73 / 82
蛟の花嫁
しおりを挟む
青嵐は、風蘭と一緒に居て、間が持たなくなっていた。陽の元の国では、修業を抜け出し、各国を流浪の旅に出ていたが、まだ、若干、10代も半ばである。風蘭も、年上と言っても、ほとんど、青嵐と歳の頃は、変わらなかった。若い2人を、同じ部屋に残して、先に行った瑠璃光を恨めしく思った。
「風蘭を必ず守るんだ」
「僕なんかより、紫鳳の羽の方が、役に立つし、強い」
瑠璃光は、小さくため息をついて、首を傾げた。
「まだ、わかっていないんだな。どうして、お前の親が、そこに置いていったのか」
「え?なんて」
ずっと、瑠璃光にあって、親の事を聞きたいと思っていたが、なかなか、聞き出せないでいた。突然、瑠璃光から言われて、耳を疑った。
「僕の親の事。どうして?」
「見えたから」
瑠璃光は、青嵐の肩に優しく触れた。
「君の炎は、浄化の力がある。それは、自分で、得た力ではない。君の親が与えたものだ」
瑠璃光には、自分と似た境遇があるから、共感してもらっているのだろうか?それとも、本当に見えて、そう言っているのだろうか。
「いろいろ聞きたい事があるんです」
瑠璃光は、首を振った。
「まだ、時が来ないんだ。いつか、知る時が来る。でも、それは、今ではない」
「青嵐。まだ、風蘭には、治療が必要なんだ。君の炎で、治療してくれないか」
瑠璃光は、そして、耳元で、囁く。
「いいか。きっと、私の不在時に政変が起きる。風蘭の寝所が1番、安全だ。そのまま、そこにいるんだ。皇宮内も、外も危険になる」
瑠璃光は、成徳の起こす政変を見抜いていた。もはや、風蘭にこだわる事はないだろう。いずれ王座に、自分自身が座るつもりで、長い時間をかけて根回ししてきた筈だ。自分自身は、皇帝の座に魅力は感じない。だが、蛟の精を受けた成徳や、その類の者たちに、譲る気はない。
「青嵐。私達が、出た後は、寝所の四方を確認しろ。浄化していくんだ。どんな小さな物でも、見逃すな。蛟は、心の隙間に付け入る」
そして、青嵐に、紫鳳の羽を1本渡した。
「どうしても、助けが必要な時は、これを窓の外に飛ばすんだ」
青嵐は、頷いた。瑠璃光に言われた通りに、部屋の隅から隅まで、浄化した。怪しい物は、全て灰になって消えた。
「少し、休まれては?」
青嵐の額に、汗がじんわり、滲んでいる。長時間、集中するので、疲労が激しい。前回の浄化には、紗々姫がいたが、今回は、一人だ。皇宮の中で、風蘭を守れるのは、自分しかいない。
「あぁ。。そうだ。」
青嵐は、急に衣服を脱ぎ出した。
「え?何を?」
上着を脱ぐと、そばに掛けてあった、風蘭の皇帝の衣装を羽織り、髪を結い上げる。
「僕の衣装を着て」
風蘭に自分の衣装を着せ、顔には、側にあった鉢を割って、泥を顔に塗る。
「万が一に、備えて・・・だから、隠れていて」
青嵐は、風蘭を衣装の間に隠れるように促した。
「全てに用心しないと」
成徳は、用意周到である。きっと、この寝所にも、何か、あるかもしれない。青嵐は、扉に結界を張った。
「風蘭を必ず守るんだ」
「僕なんかより、紫鳳の羽の方が、役に立つし、強い」
瑠璃光は、小さくため息をついて、首を傾げた。
「まだ、わかっていないんだな。どうして、お前の親が、そこに置いていったのか」
「え?なんて」
ずっと、瑠璃光にあって、親の事を聞きたいと思っていたが、なかなか、聞き出せないでいた。突然、瑠璃光から言われて、耳を疑った。
「僕の親の事。どうして?」
「見えたから」
瑠璃光は、青嵐の肩に優しく触れた。
「君の炎は、浄化の力がある。それは、自分で、得た力ではない。君の親が与えたものだ」
瑠璃光には、自分と似た境遇があるから、共感してもらっているのだろうか?それとも、本当に見えて、そう言っているのだろうか。
「いろいろ聞きたい事があるんです」
瑠璃光は、首を振った。
「まだ、時が来ないんだ。いつか、知る時が来る。でも、それは、今ではない」
「青嵐。まだ、風蘭には、治療が必要なんだ。君の炎で、治療してくれないか」
瑠璃光は、そして、耳元で、囁く。
「いいか。きっと、私の不在時に政変が起きる。風蘭の寝所が1番、安全だ。そのまま、そこにいるんだ。皇宮内も、外も危険になる」
瑠璃光は、成徳の起こす政変を見抜いていた。もはや、風蘭にこだわる事はないだろう。いずれ王座に、自分自身が座るつもりで、長い時間をかけて根回ししてきた筈だ。自分自身は、皇帝の座に魅力は感じない。だが、蛟の精を受けた成徳や、その類の者たちに、譲る気はない。
「青嵐。私達が、出た後は、寝所の四方を確認しろ。浄化していくんだ。どんな小さな物でも、見逃すな。蛟は、心の隙間に付け入る」
そして、青嵐に、紫鳳の羽を1本渡した。
「どうしても、助けが必要な時は、これを窓の外に飛ばすんだ」
青嵐は、頷いた。瑠璃光に言われた通りに、部屋の隅から隅まで、浄化した。怪しい物は、全て灰になって消えた。
「少し、休まれては?」
青嵐の額に、汗がじんわり、滲んでいる。長時間、集中するので、疲労が激しい。前回の浄化には、紗々姫がいたが、今回は、一人だ。皇宮の中で、風蘭を守れるのは、自分しかいない。
「あぁ。。そうだ。」
青嵐は、急に衣服を脱ぎ出した。
「え?何を?」
上着を脱ぐと、そばに掛けてあった、風蘭の皇帝の衣装を羽織り、髪を結い上げる。
「僕の衣装を着て」
風蘭に自分の衣装を着せ、顔には、側にあった鉢を割って、泥を顔に塗る。
「万が一に、備えて・・・だから、隠れていて」
青嵐は、風蘭を衣装の間に隠れるように促した。
「全てに用心しないと」
成徳は、用意周到である。きっと、この寝所にも、何か、あるかもしれない。青嵐は、扉に結界を張った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる