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生まれながらに冠を抱くもの
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粗末な馬車から降り立ったのは、紛れもなくアルタイ国の王シンと弟のロッシ。そして、側近の者達だった。生まれながらに、王としてのオーラを持ち、粗末な馬車でさえも、荘厳に作り上げてしまう。シンは、ロッシの様子を見ながら、優しく手を差し出し、門前の階段を、駆け上がる。背は、瑠璃光より、高く見え、細く編まれた髪を両肩に垂らしている。髪飾りは、王らしく、金に輝く飾りを付け、地に届くかと思われる長いローブを纏っていた。
「話を受け入れてくれた事に感謝する」
瑠璃光は、紫鳳にまかさる事なく、歩み出て、シン王の手を取る。
「こうして、逢えてよかった」
シンは、瑠璃光の顔を初めて、正面から見る事ができた。妖の子供との噂や、陽の元の国に、向かい妖怪達を連れ帰ったという噂は信じられない程、ごく普通の青年にしか、見えない。あえて言うなら、青年というよりは、聖女といった所だろうか。肌は、白く、髪は、闇のようにどこまでも黒い。両方の瞳は、艶やかに輝き、瞳の奥に金の輪が見える。
「よかった」
思わず、シンは、笑った。
「?」
瑠璃光は、シンの反応に
「妖かと期待したのかと?」
安心したかの様に、笑うシンに声をかける。
「普通だなと」
「まぁ・・・ここでは、何だから、中へ」
シンは、ロッシを前にすると、瑠璃光に目配せをし、中へと入る。ロッシの左右には、護衛が付き、シンの後ろにも、護衛が固める。瑠璃光とシンが、挨拶を行い、警戒はしないのかと思われたが、そうではなかった。細心の注意を払っていた。瑠璃光は、指をパチンと鳴らすと、紫鳳の羽達に、門を閉めさせた。屋根の上や、門前。建物の中にも、紫鳳の分身が、警戒をしている。屋敷の中には、すっかり、しおらしくなった聚周が、お茶の用意をしていた。
「すまないが、自分達が持参した物しか口にできない」
聚周が茶を差し出すと、シンがそういうので、瑠璃光は、聚周を下がらせ、3人で話し合う事にした。
「所で・・・彼は?」
瑠璃光の瞳の奥の金の輪がスッと、小さくなった。
「それなんだが」
瑠璃光の双眸が、ロッシの体の上から下までを見ていた。まるで、透視するかのように。その視線を感じながら、シンは、口を開いた。
「治してやりたい。その為に、力を借りたい」
ロッシは、困った顔で、シンを見つめる。
「そうだな・・・」
瑠璃光の視線は、シンに注がれた。
「漢薬書だけが、手元にあっても、何の役にも立たなかっただろう」
「知っていたのか・・・」
シンは、たいして驚かずに答えた。出発前に、パウダから、瑠璃光は、もう、漢薬書が、アルタイ国に渡っている事を知っている筈と聞かされていたからだ。
「あの本だけでは、どうにもならないから、どこに渡ったとしても、探し当てる事はしていない」
瑠璃光は、漢薬書を返せとは言わなかった。
「持ち主を決めるのは、あの漢薬書自身だからな」
瑠璃光は立ち上がり、手のひらに、赤く燃える炎を差し出した。
「見るがいい」
本は、無造作に置かれている。何人かの、奴婢が、主人のいない間に、中を見ようとするが、誰も、中に文字のある事すら気づかなかった。というか、文字が消えていた。
「見せるか、どうかは、漢薬書が決める。この世で、私の次に面倒な奴だ」
「・・・というと?」
「ただの書ではない。盗まれたのではない。盗ませたのだ」
瑠璃光は、ロッシの顔をじっと見た。
「私の求める答えも、ここにあるのかもしれない。まだ、決心がつかない様だが」
「治せるのか?」
ここに来た目的も忘れ、シンは聞いた。
「治せるのではなく、治りたいのか?を聞きたい。兄は、危険を顧みず、私に会いに来た。冥国の争いに巻き込まれるのは、必須だ。兄は、そこまでの、リスクを背負ったが、君は、どうしたい?」
ロッシは、自分の気持ちを察せられて、動揺した。
「私は・・・」
シンが、ロッシの気持ちを探るように目を向けた。
「ここまで、していただいて、とても、嬉しいです。けど・・・そこまで、していただく資格が、僕にはない」
「おそらく・・・」
