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絡み合う運命の糸を解く為、魔猫還る

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犀花から、放たれた青白い光は、白夜狐に向かって飛んでいった。だが、途中で、弾けてしまい、地に消える。
「どうした?」
白夜狐は、首をかしげる。
「迷っている暇はないぞ」
白夜狐が、軽く剣を降ると、剣の周りには、細かい稲妻が集めまってくる。犀花に、躊躇する時間はない。
「でも」
それでも、犀花は、迷っていた。自分の過去生に責任を感じている白夜狐の間違いを自分で正すことができるのか、あの時の神女と自分は、全く異なる。白夜狐を責めるつもりはない。が、
「きっと、神女も、私と同じ・・・」
白夜狐を止める事。白夜狐の霊力に叶う訳がない。そう思いながら、握った剣に聖女に力を貸してくれる様に、祈った。こうなる事を知っていたのだろう。キリアスを助けたのも、奇異なる転生を知っていた。白夜狐の攻撃は、怯む事もなく、数多の剣の嵐を犀花に浴びせていく。白夜狐の剣は、渦となり、犀花に襲い掛かり、犀花は、身を代しながら、渦から逃げようとするが、渦は、天高く繋がり、剣の渦巻から、逃れる事はできない。渦は次第に、幅狭く、迫ってくる。細長い剣の刃先が、犀花の体を傷つけようとする。聖女の青い光が、犀花の体を守ろうと、細い幾つもの光が体を覆う。
「白夜狐!」
本気で、自分を攻撃している。
「お願い。私は、望んでいない」
白夜狐には、勝てないかもしれない。でも、本気で、立ち向かった時、聖女とキリアスの力が結びついたら
「白夜狐を消滅させてしまうかもしれない」
犀花は、迷う。自分をなんとかして、残そうとしたため、白夜狐は、誤った道に進んだ。剣と稲妻は、激しく渦巻き、いつまで、自分体を守られるか、わからない。
「白夜狐!」
犀花が、叫んだ時、白夜狐の足元が、少し、ふらついた。何か、黒い影が足元を掠めさり、また、白夜狐の顔を横切った。一瞬、剣の渦が弱まった。
「誰?」
よろめく白夜狐に代わり、不死の神が、彼を支え、黒い影に、稲妻の剣を向けた。焦土した地に剣は、刺さり、間一髪で、避けたのは、聖女の使い魔、魔猫だった。
「私が注意を引くから、やるのよ」
魔猫が、低く構えながら言う。
「言ったでしょ。何の為に、聖女様が、命を潰えたのか?」
稲妻の剣に、少し、当たったのか、美しい被毛の先が、焼き切れている。
「白夜狐を滅しなさい」
そういいながら、魔猫は、白夜狐めがけて、飛びかかる。
「だめ!」
白夜狐に、魔猫が飛び掛かるのと、剣の渦巻きが、力を失うのは、同時だった。もう、迷う暇は、なかった。犀花に纏った青い光は、一瞬、膨らみ、白夜狐に、飛びかかる魔猫を追いかける。白夜狐を庇う不死の神は、魔猫を稲妻の剣で、払うと同時に、その隙をついて、青白い光は、白夜狐に降りかかっていった。魔猫は、不死の神の剣で、地に没した。
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