳を指す。
「冗談を・・」
また、新たな気配がして、家の前に、粗末な馬車が止まった。
「護衛もなしに、随分と粗末な登場の仕方だな」
「目立たないように、派手な馬車を出発させた後、出てきたと考えられるな」
おそらく、精鋭と王のみで、来たであろう。紫鳳の羽達が、守る中、アルタイ国の王と弟。そして、御者を入れると4人の精鋭が、降り立っていた。
「お待ちしていました」
紫鳳の姿をした瑠璃光が、奥から声をかけた。
「見張も、何も立てなくていいのか」
兵士に休養を取るように告げた瑠璃光に、聚周は、言った。
「何があっても、おかしくないぞ。どさくさに紛れて、殺されるかもしれない」
「その可能性は、あるだろう」
瑠璃光は、紫鳳の翼を何枚か、抜くと、香を一緒に、辺りに放つ。スパイシーな香りがあたりに満ちると、紫鳳の羽は、何人かの紫鳳になり、あたりに散っていった。
「兵士より、式神の方が役に立つか?」
聚周は、片方の眉を吊り上げた。
「陽の元の国の戦神か・・・」
「その契約だ」
「陽の元の国と言えば・・・」
聚周の頭の片隅にあの紗々姫の姿が浮かんだ。人の形というよりは、蛟の姿だった為、慌てて頭を振る。
「紗々姫の事か?」
察して、瑠璃光が言う。
「陽の元の国にも、蛟が政の世界を侵しているのか?」
「私も、気になっている。陽の元が先なのか、この国が先なのか、わからないが、蛟が、入り込んでいる。龍神を祀る皇室には、多いようだ」
そこで、瑠璃光は、何かと思い出したようで、聚周をキツく睨んだ。
「ところで、成徳の蛟への変化は、お前が、絡んでいたのか?手を貸したのか?」
聚周は、慌てて、手振った
「いやいや・・・俺は、少し、ほんの少し手を貸しただけで、未完成だったから、な」
思わず、大きな声になり、後ろにいる紫鳳に小突かれる。
「お前・・・」
「だって、この国の混乱ぶりと言ったら・・な。あんな青臭い女が皇帝なんて、誰もが、不安になるだろう」
瑠璃光の面影を持つ男性を探すのは、困難だったようだ。
「皇帝の座には、興味はないが、こうも、蛟が、入り込んでいるとは」
人とは、違う気配を感じ、瑠璃光は、話すのを止めた。
「瑠璃光。羽(紫鳳の分身)から、連絡があった。アルタイ国王が、今、村に着いたようだ」
「この感じ・・」
瑠璃光は、風の香りを嗅いでいる様だった。
「術者もいるな」
瑠璃光は、出迎える為、建物の扉へと向かう。
「用心しろよ」
聚周が言うと、紫鳳は、薄く笑った。
「何だよ」
聚周は、気づいた。2人は、入れ替わっていた。扉に向かって行ったのは、瑠璃光の姿をした紫鳳だったからだ。
「お待たせ!」
意に反して、飛び出してきたのは、紗々姫だった。
「協議するって聞いたから、来ちゃったわよ!」
「持ち場を離れるな!」
瑠璃光と思って飛びつこうとしたが、紫鳳の匂いがして、紗々姫は、慌てて、後退した。
「え?またなの?」
「念の為。」
瑠璃光は、座ったまま、足を組んでいる。
「ここまで、来たって事は、何かあったか?」
ゆっくりと足を組み直す。
「あの蛟の野郎が、このまま、引き下がるとは、思っていなくてね」
「それは、私もそう思う」
「きっと、来るわよ」
「陽の元の国と同じ轍を踏むか・・」
「そうね。馴染んでしまう子もいるけどね」
紗々姫は、舌を出した。
「冥國と陽の元の国は、状況が似ているから」
紗々姫は、小さく呟く。
「でも、立て直すわ。素敵な伴侶も見つけたし」
「それは、そっちの瑠璃光で」
瑠璃光は、同じ姿をした紫鳳を指す。
「冗談を・・」
また、新たな気配がして、家の前に、粗末な馬車が止まった。
「護衛もなしに、随分と粗末な登場の仕方だな」
「目立たないように、派手な馬車を出発させた後、出てきたと考えられるな」
おそらく、精鋭と王のみで、来たであろう。紫鳳の羽達が、守る中、アルタイ国の王と弟。そして、御者を入れると4人の精鋭が、降り立っていた。
「お待ちしていました」
紫鳳の姿をした瑠璃光が、奥から声をかけた。
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