外の紫鳳の羽達の様子の変化に気づいたのか、瑠璃光は、手のひらの炎をそっと消した。手を返し、指を2本立てると、一枚の羽が指先に現れる。
「多分・・・無事に、帰すまいと動いている輩がいる」
「それは、我らも、承知」
シンは、宝石を散りばめた円刀を抜いた。
「ロッシは、守ってくれ」
「話を受け入れてくれた事に感謝する」
瑠璃光は、紫鳳にまかさる事なく、歩み出て、シン王の手を取る。
「こうして、逢えてよかった」
シンは、瑠璃光の顔を初めて、正面から見る事ができた。妖の子供との噂や、陽の元の国に、向かい妖怪達を連れ帰ったという噂は信じられない程、ごく普通の青年にしか、見えない。あえて言うなら、青年というよりは、聖女といった所だろうか。肌は、白く、髪は、闇のようにどこまでも黒い。両方の瞳は、艶やかに輝き、瞳の奥に金の輪が見える。
「よかった」
思わず、シンは、笑った。
「?」
瑠璃光は、シンの反応に
「妖かと期待したのかと?」
安心したかの様に、笑うシンに声をかける。
「普通だなと」
「まぁ・・・ここでは、何だから、中へ」
シンは、ロッシを前にすると、瑠璃光に目配せをし、中へと入る。ロッシの左右には、護衛が付き、シンの後ろにも、護衛が固める。瑠璃光とシンが、挨拶を行い、警戒はしないのかと思われたが、そうではなかった。細心の注意を払っていた。瑠璃光は、指をパチンと鳴らすと、紫鳳の羽達に、門を閉めさせた。屋根の上や、門前。建物の中にも、紫鳳の分身が、警戒をしている。屋敷の中には、すっかり、しおらしくなった聚周が、お茶の用意をしていた。
「すまないが、自分達が持参した物しか口にできない」
聚周が茶を差し出すと、シンがそういうので、瑠璃光は、聚周を下がらせ、3人で話し合う事にした。
「所で・・・彼は?」
瑠璃光の瞳の奥の金の輪がスッと、小さくなった。
「それなんだが」
瑠璃光の双眸が、ロッシの体の上から下までを見ていた。まるで、透視するかのように。その視線を感じながら、シンは、口を開いた。
「治してやりたい。その為に、力を借りたい」
ロッシは、困った顔で、シンを見つめる。
「そうだな・・・」
瑠璃光の視線は、シンに注がれた。
「漢薬書だけが、手元にあっても、何の役にも立たなかっただろう」
「知っていたのか・・・」
シンは、たいして驚かずに答えた。出発前に、パウダから、瑠璃光は、もう、漢薬書が、アルタイ国に渡っている事を知っている筈と聞かされていたからだ。
「あの本だけでは、どうにもならないから、どこに渡ったとしても、探し当てる事はしていない」
瑠璃光は、漢薬書を返せとは言わなかった。
「持ち主を決めるのは、あの漢薬書自身だからな」
瑠璃光は立ち上がり、手のひらに、赤く燃える炎を差し出した。
「見るがいい」
本は、無造作に置かれている。何人かの、奴婢が、主人のいない間に、中を見ようとするが、誰も、中に文字のある事すら気づかなかった。というか、文字が消えていた。
「見せるか、どうかは、漢薬書が決める。この世で、私の次に面倒な奴だ」
「・・・というと?」
「ただの書ではない。盗まれたのではない。盗ませたのだ」
瑠璃光は、ロッシの顔をじっと見た。
「私の求める答えも、ここにあるのかもしれない。まだ、決心がつかない様だが」
「治せるのか?」
ここに来た目的も忘れ、シンは聞いた。
「治せるのではなく、治りたいのか?を聞きたい。兄は、危険を顧みず、私に会いに来た。冥国の争いに巻き込まれるのは、必須だ。兄は、そこまでの、リスクを背負ったが、君は、どうしたい?」
ロッシは、自分の気持ちを察せられて、動揺した。
「私は・・・」
シンが、ロッシの気持ちを探るように目を向けた。
「ここまで、していただいて、とても、嬉しいです。けど・・・そこまで、していただく資格が、僕にはない」
「おそらく・・・」
外の紫鳳の羽達の様子の変化に気づいたのか、瑠璃光は、手のひらの炎をそっと消した。手を返し、指を2本立てると、一枚の羽が指先に現れる。
「多分・・・無事に、帰すまいと動いている輩がいる」
「それは、我らも、承知」
シンは、宝石を散りばめた円刀を抜いた。
「ロッシは、守ってくれ」
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